“最速”犬は時速何キロで走る? 犬はつま先立ちだだと知ってましたか?
人間最速である『ウサイン・ボルト』選手のスピードはおよそ時速40キロです。チーターは100キロ、空を急降下するハヤブサは約400キロに達するとも言われます。
では『犬』の場合はどうでしょう? そもそも最も速い犬種はどんな犬なのでしょう? そして時速何キロくらいで走るのでしょうか? 今回は犬の『スピード』について、最も速いとされる犬種やドッグレースの概要などを書いていこうと思います。
意外と知らない犬の”脚”
犬の足は『趾行性(しこうせい)』と呼ばれる形をしています。かかとの部分は地面から遠く離れつま先立ちをしたような状態で歩き、爪は地面を蹴るために頑丈になり、長距離を移動しても疲れない構造となりました。
さらに、犬の後ろ足の指の数は4本になっています。犬を飼っている方でも知らないのではないでしょうか? これに加え衝撃吸収能力の高い肉球としなやかな脚部の筋肉によって弾むような走り方が可能となっているのです。
足が速い犬の特徴
犬種は『国際畜犬連盟(FCI)』によって、その特徴ごとに10種類のグループに分けられています。日本で犬種の登録をする『ジャパンケネルクラブ(JKC)』もこれと同じグループ分けを採用していますが、このなかで走る能力に特化したものは『サイト・ハウンド』と呼ばれる第10のグループになります。サイト・ハウンドの特徴を以下にまとめてみましょう。
・優秀な視覚(動体視力)
・野うさぎや鹿などを仕留める獣猟犬
・流線型の体格で俊敏な動き
・長い耳と細長いマズル(鼻先の形状)
・強い心肺機能
サイトハウンドグループは中東出身の犬種が多いので暑さに強い反面、薄い毛並みは寒さ耐性を低くしています。これらのなかでも最も速い犬種はどのような犬なのでしょう?
最も速い犬種は?
ここでは代表的なスピードが速い犬種をご紹介します。また、基本情報の犬種番号とは『国際畜犬連盟(FCI)』に登録された犬種番号を表すもので、その犬が正式に犬種として認められた順番とイメージしてください。
イングリッシュ・グレイハウンド
基本情報
・犬種番号
158
・グループ
10:サイトハウンド
・体高
オス:71 ~ 76cm
メス:68 ~ 71cm
・体重
オス:28 ~ 34kg
メス:27 ~ 30kg
イギリス原産の大型犬。流線型のスリムな体型、折れた耳に長く垂れた尾が魅力です。毛並みは総じてやわらかなスムースコート(短毛)で、温和ながら好奇心旺盛な性格。グレイハウンド系のなかでは最も有名なので単純に『グレイハウンド』と称されることが多いようです。
警戒心は強いものの攻撃的な面はありません。むしろ飼い主に従順で、強く叱られると落ち込んでしまう繊細さをもっています。
史上最速の犬種
『ジャパンケネルクラブ(JKC)』によると、レース用のグレイハウンドの中には時速70キロ超を記録したものもいるそうです。競走馬として作出された『サラブレッド』のスピードが時速60 ~ 70キロとされているので、グレイハウンドは馬より小さいながら馬に追いつける驚異的な脚力を誇っていることになります。まさに最速の犬種としても良いのではないでしょうか?
YouTubeチャンネル、RacingPostGreyhoundTV:投稿動画より イギリス・オックスフォードスタジアムで行われたレース
YouTubeチャンネル、SCOOBERS:投稿動画より グレイハウンドとウマがレース勝負しています
サルーキ
基本情報
・犬種番号
269
・グループ
10:サイトハウンド
・体高
58 ~ 71cm
・体重
16 ~ 29kg
中東原産の大型犬。一般に『肥沃な三日月地帯』と呼ばれるペルシア湾–シリア–パレスチナ間の半円形の地帯で活動していたとされています。グレイハウンドと同じように流線型の身体、おとなしく控えめな性格が特徴ですが、こちらは耳や尾に飾り毛が見られる特徴があり、猟犬としての本能があるため動くものをすぐ追いかけていくクセがあるようです。
数千年もの間、ガゼルや狐などの猟をしてきた生粋の猟犬です。さんぽ中は手綱をしっかり掴んで置かなければ一瞬で腕を持っていかれることでしょう。ドッグレースやショードッグとしても用いられていますがやはり猟犬としての人気が高いようです。
スピードについては諸説あり
時速65キロ、最速で時速77キロという記述があったのですが詳細な情報源が見当たらず、残念ながら当ブログでサルーキのスピードに関する資料を紹介することはできません。ただし素早いガゼル(最高速度は時速100キロ近い)の猟に利用されていたので、少なくともそのスピードに追随できたものと思われます。
YouTubeチャンネル、hunting South Africa:投稿動画より 明らかに“速い“ですよね
ウィペット
基本情報
・犬種番号
162
・グループ
10:サイトハウンド
・体高
46 ~ 56cm
・体重
9 ~ 18kg
イギリス出身の中型犬。筋肉質でムダのない体つき、グレイハウンドをそのまま小さくしたような外見はまさに『走るために作られた犬種』といっても過言ではないでしょう。小型犬に近い体格ながら素早さは健在なものの、性格はより内向的かつ恥ずかしがり屋になっています。ただし噛む力は強いので社交性のしつけは必須です。
グレイハウンドに複数の『テリア種』を交配させ作出されたので素早さと狩猟本能が研ぎ澄まされています。もちろんドッグレースでも大活躍しており、普段は控えめな性格から家庭犬としても人気が高いようですね。
可能性が秘められたスピード犬
最高速度は時速50キロほどですが、瞬発力が高く加速能力は全犬種随一です。以下の参照動画にて記録されたタイムを元に時速を計算すると、1着の犬はまさかの時速55キロ超え。カーブを含めてこのスピードですからまさに“可能性の塊“ですね。
YouTubeチャンネル、High Caliber racing whippets:投稿動画より
他の犬種は?
他にも『ボーダー・コリー』や『ジャーマン・シェパード・ドッグ』など素早そうな犬種がたくさん存在しますが、やはり走ることに関しては『サイト・ハウンド』グループが随一と言って良いでしょう。
彼らが速いのは単にスピードを出しやすいからというだけではありません。そもそもサイトハウンドは強い狩猟本能と「走りたい!」という欲求があります。上記の犬種は速く走ることができても走りたい欲求が少なく、コンパニオンドッグ(人とふれあうことを目的とした犬種)などはそもそも速く走れる構造をしていません。犬種のなかでもサイトハウンドはスピードと欲求に特化された犬種と考えても良いでしょう。
犬とおもいっきり走りたい! という人へ
サイトハウンドはスピードと走りたい欲求が共に高い犬種です。もしアナタがスポーツマンで、一緒に走ってくれる犬をお探しでしたらサイトハウンドを選ぶことはおすすめできません。なぜなら彼らの運動欲は人間の運動能力を遥かに凌ぐレベルだからです。もしアナタが1 ~ 2時間休まず全力で毎日走りたいという方でしたら止めはしませんが……。
ドッグレースとは? 日本でドッグレースを見られる?
ドッグレースはおおよそ『競馬』と似たよう競争競技の一種です。数頭の同一犬種を走らせ順番を競うもので、おおよそのルールは以下の通りです。
・同一犬種が4 ~ 8匹程度出場
・1周約400のトラック走
・犬の狩猟本能を刺激するため
うさぎなどを模した疑似餌を先行させる
賭けの形式は複数あり、たとえば1着を当てる『単勝式』、1・2着を当てる『連勝式』など複数の形式がありますね。
どの国でできる? 日本では開催可能?
アメリカでドッグレース中止を訴える動物愛護団体『GREY2K USA』によると、2021年11月現在ドッグレースを商業的に行っている国は以下の通りです。ただし非営利のドッグレースを開催している国はまだ多くあるようですね。
・アメリカ合衆国
・イギリス
・オーストラリア
・アイルランド
・メキシコ
・ニュージーランド
・ベトナム
日本においても戦後に導入を目指す動きがあったようですが立ち消えになりました。現在は『動物愛護法』や倫理的問題などもありますので将来的にドッグレースが開催されることは無いでしょう。
犬は人間に寄り添ってくれる最高のパートナーです。大切な“家族”といっしょに眠る時間はとても深い安らぎを与えてくれます。もしみなさんに新たな家族を迎える余裕があるのであれば、ぜひとも1匹新たに加えてみてはいかがでしょうか?
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