【動画】天然記念物の”日本犬” 全7種紹介 絶滅した”越の犬”も解説

日本犬の性格や特長を一挙紹介 海外で人気な日本犬の魅力

 現在日本に認定されている『日本犬』は以下の通りです。

柴犬  :1936年12月16日
北海道犬:1937年12月21日
秋田犬 :1931年07月31日
紀州犬 :1934年05月01日
甲斐犬 :1934年01月22日
土佐犬四国犬

     :1937年06月15日
越の犬 :1934年12月28日

 日本犬は『天然記念物』です。1919年(大正8年)6月1日に施行された『史蹟名勝天然紀念物保存法』によって認定されました。現在は『文化財保護法』により、文部科学大臣の責任で管理されています。

 土佐犬と言ったら大型の闘犬を思い浮かべますが、土佐犬の正式名称は『土佐闘犬』です。土佐犬は、正しくは『四国犬』の正式名称なので注意しましょう。『越の犬』に関しては、残念ながら絶滅しており、現在純粋な越の犬は存在しません。

 国際畜犬連盟(FCI)およびジャパンケネルクラブ(JKC)が用いる犬のグループ分類では『5原始的な犬・スピッツ』に分類されています。他者には強い警戒心を示し、飼い主への忠誠心が厚い根っからの忠犬と言えるでしょう。ただし自立心があるので、信頼を勝ち取らなければ『』と認めてくれません。

 今回は、魅力がいっぱいの天然記念物になった日本犬を紹介します。

文化庁
 文化遺産データベースは こちら
 記念物保護のしくみは こちら
一般財団法人、ジャパンケネルクラブ
 グループ”5″に含まれる犬種一覧は こちら

日本犬の全体的な特長

 日本犬は『グループ5原始的な犬・スピッツ』に分類されています。犬の元となった『オオカミ』の血を濃く持っているとされていますね。日本犬保存会では『日本犬のスタンダード』が情報提供されています。ここで取り上げた特長に合わないから「この個体は”日本犬”じゃない!」というわけではないのでその点だけはご注意ください。

公益財団法人、日本犬保存会
 日本犬のスタンダードは こちら

 日本犬の特長とされているのは以下のとおりですが、各個体の性格もあるので必ずこれらの特長をもつとは限りません。アナタがもし日本犬を飼育していらっしゃるのなら、その子独自の性格を把握してあげましょう。

・飼い主に忠実
・警戒心が強い
・自立心が高い
・運動が大好き

 自立心が高いため、主と認められるには小さい頃からのしつけ、信頼関係の構築が重要になります。また、日本犬は昔からマタギ犬(いわゆる猟犬)など活発な生活をしてきたので、運動欲がとても旺盛です。日々の散歩はもちろん、飼い主の命令を忠実にこなす性格から『ドッグスポーツ』などにも向いていると言えるでしょう。

かかりやすい病気

 日本犬は日本の風土や環境に適しているので、ほかの犬種より飼育しやすいと言えます。ただし、犬は被毛に覆われているので真夏の環境は苦痛ですし、北海道犬は特に警戒する必要があります。日本犬は一般的に『皮膚病』にかかりやすいとされ、日本犬で唯一大型である『秋田犬』は、大型犬特有の『股関節形成不全』も心配です。多くの老犬に現れる『緑内障白内障』も、年をとったら気になりますね。

 皮膚病に関しては毛並みの手入れやお家の環境整備、シャンプーの選別など、飼い主でも対応可能ですが、股関節形成不全など、病気によっては飼い主が対応できないことも多いですね。こういった疾患をいち早く見つける、もしくは予防するために、定期的に動物病院へ通うことをオススメします

 なお、日本では法律により『狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせる』必要があります。狂犬病は致死率100%とされることもあるので、新たに犬を飼いたいと考えている方はしっかり覚えていてほしいですね。

デジタル庁、e-Gov法令検索
 狂犬病予防法全文は こちら
厚生労働省
 狂犬病に関しては こちら

 “長谷川拓哉”氏著 愛犬の健康寿命がのびる本

https://amzn.to/3UPgNFK

各犬種の詳しい特長

 ここでは、2022年6月1日時点での『ジャパンケネルクラブ日本犬保存会』のデータを参照します。ジャパンケネルクラブでは『柴犬秋田犬甲斐犬』がトップ3、日本犬保存会では『柴犬紀州犬四国犬』の3犬種の登録数が多いとされています。アナタが飼育しているわんちゃんは、今日本でどのくらい飼育されているでしょうか? ぜひ下記リンクから辿ってみてください。

ジャパンケネルクラブ
 2021年(1月〜12月)犬種別犬籍登録頭数は こちら

柴犬

YouTubeチャンネル、ばうわうちゃんねる【VOWWOW運動公園店】:投稿動画より

登録年
 1936年12月16日
体高
 :39.5cm
 :36.5cm
体重
 :9 ~ 11kg位
 :7 ~ 9kg位
毛色

 白地に赤(茶)、黒、胡麻

 記念物登録された『日本犬』では唯一の小型犬です。縄文時代以前から存在し、日本の南方から伝来。日本海に面する山岳地帯に生息し、鳥や小動物などの猟犬として活躍していました。他の犬種と比較してもダントツの人気っぷり。従順でいじらしい姿は世界でも人気があるようです。

 小型の身体に対し、中型や大型犬並の運動量を要求します。飼い主の指示に従おうとする性格の子が多いので、うまく接すればドッグスポーツに挑戦することも可能です。

 犬の由来は諸説ありますが、有力な説は以下の通りです。

・柴(雑木)の間をくぐり抜けながら猟をしていた
・被毛の色が枯れた柴(植物)を思わせた
・古語の”小さきもの”を意味するシバから付けられた

豆柴は”犬種”ではない

 豆柴は犬種ではない点に注意しましょう。犬の小型化は比較的容易に行えるのですが、犬の健康面を考えると積極的に推奨されるものではありません。ジャパンケネルクラブでは下記リンクにあるように注意を促しており、日本犬保存会も「公認することはない」と表明しています。

ジャパンケネルクラブ
 当該ページは こちら

岐阜、長野、富山三縣下其ノ他ニ飼養セラルル小型ノ犬ニシテ概ネ吻部ハ短縮シ赤毛ノモノ多シ

天然記念物の説明文より

北海道犬

YouTubeチャンネル、原生林の熊:投稿動画より

登録年
 1937年12月21日
体高
 :48.5 ~ 51.5cm
 :45.5 ~ 48.5cm
体重

 概ね 20 ~ 30kg位
毛色

 白、赤(茶)、胡麻、虎柄

 北海道の先住民族『アイヌ族』が猟犬として活用したことから『アイヌ犬』とも称されています。エゾシカのみならず、ヒグマでさえ狩る勇猛果敢な性格で、元々は鎌倉時代、東北地方にいたマタギ犬が北海道へ渡ったとされています。

 雪国で鍛えられた丈夫な骨格と筋肉が最大の特長でしょう。気性の荒い子もいるので、幼少期の躾はしっかり行う必要があります。判断力と忠誠心に富むので、飼い主がしっかりリーダーシップを発揮することが重要ですね。

 他の犬種と比較し北方出身のため、寒さには強いものの、暑さに弱い子が多いようです。体調管理のため、暑い季節は涼しい部屋を用意してあげましょう。


古來北海道ニ飼養セラルル中型日本犬ノ一ナリ耳ハ小サク吻部尖リ體躯ハ肩高ニ比シ割合ニ長ク飛節ノ角度淺シ

天然記念物の説明文より

秋田犬

YouTubeチャンネル、秋田犬げんき:投稿動画より

登録年
 1931年7月31日
体高
 :67cm
 :61cm
体重

 概ね 34 ~ 50kg位
毛色

 白、赤(茶)、胡麻、虎柄

 記念物登録された『日本犬』では唯一の大型犬です。大型犬にふさわしい骨太な体格。秋田地方に存在したマタギ犬を闘犬として活用するため、その犬種に『土佐闘犬』や『マスティフ』などの犬種を交雑させ大型化されました。闘犬として用いられる予定でしたが、闘犬禁止令が出された後猟犬として方向転換し、犬種の保存活動などを経て現在の秋田犬が登場しました。

 冷静沈着ながら、闘犬としての気質を持ち合わせています。飼い主を危険から守るため戦う姿は、あの『忠犬ハチ公』のイメージ通りですね。しかし、大型である上闘犬として交雑された経緯がありますので、小さいころからの社会訓練は必須です。

アメリカン・アキタ

YouTubeチャンネル、American Akita:投稿動画より

 戦後、アメリカで『秋田犬クラブ』が設立されるなど、海外でも高い人気を誇っています。現在は秋田犬を元にした『アメリカン・アキタ』という別犬種も登場していますね。

 『ジャーマン・シェパード』などと交わり、別名『グレート・ジャパニーズ』とも呼ばれています。筋肉質な体躯に、シェパードの俊敏さがプラスされたまさにグレートな犬種です。性格は日本犬気質を継承しつつも、交雑により人懐っこくなっているようです

主トシテ秋田縣北部地方ニ飼養セラルヽモノニシテ最北系日本犬ノ代表的ノモノナリ

天然記念物の説明文より

紀州犬

YouTubeチャンネル、SAMURAI DOG TV:投稿動画より

登録年
 1934年5月1日
体高
 :52cm
 :49cm
体重

 概ね 15 ~ 25kg位
毛色

 白、赤(茶)、胡麻

 紀元前から日本に生息し、紀州地方、とくに紀伊半島一帯の山岳地帯で生活していました。人間と共にイノシシやシカ、ウサギなどの猟をしていたとされます。猟犬としての血が濃く残っているとされ、飼い主には従順なものの、いざという時は勇猛果敢に行動できます。

 普段は穏やかな性格で、筋肉質ながらやや細めのボディ、ハマグリのような形をした目など、他の日本犬と比較し外見的な特長が目立つようです。猟犬気質が強い子が多いので、幼少期から躾と社会性を養うようにしましょう。

主トシテ和歌山、三重ノ両縣下ニ飼養セラルルモノニシテ中北系日本犬ニ屬マルモノナリ中型ニシテ体躯剛健性貭勇猛ナリ

天然記念物の説明文より

甲斐犬

YouTubeチャンネル、甲斐犬一休と猫のしずくと僕のチャンネル:投稿動画より

登録年
 1934年1月22日
体高
 :50cm
 :45cm
体重

 概ね 16 ~ 18kg位
毛色

 黒、赤(茶)が相交じる虎柄

 紀元前から日本に生息し、山梨県を中心とした甲斐地方で狩猟犬として活用されてきました。カモシカやイノシシを狩る猟犬として重宝され、『甲斐の虎毛犬』と称される虎模様の毛並みが魅力です。

 自分の群れ以外と交流することを好まない性格のため、猟犬としての血が特に濃く残っているようです。冷静沈着な性格で、飼い主への忠誠心もさすがの日本犬気質ですが、警戒心もそれだけ強いです。見知らぬ人は飼い主の知り合いだとしても気を許しません。気性が荒い個体が多いので、躾と社会性を養うことは必須でしょう。

主トシテ山梨縣下ニ飼養セラルルモノニシテ中北系日本犬ニ屬スルモノナリ 中型ニシテ四肢強健飛節ヨク發達シ毛ハ粗剛ニシテ概ネ黒色及茶褐色ノモノ相半バシ虎斑ヲ呈ス

天然記念物の説明文より

土佐犬(四国犬)

YouTubeチャンネル、四国犬・大和 YAMATO:投稿動画より

登録年
 1937年6月15日
体高
 :52cm
 :49cm
体重
 :17 ~ 23kg位
 :15 ~ 18kg位
毛色

 赤(茶)、赤胡麻、黒胡麻

 紀元前から日本に生息し、高知県を中心とした山岳地帯で狩猟犬として活用されてきました。イノシシを狩るお供として重宝され、場合によってはクマ猟でも活用される歴史がありました。

 日本犬のなかでもとくに身軽とされ、俊敏性に優れた骨格とバネを備えています。猟犬としての血が濃いため、やはり躾と社会性の訓練が必要ですが、信頼関係を築けば良い家庭犬として、家族を守る番犬になってくれるでしょう。

土佐犬と土佐闘犬

YouTubeチャンネル、ポチパパ ちゃんねる【保護犬達の楽園】:投稿動画より

 土佐犬と言えば大型の闘犬を思い出しますが、そちらの正式名称は『土佐闘犬』です。土佐犬は、正しくは『四国犬』の正式名称なので注意しましょう。それらを区別するため、昭和14年1939年ほどから四国犬の名称が使われるようになった経緯があります。

 土佐闘犬は土佐犬(四国犬)をベースに交配された犬種です。土佐闘犬は国によっては『危険犬種』に指定されている場合もあります。本来は従順で優しい、人懐こい性格をしているのですが、いちど闘争心が発揮されると飼い主でも手がつけられなくなるため、よほどのブリーダーでなければ飼育はオススメできません。

 どんな犬種でも、しつけと社会性の訓練はしっかり行うようにしましょう。

往古ヨリ飼養セラルル中型犬ノ一ナリ耳ハ基部廣ク頭蓋大ニシテ頬張リ勁太クシテ胸深ク前肢良ク發逹ス 赤毛及胡麻毛ノモノ多シ

天然記念物の説明文より

越の犬

登録年
 1934年12月28日
体高

 50 ~ 65cm
体重

 11 ~ 25kg
毛色

 黒胡麻、赤胡麻

 かつて富山県の『越前越中加賀能登』地域に存在していた中型の犬種です。ブラジルに移民した日本人のための新聞『日本新聞』によると、越の犬を発見したのは東京帝国大学(現在の東京大学)の『鏑木(かぶらぎ)理学博士で、山形に存在する純日本犬種を調査した折に発見しました。

 シカ、イノシシなどの狩りに適する犬種とされ、地域により『立山犬白山犬』など複数の名前が用いられていましたが、鏑木教授により『越の犬』に統一されます。さらに、医者であり、高岡市議員でもあった『飛見丈繁』氏の影響もあり、国の天然記念物として指定。さらに昭和38年(1963年)9月12日には、富山県の県獣にも指定されることになりました。

国際日本文化研究センター、海外邦字新聞データベース
 日本新聞の当該記事は こちら
  ※2ページ中央に当該記事があります
富山県
 みんなの県政、昭和46年(1971年)1月号No.25は こちら

 インターネット上で、越の犬は昭和46年(1971年)に絶滅したという情報が散見されており、上記の新聞記事(1971年当時)を見ても『丸号』という23歳のメス犬が現存するのみとあったので、おそらくこの年に亡くなってしまったものと思われます。

主トシテ北陸地方ニ飼養セラルルモノニシテ中北系日本犬ニ屬スルモノナリ中型ニシテ四肢強健飛節能ク發逹シ毛ハ粗ニシテ綿毛多シ

天然記念物の説明文より

YouTubeチャンネル、甲斐犬一休と猫のしずくと僕のチャンネル:投稿動画より

 絶滅して久しい越の犬ですが、まだ越の犬の血を引く個体が現存しているようです。今後保存活動で越の犬が復活するかもしれませんね。

 日本には、天然記念物登録されていないたくさんの『日本犬』が存在します。機会があれば、今後どしどし紹介していきたいですね。

https://amzn.to/3UOJsuM

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