【心理学】「見た目で判断するな」← 脳的には間違いのようです

イケメンは罪が軽くなる!? 美男美女がトクする理由をわかりやすく解説

 人は見た目で決まる。これは心理学の研究によって明らかになった不都合な事実です。だれもが「人は見た目じゃない!」と言いたいでしょうが、残念ながら人は見た目を重要視しています。

 ドラマに出てくる俳優はイケメン揃い。アイドルは華やかに着飾り、マンガやアニメの主要キャラクターは当然のように美形にデザインされていますよね。

 就活をしている学生たち、交渉をするビジネスマン、政治家などは必ずスーツ姿に整えられた髪型で仕事をする。それは見た目によって「この人はマジメそうだ」と思われたり、逆に「この人信用できるの?」と思われないための方策です。アナタもタトゥーをした人を警戒したり、外国人の方にがんばって英語で話しかけようとした経験はないでしょうか?

 入れ墨をしてるから悪い人というワケでもなく、外国人だから必ず英語をしゃべるワケじゃありません。しかし、外見で判断してしまうからこそタトゥーを入れた人を警戒してしまうのです。今回はそんな外見の重要性についてわかりやすく解説していきたいと思います。

見た目が重要なのは”事実”です 研究で明らかになった事実や法則なども紹介

 上記画像を見たとき、アナタはどちらの人に好印象を抱くでしょうか?

 相手がどんな気持ちでいるかを知るには表情を見ることが大切ですよね。それだけでなく、人は景色や絵画など多くのものの美しさを見た目で判断します

 これは人間心理として当然のことなので悪いことではありません。ただし、それによって差別をしてしまうことが良くないのです(ルッキズム)。わたしたちは普段どのくらい見た目で判断しているのでしょう?

メラビアンの法則

 人は見た目が重要ですが、その説明として『メラビアンの法則』がよく使われますね――が! 実はこれ見た目の重要性を説明する法則ではないのです。

 メラビアンの法則は『態度と言葉のメッセージに矛盾があるとき、受けてはどのように解釈するのか?』に関する研究です。たとえば以下のようなシーンを考えてください

<strong>女性</strong>
女性

クズ

 表情とは裏腹に凄まじいメッセージですね。この態度と言葉の矛盾を受け取ったアナタは、この女性にどのような印象を抱いたでしょう?

 良い人? 悪い人? ありのまま正直に考えてみましょう。

 人は矛盾したメッセージを受け取ると、その解釈に迷いが生じます。メラビアンの法則ではそのような場合、人は以下の割合で相手の本心を探ろうとします。

視覚情報(表情や態度など)
  → 55%
聴覚情報(声のトーンなど)
  → 38%
言語情報(選んだ言葉)
  → 7%

 つまり、相手がどのような言葉を選んだとしても、声のトーンがふざけているようであったり、態度によってイタズラだと思えるようであれば、たとえ上記のような凄まじい言葉でも「ああ、ただのジョーダンか」と受け取るのです。

 なお、当該研究は文脈でなく単語で実験されており、被験者は相手の感情を推察しています。文脈や細かい思考などに関する研究はしていません。

 周囲に信頼できるような友人がいるのであれば、アナタの自己責任の上でぜひ試してみてください――ただし初対面の人にやるのはおすすめしません。だって見ず知らずの人に上記のようなことを言われたら問答無用で悪印象しか抱かないでしょう?

 上記法則は1960年代に提唱された古いものです。現在はそれらに関する追加研究や反論など多種多様な論文が公表されており、必ずしも上記法則がすべての例に当てはまるワケではないことを覚えておきましょう。

アルバート・メラビアン氏のウェブサイト
 上記研究に関する解説は こちら(英語)

ハロー効果

YouTubeチャンネル、MitsubishiMotorsTV:投稿動画より

 ハロー効果とは『一部の好印象が全体の印象を良くする現象』です。これがわかりやすいのは車のCMですね。

 スポーツカーは広い草原を悠々自適に、家族で使うファミリーカーはパパの運転でキャンプなどへ行く演出がされ、女性をターゲットにした車は表面を犬にみたててかわいさをプッシュしたり――犬がもつかわいいイメージを車に連合させる戦略ですね。

 見た目が良いと、それがハローになって他の面も良い印象を抱かれます。それはたとえ凶悪な犯罪を犯したとしても減刑されるレベルに強い心理で、アナタがたとえ「自分はそんなことにはならない」と思っていたとしても逆らえない強力な認知バイアス = 脳のクセなのです。

 イケメンは刑が軽くなる。人は見た目で判断してしまうもので、それはある意味仕方のない心理なのですが、それと差別は無関係です。しかし、実際に『ルッキズム』という言葉があるように、残念ながら見た目こそすべてだという人もいるようです。

ルッキズムと人種差別

YouTubeチャンネル、Netflix Japan:投稿動画より

 ルッキズム(lookism)とは『外見だけで価値を測ること』です。外見重視主義とも言われ、容姿の良い人を高く評価したり、逆に容姿が魅力的でなければ雑に扱ったり、外見によった蔑称を言うことなどはルッキズムにあたりますね。オックスフォード大学英語辞書によれば、そういった人々をルッキスト(Lookist)とも呼び、1970年代からあった言葉です。

 大まかに書いてしまえばハ◯デ◯ブ◯を蔑称として使うならルッキズムというイメージです。よろしくありません。また見た目がキレイだから贔屓するのもルッキズムにあたります。

 これらは人が無意識下で起こしてしまうものなので対策が難しく、実際イケメンのほうが量刑が軽いという研究結果もあるくらいです。正義を掲げる裁判官でもこのような認知バイアスにひっかかってしまうのですね。これは外見的魅力だけでなく人種的な印象でも左右されます。

オックスフォード大学英語辞書
 ルッキストに関する解説は こちら(英語)
J-Stage、日本顔学会誌:北山晴一氏
 ルッキズムに関する考察は こちら
APA PsycNet®
 いち例となる論文は こちら(英語)
Taylor & Francis
 いち例となる論文は こちら(英語)

やっぱ見た目が大事だよね

YouTubeチャンネル、RTBF(ベルギーの公共放送チャンネル):投稿動画より

 上記番組は、ベルギーのプロソムリエがスーパーに行き「まずい」と評価されたワイン(2.5ユーロ)をワインコンクールに出品するという企画です。

 ふざけてると思いますか? ――しかしただ出品するだけではありません。審査の前にラベルを変え、凛々しい鳩の絵柄に『Le Château Colombier = 城と鳩小屋』と名前を変えて出品されたのです。

 ただ名前とデザインを変えただけ。しかしこの2.5ユーロのワインは『ジルベール&ガイヤール国際コンクール』に出品され、見事金メダルを受賞することができました。

 驚くべき成果ですね! もちろんそれだけがすべてとは限りません。2.5ユーロのワインが本当に絶品だったのかもしれませんし、審査員は素人の方ばかりだったのでたまたま馴染みのある口あたりだったのかもしれません。それにしてもこの結果には驚きですよね。

GILBERT & GAILLARD
 公式サイトは こちら(英語)

 わたしたちの視界はそもそも認知バイアスだらけで正しい情報を取得できません。だからこそトリックアートなどを楽しむことができるのですが、見た目に騙されて大切なモノを見落とさないよう注意しなければなりませんね。

 見た目に騙されないようにするためには、アナタ自身の認知バイアスに気づくことからはじめましょう。人の脳はそういう考えをするんだと知っているだけで大きな対策になります。これを鍛えるには認知バイアスを幅広く紹介した一冊があれば役立つかもしれませんね。

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