
脂肪の付き方や落とし方をわかりやすく解説 脂質と脂肪の違い、知ってますか?
世の中、たくさんの『〇〇脂肪』という言葉がありますね。タイトルにある脂肪は以下の意味をもちます。
・中性脂肪
血液中に存在する”脂質“の一種。エネルギー源になる
過剰にある場合、脂肪として身体に蓄えられる
→ 各種脂肪に変化するため、高すぎる場合注意
・皮下脂肪
皮膚の下に溜まる脂肪。付きにくいが落ちにくい
過剰にある場合、様々な疾患のリスクを増やす
→ 血液系、呼吸器系、関節へのダメージなど、リスクは計り知れない
・内臓脂肪
内蔵周りの脂肪を指す。付きやすいが落としやすい
過剰にある場合、様々な疾患のリスクを増やす
→ 見た目の変化が少ないため、気づかぬうちに生活習慣病になることも
・異所性脂肪
骨格、血管壁など、本来脂肪が溜まるはずがない場所に付いてしまった脂肪
過剰にある場合、恒常性維持など重大な健康被害を及ぼす
→ 内蔵、皮下に入り切らなくなった脂肪のため、非常に危険と言える
中性脂肪は血液中のエネルギー源です。頼もしい存在ですが、過剰にありすぎると各種『〇〇脂肪』に変化してしまうため、中性脂肪の値が高すぎる場合注意が必要です。エネルギー源ですから、運動などをすれば消費されますね。しかし、暴飲暴食に運動不足などが重なると、溜まりすぎた中性脂肪が『皮下脂肪・内蔵脂肪・異所性脂肪』へと変化してしまいます。それは避けたいですよね。
肥満は、程度によれば『肥満症』の診断を受ける立派な病気です。飽食の時代、もはや他人事でなくなった肥満について、今回はなんで脂肪が増えてしまうのか? どうやったら脂肪は減らせるのか? という話がテーマです。
そもそも 脂肪 とは?
ちょっとお腹をつまんでみてください。それが脂肪です。脂肪は脂質の一種なので、まず脂質についてわかりやすく解説します。
脂質とは、以下の性質をもつ物質を総称するものです。
・水に解けない
・有機溶媒に溶ける
有機溶媒は『常温で液体。他の物質を溶かせる有機化合物』を総称して指す言葉です。アルコール、シンナー、クロロホルムなどが挙げられますが、多くは有毒性のため用法用量に注意する必要があります。水に脂は溶かせませんが、それ以外の多くの物質で、脂質を溶かすことができます。
脂質が高い食品といえば『肉類』ですね。鶏肉はタンパク質が豊富とされますが、皮といっしょに食べれば多くの脂質を摂取することができます。バターや牛乳などの乳製品にも多くあり、調理で使う油、ドレッシングでも利用できるオリーブオイルなどはほぼすべて脂質と言えるでしょう。
脂質はさらに3種に分けることができます。
・単純脂質
脂肪酸 + アルコール
トリアシルグリセロール(中性脂肪、脂肪、油脂)
・複合脂質
単純脂質 + リン酸or糖など
リン脂質、糖脂質
・誘導脂質
その他。または単純糖質、複合糖質の加水分解により生じる物質
脂肪酸、ステロイド、脂溶性ビタミン
脂肪を理解するため重要なのは『単純脂質(トリアシルグリセロール)』です。人が食べた脂肪は、胃腸の消化を受けトリアシルグリセロールになります。それが吸収され『中性脂肪』として血中を流れ、様々なエネルギー生産に利用されるのです。
以下、それぞれの『脂肪』についてわかりやすく解説しましょう。
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三大栄養素の解説は こちら
人のからだにこびり付く”〇〇脂肪”をわかりやすく解説
現代社会は飽食の社会でもあります。スーパーにはたくさんの食品が並び、満腹になるまで食べる生活を続けていくと、やがてたっぷりの脂肪が身体に付いてしまいますよね。
知識を得る、それだけで肥満防止にもなりえます。ここでは、人間の身体に付いてしまう余計な『〇〇脂肪』について解説していきましょう。
中性脂肪
YouTubeチャンネル、内視鏡チャンネル:投稿動画より
中性脂肪は、食事で摂取した糖質・脂質を材料に作られる『トリアシルグリセロール』を指します。単純に脂肪と呼ばれる場合もあります。肉、魚、食用油などにも元々存在し、pH値で中性を示すことから中性脂肪と呼ばれています。
中性脂肪は血液中にエネルギー源として蓄えられます。運動などで消費されますが、使わなければ溜め込まれてしまいます。つまり、余分な中性脂肪がそのまま脂肪になってしまうわけですね。
余分な中性脂肪 → 様々な“脂肪“へ
中性脂肪が増える原因
中性脂肪が増える原因として食生活の乱れがあります。
唐揚げやステーキなど、毎日脂質たっぷりな食事だったりしていませんか? 高カロリーな食生活は、生活習慣病のリスクを増やすのでオススメできません。
炭水化物(でんぷん)の多い食生活も要注意です。主食のお米もそうですが、イモ類、根菜、粉製品など、炭水化物が豊富な食品はたくさんあります。おいしいごはんはゲンキをくれますが、しっかり消費しないとタイヘンなことになるので注意しましょう。
普段の食事のほか、お菓子やジュース、お酒も中性脂肪を増やす要因になります。これらは高カロリーに高糖質と、ダブルパンチでアナタの中性脂肪を押し上げてきます。たまになら良いでしょうが、日常的にお菓子やジュースを嗜んでいる方、ちょっとお腹が膨らんでいたりしませんか?
厚生労働省の『標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】』によれば、中性脂肪値が以下の数値であれば、脂質異常やメタボリック・シンドロームの診断基準になる場合があります。
・中性脂肪 150mg/dl 以上(高トリグリセライド血症)
暴飲暴食に運動不足などが重なると、溜まりすぎた中性脂肪が『皮下脂肪・内蔵脂肪・異所性脂肪』へと変化してしまいます。健康診断を受けた時、中性脂肪の値に注目してみてください。
皮下脂肪
YouTubeちゃんねる、ザ・きんにくTV 【The Muscle TV】:投稿動画より
皮下脂肪を溜めないために
中性脂肪がエネルギーとして利用されず、脂肪として蓄えられる場合、皮下脂肪か内臓脂肪のどちらかになります。
突然ですが、ちょっとお腹をつまんでください。はい、それこそが『皮下脂肪』です。その名前のとおり、皮下脂肪は『皮膚の下に付く脂肪』を指します。
皮下脂肪は、身体全体に同じ割合で付いていきます。お腹部分は洋梨のように脂肪が垂れ下がるため、皮下脂肪型の肥満は『洋ナシ型肥満』とも呼ばれ、男性より女性のほうが洋ナシ型肥満になりやすいと言われています。
皮下脂肪は『付きにくく、落ちにくい』という特長があります。適度な皮下脂肪は外傷ダメージ軽減や保温効果など良い点がありますが、肥満レベルになると様々な疾患のリスクを上昇させます。以下にその一例を紹介しましょう。
・睡眠時無呼吸症候群
・関節痛
・月経障害
その他、肥満というだけで様々な疾患のリスクが上昇します。余計な脂肪をつけないよう気をつけなければなりませんね。
皮下脂肪はじっくり落とす
皮下脂肪型の肥満はなかなか落ちにくいという事実があります。ムリなダイエットを決意して挫折しないよう、皮下脂肪は長い目で落としていく計画をたてましょう。
ダイエットのため過度に自分を追い詰めると、逆に『拒食症・過食症』などの摂食障害に繋がりやすくなります。皮下脂肪は落ちにくいので、一気に落とすより日々の継続を意識して、1年先を見据えたダイエットをしていきたいですね。
内臓脂肪
YouTubeチャンネル、カラダヨロコ部・管理栄養士まるお:投稿動画より
内蔵脂肪は『内蔵周辺につく脂肪』を指します。内蔵は腹部に集中しているため、内臓脂肪が多い方はぽっこりお腹である場合が多いです。
全身につく皮下脂肪に対し、内蔵脂肪は腹部の内蔵周辺にへばりつくように蓄積していきます。腹部のみ太くなっていく特長から、別名『リンゴ型肥満』とも呼ばれ、男性に多い特長があります。
内臓脂肪は『付きやすく、落ちやすい』という特長があります。内臓脂肪が溜まると腹囲が増すため、内臓脂肪が溜まりやすい男性は、メタボリック・シンドロームの診断基準としてウエスト周辺径が厳しめに設定されています。
メタボ基準(ウエスト周囲径)
男性:85cm 以上
女性:90cm 以上
※その他、中性脂肪値などを測り総合的に判断します
生活習慣病に直結する恐ろしい脂肪
脂肪細胞は『アディポサイトカイン』という一種の化学物質を放出します。これはコレステロールと同じように『悪玉・善玉』があるのですが、内臓脂肪は『悪玉アディポサイトカイン(PAI-1,TNF-αなど)』の分泌を過剰にし、生活習慣病を引き起こすとされています。以下がその一例です。
・糖尿病
・脂質異常症
・動脈硬化
生活習慣病は『運動不足・喫煙・飲酒・ストレス』などでもリスクを上昇させます。以前は『成人病』と呼ばれていましたが、年に関係なく発症する可能性から。1996年に『生活習慣病』に改称されました。食べ物を選択できる恵まれた環境だからこそ、わたしたちは何を食べ、何を食べないかをしっかり考えなければいけませんね。
異所性脂肪
YouTubeチャンネル、松崎慶太「内科医・産業医」:投稿動画より
異所性脂肪は『あり得ない箇所に付いてしまった脂肪』を指します。通常、脂肪は皮下脂肪や内蔵しのうとして蓄積されます。しかし、それらの許容量を超えても過剰にエネルギーがある状態である場合、身体は脂肪細胞以外の場所にも脂肪を溜め込むようになってしまうのです
肝臓、骨格筋、膵臓、心臓など、『本来脂肪が付かない場所』に脂肪が溜まるため、それらを総称して『異所性脂肪 = 第3の脂肪』と呼ばれるのです。
あり得ない場所についた脂肪はその箇所の働きを低下させます。
・肝臓
糖尿病、脂質異常症、耐糖能障害など
・心臓
各種心臓血管病など
・筋肉
糖尿病、筋肉減少症、運動機能低下など
以上のようなことから、異所性脂肪は付いているだけで危険と言えるでしょう。
暴飲暴食の”果て”にある脂肪
身体は余分なエネルギーを『皮下脂肪・内蔵脂肪』として貯蓄します。それでもなおエネルギーが余っている場合異所性脂肪として蓄えられます。つまり、異所性脂肪を増やさない方法は『暴飲暴食を避ける』ことです。
日本人は、欧米人種と比べ皮下脂肪が付きにくいとされています。これは『皮下脂肪を溜められる上限が低い』とイメージしてください。身体はエネルギーを溜め込むよう頑張ってしまうので、皮下脂肪にも蓄えきれないエネルギーをどこに貯蓄するか――そう考えただけでゾッとしませんか?
脂肪の落とし方
YouTubeちゃんねる、nanakoななこ:投稿動画より
ここで紹介した各種『脂肪』の数々、非常に怖いですよね? ですが、これらの脂肪を落とす方法は共通しています。
すなわち『運動 & 食事』です。とくに食生活の改善は重要ですね。
脂質や糖質の多い『肉・お菓子・ジュース・酒』を摂りすぎてないか確認してみましょう。野菜中心の食生活をしているつもりでも、マヨネーズやドレッシングをたっぷりかけているとあまり意味がありません。
脂の少ない食生活の上、腹八分目を心がけましょう。また、夜遅くに食べるのもよくありません。夕食はなるべく早い時間に食べ終わるよう工夫しましょう。
どうしても夕食が遅くなる、もっとたくさん食べたい! という方、たとえば『野菜・海藻・きのこ』など食物繊維やその他の栄養素が多い食材や『白身魚・大豆製品』などをチョイスしてみてはいかがでしょう。食物繊維はお腹で膨らみ、はやく満腹感を得ることができます。
同じ肉でも脂身のない『赤身』中心のお肉がおすすめです。もちろん、食べ過ぎは良くないですよ?
食べ過ぎ以外の原因も
肥満には遺伝やホルモンの要因も関係します。もし、運動と食事に気を使っても脂肪が減らない! という場合、病院へ通って検査を受けてみてはいかがでしょう? 病院では徹底した『運動療法・食事療法』が行われ、遺伝などの要因がある場合は投薬治療も考慮されます。どうしても改善できない、という場合選択肢として覚えておいてください。
飽食の現代社会にとって、生活習慣病はもはや隣人と言えるでしょう。おいしい誘惑に囲まれているからこそ、腹八分目の食事と、適度な運動習慣をつくっていきたいですね。
アナタの心身の健康を祈っています。
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