【入門用】自己催眠を利用したストレス解消法 “自律訓練法”のわかりやすい解説

1回10分のリラクゼーション 自律訓練法の解説と実践

 自律訓練法はドイツの精神科医である『ヨハネス・ハインリヒ・シュルツ』によって開発されました。自己催眠を利用したリラクゼーション法で、リラクゼーションやストレス解消、さらに健康回復まで様々な効果があることがわかっている手法でもあります。

 通常、催眠はその技術を修めたプロの手によって行われるのですが、知的能力がありある程度の訓練を積んだ人であれば、自らの手で自己を催眠状態に導くことができます。シュルツはこの事実を利用し臨床実験を重ね、身体感覚を中心とした自己暗示の体系を作り上げることに成功しました。

 今回はそんなリラクゼーションや健康回復に最適な『自律訓練法』についてわかりやすく解説していきたいと思います。

自律訓練法 準備編

 自律訓練法は自己催眠によるリラクゼーションテクニックです。自らの精神を深い部分まで沈めた状態にすることで心身の回復を図るものですが、こういったテクニックにはいくつかの注意点があり、それを知らずに行うと逆効果だったり危険だったりする場合があります。ここでは自律訓練法を実践する前の準備と心がけを解説していきましょう。

静かな場所を選ぶ

 自律訓練法に集中するため、周囲の喧騒を避けて行いましょう。自室などだれもジャマされない場所で実践することをオススメします。音を取り入れたい場合はのそよぐ音や川を流れるの音のような自然音にしましょう。実際に森の中で行うというのも面白いですが、近くにそのような環境がないという場合は自然音が流れる音源を用意すると良いかもしれませんね。

身体を圧迫する装具を外す

 身体感覚が重要になるテクニックですので、身体を締め付けるような状態ではうまく催眠状態にもっていけません。腕時計やネクタイなど締め付ける装具は外しゆったりした服装で、さらに靴などを脱ぎ裸足になりましょう。フローリングで行う場合はスリッパがオススメです。

3つの姿勢を選ぶ

 自律訓練法を実践する際、下記の3つの姿勢から選びます。いずれも軽く目を閉じて行いますが、姿勢についてはこれらからいちばん楽になれる状態を選びましょう。初心者はまず仰向けの姿勢からはじめることをオススメします。

仰臥姿勢   ――仰向けに寝る姿勢
単純椅子姿勢 ――背もたれのない椅子に座る
安楽椅子姿勢 ――背もたれのある椅子に座る

 ※自分にとっていちばん楽な姿勢を選ぼう

受動的注意集中の心がけ

 瞑想などは、あるひとつのことに意識を集中させるテクニックですが、臨床心理学や自律訓練法に関する著書によれば、自律訓練法の場合は『目標にさりげなく注意を向ける』ことが重要になります。強く集中する行為は自律神経のうち交感神経を活発にしてしまうため逆に緊張させてしまうのです。

 そこまで意識を集中しない、しかしさり気なくそちらに意識は向いて感じている状態。この感覚は反復練習が必要ですので、焦らず長期的な習得を目指しましょう。

結局、自律神経がすべて解決してくれる
結局、自律神経がすべて解決してくれる

自律訓練法 実践編

 自律訓練法には7つの段階からなる『標準訓練』が基本となります。さらに『黙想訓練』や『特殊訓練』などがありますが、今回は入門用である標準練習を解説していきましょう。

 『公式』と呼ばれる7つの言葉を心のなかでくり返し、唱えた言葉に対応した部位を、上記の『受動的注意集中』の心構えで意識しましょう。では、段階的に解説します。

7つの公式動作

 準備を済ませ、仰向けや椅子に座った姿勢のまま目を閉じ数回深呼吸しましょう。心が落ち着いていくことを感じた後、これら自律訓練法における7つの公式を唱えます。

・背景公式(安静の練習)
  ――気持ちがとても落ち着いている
・第1
公式(重感の練習)
  ――両腕両脚が重たい
・第2公式(温感の練習)
  ――両腕両脚が温かい
・第3公式(心臓の調整)
  ――心臓が静かに、規則正しく打っている
・第4公式(呼吸の調整)
  ――呼吸が楽になっている
・第5公式(腹部温感の練習)
  ――お腹が温かい
・第6公式(額部涼感の練習)
  ――額が涼しい

 これらの作業をすべて合わせて『朝昼晩の1日3回・個人で行う場合1回につき10分程度』でこなします。身体をリラックスさせて、緊張状態にならないようにしてください。目的に応じて手法を微調整する場合もありますが、この7段階がすべての基本となります。

 リラックス効果を期待しているならば第2公式まで行えば良いともされていますが、個人的にはすべて行うことをオススメします。1回10分ほどでできるのでスキマ時間で充分可能ですね。

 さらに、この自己催眠によって変調を起こした身体を元に戻す『消去動作(終了動作)』を行います。自律訓練法は深い催眠へ導くので、それによりめまい脱力感などを覚える場合があるのです。下記の動作で心身を覚醒させていきましょう。

・両手の開閉運動
・両肘の屈伸運動
・大きく背伸び
深呼吸

 より詳しく知りたい方は下記の動画を参照することをオススメします。病院で医療に従事していらっしゃる専門家の方が直に解説してくれる良質な動画ですね。

YouTubeチャンネル、済生会福岡総合病院:投稿動画より

効果と注意点

 自律訓練法には以下のような効果があるとされています。たとえば勉強仕事前に行うなどでも効果が期待できそうですね。

・蓄積された疲労の回復
・イライラせず、おだやかになる
自己統制力の増加、衝動的行動の減少
・仕事や勉強の効率が上がる
・身体的な痛みや精神的な苦痛の緩和
・内省力がつき、自己向上性が増す

 ただし、注意が必要なことがいくつかあります。心臓疾患のある人は第4公式(心臓の調整)を、呼吸器系の病気のある人は第4公式(呼吸の調整)を、胃・十二指腸潰瘍糖尿病のある人は第5公式(腹部温感の練習)をそれぞれ行ってはいけないとされています。これらに問題がある、もしくは不安がある方は第2公式までを行うようにしてください。

 自律訓練法は正しい手法を組まなかった場合、かえって自律神経の乱れなどを招く恐れがあります。リラックスできる環境で、公式の流れに則ったやり方をするようにしてください。

本日の”ToDo”

①自律訓練法を練習してみよう
  動画も参考に、工程に間違いのないよう気をつけましょう
②リラックスできる場所を確保しよう
  余計な雑音を遮断し自分だけの場所をつくろう
瞑想をはじめてみよう
  1日10分からでも習慣化すれば効果が期待できます

 アナタの心に知識というオアシスを

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