アメリカ・イギリス・ロシアの犬種グループ 最新論文から見るグループ分けも解説

　2022年12月14日現在、国際畜犬連盟(FCI)は356種類の犬種を認定しています。日本で犬種認定などの活動をするジャパンケネルクラブ(JKC)は206種類の犬種を認定しています。日本はFCIに準じ日本で数の多い犬種を登録していくスタンスですのでそこまで多くはありませんね。

　FCIでは認定された犬種でなければ大会出場が認められないのですが条件付きで認定される場合もあるようです。認定されていない犬種も含めれば1000を超えると思える犬種数ですが、FCIではこれらの犬種を特徴や人間に要求される仕事などの区分で10グループにまとめました。今回はFCIが設ける犬種グループについて、さらに世界各国の犬種グループ分けについてもわかりやすく解説していこうと思います。

国際畜犬連盟が設ける犬種グループについて

　犬種をどのように分ければ良いのか？　に関して諸説ありますが、国際畜犬連盟(FCI)は以下のようにグループ分けをしており、ジャパンケネルクラブも『生存目的や形態・用途によって』という基準からFCIと同じグループ分けを採用しています。

牧羊犬・牧畜犬

YouTubeチャンネル、サスケのアニマルキングダム(佐助動物王国) animalkingdom of Sasuke：投稿動画より

　賢いと評判の『ボーダー・コリー』、アニメ名犬ラッシーで有名な『ラフ・コリー』、日本ではペットとして人気の『ウェルシュ・コーギー・ペンブローク』などが該当します。

　人間は古くから農業で栄えてきましたから、その農場を守ってくれる上仕事までこなす牧羊犬・牧畜犬の存在は頼もしかったでしょう。とくに多くの羊をまとめて誘導してくれる仕事はまさに『仕事犬』といった貫禄です。人間ではとてもマネできませんね。

　とくに、ボーダー・コリーはドッグスポーツの常連です。人間の意図を理解する洞察力と素早い動きでこれまで多くのタイトルを獲得してきました。今後もボーダー・コリーの活躍に期待です。

使役犬

YouTubeチャンネル、PDSA：投稿動画より

　世界最大級の犬種『セント・バーナード』、ジャパニーズ・マスティフの異名をもつ『土佐闘犬』、警察犬でお馴染みの『ドーベルマン』などが該当します。

　牧畜や農村で野生動物から家畜を守ったり、荷車を引くような力仕事、山岳地帯で倒れた人を救助するなど仕事は多岐にわたります。現在では家庭犬としても大活躍していますね。

　犬は長距離を走るスタミナと、いちど喰い付いたら離れないパワーを兼ね備えている子が多いです。人間は犬の力を、昔から様々な意図で活用していたのですね。

テリア

YouTubeチャンネル、Naulo Facts：投稿動画より

　『〇〇・テリア』と名のつく犬種はほぼこのグループですが、たまに愛玩犬として作出された犬種もあるので一部愛玩犬・コンパニオン犬のグループにも存在します。

　主な用途は害獣駆除。対象は主にアナグマやキツネ、巣穴に潜って逃げる小動物で、飼い主がいちいち命令せずとも単独で狩猟してくれる頼もしい相棒です。テリア専用のドッグスポーツもあり、彼らの仕事が重要であることがわかるでしょう。

　テリアは自ら狩猟する犬種であるため、いわゆる『テリア気質』があります。もしテリアを家庭に迎えるという方は、愛犬の気質をしっかり理解し、適切なしつけをしてあげてください。

ダックスフンド

YouTubeチャンネル、Damon Bungard：投稿動画より

　まさかの『ダックスフンド』オンリーグループです。とはいえ、ダックスフンドは多種多様なバリエーションをもっているわんこでもあるのですよ。

　3 × 3ですから9種類ですね。スムースは通常の毛並み、ワイヤーヘアーは少しウェーブがかった毛並みを指します。日本では愛玩犬としておなじみですが、ドイツなど海外では今でも猟犬として大活躍しています。

　小型獣のみならず、シカやイノシシなどの追い込み猟としても活躍しているようです。どうでしょう？　お宅のダックスくんもチャレンジしてみては？

原始的犬種・スピッツ

YouTubeチャンネル、Rocadog：投稿動画より 海外でも“日本犬”が大人気！

　日本犬種の多くがこのグループに入り、また海外に輸出された『アメリカン・アキタ』、関西人に言わせたい犬種名ナンバーワンの『チャウ・チャウ』などもこのグループに属します。

　日本をはじめアジア系の多くの国に存在しますが、ヨーロッパ圏では人間の手によって様々な犬種が生まれたため原始的な犬種は珍しいようです。まあ『ジャーマン・スピッツ』がいますけどね。

　主に猟犬であることが多く、日本の犬たちも山岳地帯で猟を行う『マタギ』で活躍することがあります。主人に一途だと言われる日本犬、アナタも家族として迎えてみてはいかが？

嗅覚ハウンド

YouTubeチャンネル、National Geographic：投稿動画より

　胴長短足が愛らしい『バセット・ハウンド』、ディズニーの映画で有名な『ダルメシアン』、その愛らしさからいくつもの創作作品に登場する『ビーグル』などが該当します。

　自ら猟をするタイプなので実はすごい腕っぷしです。スピードもあり、大きな声で獲物を追い込み素早く仕留める方法で大活躍しました。もちろん、嗅覚に優れているので獲物を探す『トラッキング』もお手の物ですね。

　大きな吠え声のほか、顔全体を覆ってしまうほどの大きな垂れ耳をもつ犬種も多いですね。なんか自分のどデカい音量をガードしてるんじゃないかと考えてしまいそうですが、詳しい経緯はわかりません。

ポインター・セター

YouTubeチャンネル、halil sencer：投稿動画より

　『〇〇・ポインター』や『〇〇・セター』と名のつく犬種はほぼ該当します。そのほかドイツ語での語感かっこいい『ミュンスターレンダー』、関西人に言わせたい犬種名ナンバーツーの『ワイマラナー』などもこのグループに属します。

　人間が『銃』を開発し遠くの獲物を仕留めるのが容易になった結果獲物の存在をバレないよう伝える存在が重要視されました。そこで白羽の矢が立ったのが人類の相棒である犬。通称ガン・ドッグと呼ばれる中でもこちらのグループは『獲物の位置を知らせる』タイプの犬種が集まっています。

　ポインター、セターは獲物の位置を知らせるためそれぞれ専用の行為をします。

　これで人間に「アソコにいるよ！」と伝えるのです。ひっそりと近づくことで獲物に悟られず、人は遠くから銃で仕留めることができるのです。犬は目が悪いと思われガチですが、上記映像から見て分かる通りかなり遠くの獲物が見えていますね。さて、犬の視力はほんとうに“悪い”のでしょうか？

上記以外の鳥猟犬

YouTubeチャンネル、Nick Ridley：投稿動画より 鳥猟け――ん？　魚猟犬！？

　『〇〇・レトリーバー』や『〇〇・スパニエル』、そして『〇〇・ウォーター・ドッグ』と名のつく犬種はほぼ該当します。全体的におだやかで有効的な犬種が多く家庭犬としても人気がありますね。

　こちらのグループに属する鳥猟犬は『獲物を回収する』タイプの犬種が集まっています。上記犬種が『獲物の位置を知らせる犬種』ですのでハッキリと役割が違いますね。とくにレトリーバーは『Retriever = 回収』ですので特にその役柄に適しています。

　また⑦、⑧グループは『獲物を驚かし人間のアシストをする』役割も果たします。とくにスパニエル種はこの猟が得意とされ、飛び出した鳥を撃ち落とす行為はクレー射撃としてスポーツ化していますね。

　我が家にも黒ラブがいるのですが……まあ、ウチのわんこは基本『おもちゃ = かじるもの』ですので、持ち帰るまえにボロボロになっていそうですねぇ。

愛玩犬・コンパニオン犬

YouTubeチャンネル、The Dog Squad：投稿動画より

　日本で人気が高い『プードル』、テレビCMで一躍人気犬となった『チワワ』、かわいい耳の飾り毛が魅力の『パピヨン』などおなじみの犬種が一同に集まります。ほか『スパニエル』や『テリア』など名のつく犬種も愛玩用途で作出された犬種はこちらのグループに該当します。

　人間が愛犬を迎える理由といったらやっぱり「かわいいから！」に限るでしょう。身体はコンパクトな小型であることが多く、より人間に愛される外見や性格を意図して作出されています。犬は存在するだけで人間の心を癒やしてくれるのですね。

人間の手によって小型化が進んだ

　犬の小型化は遺伝子の突然変異が原因であることがわかっています。もともとオオカミから分かれた種族ですから、チワワや豆しばなどの小型犬はそういった経緯があるのです。犬の遺伝子に関する研究はかなり進んでおり、犬が人と同じ遺伝子『インスリン様成長因子(IGF-1)』により最終的な大きさや体重を決めることも判明しています。

　「突然変異で小型化したって、それ健康にどうなの？　遺伝子疾患とかだいじょうぶ？」と不安になってしまうかもしれませんが、確かに人間による無理な交配により、先天的に遺伝子疾患リスクを抱えた犬種は数多くいます。アナタの大切な“家族”がもっているかもしれない遺伝子疾患を早期発見できるよう、愛犬の遺伝子疾患検査サービスが様々な場所で提供されています。

　わんちゃんは言葉をしゃべれない。じゃあ遺伝子に聞いてみましょう。

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視覚ハウンド

YouTubeチャンネル、American Kennel Club：投稿動画より

　スタイリッシュな外見が魅力の『サルーキ』、美しさも兼ね備える『ボルゾイ』、小型ながら凄まじいスピードを誇る『ウィペット』などが該当します。

　流線型でムダの無いしなやかな身体、優れた動体視力とスピードで獲物を仕留める『コーシング』と呼ばれる方法で猟を行う生粋の猟犬です。主に『肥沃な三日月地帯』で活躍する視覚ハウンドは、そのスピードを最大限に活かし自力でガゼルを仕留めます。その姿は一見の価値ありですね。

　全犬種中最速と言えるため、世界いくつかの国ではドッグレースが盛んに行われています。日本でドッグレースが行えるかは別問題として、馬を追い越しちゃうような“最速犬“の姿が見たい方は、ぜひドッグレースについてチェックしてみてください。

世界のグループ分け

　ダックスフンドというと、日本では『愛玩犬』寄りのイメージですよね。FCIの犬種グループはヨーロッパ方面の都合で決められた部分が大きく、現在もヨーロッパ農村地では現役のダックスフンドが活躍しています。

　ジャパンケネルクラブではFCIに合わせようという意向から、FCIで用いられる10グループをそのまま採用しています。しかし各国のケネルクラブによっては自国に合わせた独自のグループ分けがあるので、次はそれらを紹介していきましょう。

アメリカ・イギリス・ロシアのグループ分け

　そもそも、これまでの歴史で生まれたグループ分けは人間の都合で定められたものです。イギリス(ニューカッスル)の富裕層で広まった酒場で愛犬自慢大会的なアレコレが現在のドッグショーに発展。狩猟が盛んなイギリスですから、はじめはグループ①・②の犬種しか参加していませんでしたが、そのうち「ウチの子も見て！」と様々な犬種が出場してきます。

　となると、人間でいう階級制みたいな制度が必要になってきますよね？　――現在FCIでグループわけされているのは、そういったドッグショーの歴史から区分けされているものです。

　なにはともあれ、以下に各国ケネルクラブのグループ分けを紹介してみましょう。

アメリカの犬種グループ

　アメリカン・ケネル・クラブ(AKC)で採用される犬種グループを紹介します。AKC主催のショーではこれらのグループに分けて競技が行われ、相応のタイトル(Best in Showなど)も獲得できます。

イギリスの犬種グループ

　1873年4月4日に設立された世界最古のケネルクラブということで、イギリスはそのまま『ケネルクラブ(The Kennel Club)』という名前になってます。アメリカなど国によってはイギリスが設けた基準をもとにグループわけした例もありますね。

ロシアの犬種グループ

　ロシアのケネルクラブ『ロシア犬学連合(RKF)』はFCIに準じた10グループで犬種を区別しています。さらにロシアでは国内独自に犬種認定も行われ、2021年6月時点で382の犬種が認定されているようです。

遺伝子からみた犬種グループ

　ダックスフンド、秋田犬など同じ犬種でも国によって別グループにいる場合があるのですね。現在、犬に関する遺伝子研究が進んでいて、たった1つの遺伝子変異ですら大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。犬の遺伝子と行動傾向を観察すると10の系統に分かれるのでは？　という示唆を含んだ論文も発表され、益々『犬学』の世界に深みが増していくようですね。

　アナタは犬、すきですか？　犬は大切なパートナーです。人間と長らく共に過ごした“家族“と、これからも仲良くやっていきたいですね。

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