脳の錯覚”認知バイアス”を利用して自己成長を促すテクニックを紹介
たとえば、人間は視覚情報をメインウェポンに活動する生物です。しかし、眼球に入ってくる光は2次元的なもので、しかも眼球内の屈折で上下左右反転した情報をキャッチしています。それを脳が勝手に反転処理をし、2次元を3次元に変換し、わたしたちに『視界』という認識を与えてくれます。
このように、脳には与えられた情報を勝手に都合よく解釈し処理する機能が備わっています。そして、残念ながら視覚情報のように重要かつしなければならない認知バイアスの他にも、脳は様々な認知バイアスを用いて、ときに人間の認識を撹乱してくるのです。
以前、そのような認知バイアスから身を守る方法を紹介しました。しかし今回はバイアスを利用する方法を7つ紹介していきたいと思います。
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バイアスから脳を守る方法については こちら
脳の自動操縦は防げない 認知バイアスを逆に利用して自己成長につなげよう
冒頭のように、バイアスは視覚情報をはじめ様々な処理の上で勝手に情報が歪曲されます。しかし、そういった脳の自動操縦がなければ、わたしたちは常に2次元の逆さまになった世界を見つめることになっていたでしょう。認知バイアスはわたしたちに必要な機能なのです。とはいえ、以前までの記事で紹介したように、認知バイアスはあまりにも多種多様で、わたしたちの生活ではときに邪魔に感じる場面さえあります。しかし脳が勝手にそう判断してしまうのですから受け入れるしかありません。
わたしたちにできることは、認知バイアスがあるという自覚をもって思考の悪循環に陥らないよう工夫するか、逆に認知バイアスの波に乗って自己成長を促すかのどちらかになるでしょう。今回は認知バイアスの波に乗る方法を7つ紹介していこうと思います。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは『他者から期待されたとおりに結果や成績を残す傾向』を指します。教師期待効果やローゼンタール効果などとも呼ばれています。逆に、期待されないと成績も低下するという『ゴーレム効果』もあり。相手からの期待に応えようとする心理がやる気を引き出し成績アップにつながっていると考えられます。たとえば、親同士の会話で「うちの子は勉強しないでゲームばっかり……」なんて話をしていると、それを聞いた子どもはゴーレム効果によってほんとうに成績が降下たり、ゲームばっかりするようになってしまうかもしれません。
世の中のお父さんお母さん、子どもに前向きな言葉をかけてしまっていませんか? これはゴーレム効果のみならず子どもの自己肯定感にも影響を与えるおそれがあります。今後はぜひとも「ウチの子はすごく一生懸命で、お勉強もよく頑張るから成績もどんどん伸びていくのよ」と言葉を変えてみましょう。もちろん、子どもに対して勉強の後押しをすることも大切ですよ。
アドバイス効果
アドバイス効果とは『他人の意見に流されてしまう傾向』を指します。これはいくら自分が「わたしは周囲に流されない」と自認していても陥る認知バイアスで、さらに、アドバイスに影響されたにもかかわらず「わたしは周囲に流されなかった」と認識してしまうたいへん厄介なものです。これは『誤情報効果』という、目撃証言などの情報を見聞きすると、たとえその情報が真実でなくとも自分の記憶が不正確になることにも関連があります。この認知バイアスをどう利用すれば良いのでしょうか?
たとえば合コンやお見合い、会食などを設定する際、評価してもらいたい相手をあらかじめ褒めておくと事がうまく運んだりします。ビジネスなどでこういった席に立つ方は多いでしょう。今後何らかのビジネスで仲介者を頼まれた時、あらかじめ先方に頼んできた人を褒めるような内容を付け加えておくとうまく話が進むかもしれません。食事中は心の警戒が薄れるランチョンテクニックと相まって、非常に高い効果が期待できますね。
良好なビジネスを育むテクニックです
オズボーン効果
あまりに早く新商品を予告発表すると、現行商品の買い控えがおこり、利益が低下してしまいます。例えば、現行商品のコンピューターがまだ売上好調だというのに、それのハイスペック版である新型コンピューターを発表してしまうと、新型コンピューターの売れ行きが順調でないうちから現行商品の売上までどんどん落ちてしまう、という現象ですね。
事実として、オズボーン効果は上記の失敗をしたコンピューター『Osborne 1』の逸話にちなんで名付けられています。もうすぐ新機種版が発売するなら新しい商品を待ったほうが良いだろう、という当然の心理でもあります。
これはちょっとひねると戦略的な駆け引きにも利用できます。たとえばライバル会社の商品が先に展開されてしまったとき、この効果を利用して相手の利益を抑えつつ、自らの商品への期待を高めることができます。ひとつの商品に複数の業界がひしめきあっている場合、もしかしたら利用されるかもしれませんね……いえ、もしかしたらすでに利用されているのかもしれません。ちょっぴり悪用厳禁なバイアスになります。
内集団バイアス
内集団バイアスは『仲間や家族を優遇する傾向』を指します。これに関しては非常にささいな共通点、たとえば誕生日や名前が同じというだけでも仲間意識は生まれるので、仲良くなりたい場合は相手と自分との共通点を探すことが鍵となるでしょう。相手がアナタと話していて「親近感が湧いた」と感じたら大成功と言えます。
これは営業職の方にとって有効的な認知バイアスで、古くから利用されているテクニックでもあります。相手との共通点を見つけそれを皮切りに親しくしていくと、やがて相手の心に仲間意識が芽生え、商品を買いやすくなってくれるようになります。もちろん、下心がバレたらその時点でアウトですので、アナタ自身が相手を本当に好きになる必要があります。相手からのギブをもらいたいのであれば、まずは自分から積極的にギブをしていきましょう。
間隔効果
間隔効果とは『一気に詰め込むより、間隔をおいて学習したほうがよく覚え覚えられる』効果です。一時期流行していた『詰め込み教育』などは、脳科学の観点から見ると間違っていたということになりますね。また、容易に手にした情報はすぐに忘れてしまう傾向である『グーグル効果』もあり、こと勉強に関しては毎日着実な積み重ねをしていくことが重要になります。
毎日10時間くらい勉強していて『間隔』なんてものないよ! という方はジャンル別に勉強していくことで間隔を得ることができます。学校の授業のように、ある時間までは国語、休憩を挟んである時間までは数学といったように、それぞれのジャンルを幅広く勉強していきましょう。はじめてとりかかるジャンルに関しては、読むより聞く、聞くより見るほうが記憶に残りやすい『モダリティ効果』というものがあるため、たとえば動画で学習できるのであればそれを活用したほうが良いかもしれません。
自己中心性バイアス
自己中心性バイアスは『過去が都合よく捻じ曲げられる傾向』を指します。自分の「こうありたい」「こうあったはず」という自分のなかの理想を過去の自分に求め、自分のなかの理想に近づけていきたい意図が込められています。自分の中の世界でしか、人はモノを語れません。そういった側面もあり、研究が重ねられた今では『自分が持っている知識や経験を基準に他者の心理を考える傾向』を指すようですね。他者の人生を知るわけがないので、この認知バイアスはある意味で当然とも言えます。
自己成長とまったく関係ないように思えますが、人は自らをどう自認しているかによって成績や行動が変化していく傾向があります。それらは上記のピグマリオン及びゴーレム効果や、ステレオタイプなイメージに自らが近づいてしまう『ステレオタイプ脅威』などに現れますが、ならば逆に「自分は優秀だ」という思いのまま日々を過ごせば能力や行動がそれについてくる、という解釈もできます。ある種の『自惚れ』ですね。しかし、その自惚れこそがアナタ自身の力になります。こういった脳の勘違いに関しては『池谷裕二』氏著作『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』に詳しく記されています。薬学博士であり、記憶を司る『海馬』研究で活躍する素晴らしい方です。
脳が無自覚にしてしまう『自惚れ』をなくすには「自分はできるから今はやらなくていいや」という思考ではいけません。自分はできる、だから毎日やろうという流れで日々勉学に励めば、アナタはいつのまにか大きな成長を遂げていることでしょう。
結果バイアス
結果バイアスは『そこに至るプロセスよりも結果を重視する傾向』です。いわゆる「終わりよければ全てよし」的な認知バイアスで、紆余曲折ありながらも最後は大団円のストーリーが好まれる要因とも解釈できますね。脳はすぐに結果を求めてしまう傾向があり、結果が良ければプロセスに誤りがあったとしてもそのまま通してしまいます。それが後々に大きな問題にならないよう気をつけなければいけませんね。だからこそ、数学のテストなどは途中の式をしっかり書き込んでいきましょう。
逆にこれをどう利用するか? という話ですが、それはシンプルに『結果を残す』ことでアナタの力が認められるという事実です。些細なことでも結果を追い求めていきましょう。はじめは階段を1段ずつ登るような行為でも、そういった小さな結果が重なれば自然と周囲から称賛の声があがっていきます。焦らず着実な1歩を進み続けることが大切なのですね。
本日の”ToDo”
①自分の子どもに期待しよう
子どもはその期待に応えるよう努力してくれます
②詰め込む勉強から脱却しよう
毎日着実な1歩で効率よく学習しましょう
③階段を登り結果を残そう
どんな些細な結果もアナタの力になります
アナタの心に知識というオアシスを
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