【入門用】心理学用語”認知心理学”の基本をわかりやすく解説

脳を”コンピューター”に見立てる認知心理学

 認知心理学は『生物は脳を通して主観的に物事を判断する』という考え方に基づいた理論です。思考情動感情や気分の変化などの脳の精神的な働きを研究する分野であり、心がどのように情報を処理するか? を追求する『基礎心理学』のひとつです。以前、認知心理学の一説とも言える『ゲシュタルト心理学』について記事にとりあげましたね。

ゲシュタルト心理学については こちら

 認知心理学が誕生したのは1960年代。ドイツ系アメリカ人の『ウルリック・リチャード・グスタフ・ナイサー』が1967年に出版した『認知心理学(原題:Cognitive Psychology)』によって一般にも知られることになります。ほかにも様々な心理学者が『認知』に関する心理学を研究し、これは当時提唱されていた、客観的に観察できる行動こそ研究対象にすべきだという『行動主義』と対をなす理論でもありました。

行動主義は『実際の行動』から心を考える。犬は食べ物を見るとヨダレを垂らす古典的条件づけ
                        認知心理学は刺激と反応の間にある処理を追求する

 本日はこの認知心理学について解説していきましょう。

認知心理学の歴史と考え方 脳は主観的に捉え判断や解釈を行う

 認知心理学は、人間の脳を『情報処理を行うコンピューター』として捉えます。こうなった過程を知るために、まずは歴史的な話から紹介し、認知心理学を理解するための準備をしていきましょう。

認知心理学誕生まで

 冒頭で紹介した行動主義は、実際に行動が伴った現象のみを研究対象とするものでした。行動主義の究極的な結論として、人間のあらゆる行動は『刺激 反応』によって起こる反射的行動に過ぎないというものがあります。強い光を目に受けて反射的に目を閉じる、のようなイメージですね。これを『S-R理論』と呼びます。ほか『パブロフの犬』など、行動主義が関連する実験はよく知られていますね。

内部リンク:行動主義、犬がヨダレを垂らす『古典的条件づけ』については こちら

 しかし、後の時代の心理学者たちは、行動主義の考え方では人の心を研究するに限界があると見抜き、刺激と反応の間に『認知(Organism)』の概念を生み出しました。目の前に『りんごジュース』があったとして、それを目にし脳が映像処理をするまでは同じですが、それから『どういう思考をしてどういう行動を起こすか』は人それぞれですよね?

りんごジュースを見たという刺激が脳に伝わる
  → おいしそう! 飲みたい!

  → うえっ、りんご苦手なんだよなぁ……
  → りんご? オレンジじゃなくて? まあ、今はいらないや

 リンゴジュースを見た認知したときの反応は様々でしょう。認知心理学は、アナタがこれらの言葉を発する原因となった『脳の情報処理の過程』を研究します。

コンピューターの登場 そして認知心理学へ

 上記の研究では、まだ認知心理学ではなく『新行動主義』と呼ばれていました。行動主義から1歩踏み込んだ学問、という立場ですね。しかし、その後の技術革新により人類は『コンピューター』を開発します。そこに新行動主義の考え方を合体させ、人間ならではの『知覚記憶思考』などを加えコンピューターの情報処理システムと参考に心の仕組みを解き明かそうという観点で誕生したのが『認知心理学』です。

 上記画像のように、人とコンピューターの情報処理は共通している部分があります。人は『感覚器官』から得た信号が『』に到達し、それらに関して脳機能の一部である『意識』が様々な評価を下します。おいしそうなケーキを見て、それを脳と心が(おいしそう! 食べたい!)と評価した結果、食べ物を手に取ったり「食べたい」と喋るような『行動』に繋がるわけですね。

 対して、機械も同じような処理をします。コンピューターの場合、感覚器官にあたるのはキーボードやマウスなどで行われる『入力』です。その信号がコンビューターを構成するCPUなどの『ハードウェア』に送られ、人間が設計した『プログラム』に沿って所定の処理を済ませ『出力』されます。キーボードの『aキー』を打ち込んだら機械にその電気信号が流れ、そのコンピューターに設定された文字コードがメモ帳などに表示される仕組みです。

 コンピューターと脳を重ね合わせる認知心理学はそのままコンピューターへ人間の脳をデザインする研究にも応用でき、人工知能の発展を支えるひとつの要素となっています。

認知心理学とコンピューターの共通点 記憶編

 認知心理学の大きな研究テーマとして『記憶』が挙げられます。コンピューターでは『ハードディスク』に該当する記憶は経験したことを保存し、必要に応じて取り出し可能で、後々の判断や行動で利用できる心の機能のひとつですが、記憶に関しては今後も取り上げていきたいですね。

 ここでは以前の記事も含めて、いくつかの認知心理学の『記憶』に関する知識をご紹介しましょう。

記憶の種類

 記憶は『覚える(記銘)・覚えておく貯蔵)・思い出す想起』の3つに区別されます。覚えた情報を脳内で保存しておくだけでなく、それを思い出すことも記憶のうちに入るのですね。

 そのなかの『覚える』に関する記憶ですが、ここは『感覚記憶短期記憶長期記憶』の3つの記憶が存在します。

・感覚記憶 ――数秒で消えてしまう、とくに意識しない多くの記憶
・短期記憶 ――感覚記憶のなかでも重要と認識された記憶
・長期記憶 ――短期記憶のなかでも印象深かったり何度も反復した記憶

 例えば勉強中の場合、周囲の景色が記憶に残ることはなく、教科書に記された歴史上の出来事だったり、ある方程式の計算方法だったりを記憶しますね。しかし、それらをすべて覚えられるというわけでもありません。

 この場合、周囲の景色は『感覚記憶』の段階で消えていき、勉強しても覚えられなかった用語などは『短期記憶』の段階で抜け落ち、勉強の甲斐あって覚えられたものが『長期記憶』となります。

 すべてを記憶したいのであれば、愚直に反復練習をこなすか、あるいはより記憶に留めやすくする工夫をしなければいけません。それは以前までの記事を参考にしていただければ幸いですが、ここでもいくつかご紹介しましょう。

内部リンク:脳科学式の最強記憶術については こちら

認知心理学 記憶の例1:チャンク

 チャンクというのは『情報のまとまり』を表します。電話番号は11ケタの数字が並ぶわけですから『11チャンク』ととることができます。ただ、人間が記憶するためにはこのチャンクの量が膨大すぎると難しく、短いまとまりで捉えることが理想です。

 電話番号の場合、これらを『〇〇〇-△△△△-□□□□』という344形式の情報のまとまりとして処理することによって、チャンク数を減らすことができます。それぞれのチャンクが小さくなるだけでなく、それらをまとめた”大きなチャンク“も3なのでより覚えやすいわけですね。日常生活でも利用可能なテクニックですのでぜひ活用していきましょう。

認知心理学 記憶の例2:カクテルパーティー効果

 カクテルパーティー効果とは『パーティーの喧騒のなかでも自分の名前だけはハッキリ聞き取れる』という効果です。

 人は感覚器官から多数の刺激を常に受けていますが、脳は『フィルター理論』によって注意を向けた刺激だけを処理できます。それによって様々な作業に集中できるのですが、脳は無意識に自分と関係がある情報に注意を向けています。これはアナタの『今までの経験と記憶』と深く関わってきます。

 自分の名前だけでなく、アナタが普段からものすごく意識しているとか、とても好きなものに対しても働きますので、たとえばお店に流れているBGMが自分の好きなアーティストの曲だった場合すぐ気づくことができますね。

 これがどう記憶術に活用できるのかですが、アナタが予め「記憶したい! 覚えたい!」と思ったものを強く意識しておきましょう。たったそれだけでアナタの脳はそれに関する情報に敏感になり、たとえば「犬に関する情報が欲しい!」と常に考え書店に赴くと、数ある本の中でもそこに埋もれた『』というキーワードに気づきやすくなります。

 勉強においても覚えたいことを予め考え強く意識するという意識をもっておくとより記憶にとどまりやすくなります。なので、読書や勉強をする場合はあらかじめテーマを決めておくなどしておきましょう。

認知は時としてウソをつく

 インプットした記憶がやがて長期記憶に到達したとき、晴れてアナタはその記憶を『覚えた』と言えるでしょう。しかし、長期記憶は時としてウソをつきます。

 『虚偽記憶』とよばれる記憶は、実際には起こっていない事実が『記憶』として残ってしまう現象をさします。これは記憶した後の経験思考、あるいは誘導的な尋問などによっていとも簡単に形成されてしまいます。

虚偽記憶の実証

 アメリカの心理学者『エリザベス・ロフタス』氏が行った実験で、車がぶつかる映像を見せた後その車が「ぶつかった」か「激突したか」という質問の違いだけで、被験者の記憶の中の車の速度まで変化し、さらに事実でないはずの「ガラスが割れた」という記憶まで捏造されてしまいました。

 そのような虚偽記憶が生み出されたのは「激突したか」と質問されたほうです。この結果になることを、アナタはなんとなく想像がついたのではないでしょうか? 彼女自身認知心理学の研究者として幅広い活躍をされていますので、興味がある方はぜひ下記の動画をご参照ください。

エリザベス・ロフタス氏の記憶に関する講演は こちら

 脳の認知をうまく利用し、また認知のエラーを把握し、より効率の良い勉強を行っていきましょう。

“ToDo”チャレンジ

①カクテルパーティー効果を利用しよう
  興味ある分野を紙に書き出し常に意識しておこう
②覚えたいことは繰り返し勉強しよう
  新たな情報は驚きなどの感情を利用すると効果的です
新しいジャンルの勉強をはじめよう
  新たな刺激は脳をより活性化させ記憶力アップを促します

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