消化器官を各個解説 糖質、脂質、タンパク質の”消化ルート”
人は雑食性でなんでもかんでも食べます。ですが消化器官はどんな食べ物も物ともせずに消化しきり、身体に多くの栄養を運んでくれます。これってスゴイことだと思いませんか?
たとえば唾液に含まれているアミラーゼという消化酵素。でんぷん(多糖類)を消化する物質ですが、実はこれ猫などの唾液には含まれていません。さらに腸内細菌の数も、人間は数百種類の腸内細菌が数千兆個も棲む世界です。ありとあらゆる食べ物を消化吸収できる人間の胃腸、スゴイと思いませんか?
今回はそんな消化器官の凄さと『糖質・脂質・タンパク質』がどう消化されていくのかを書いていきましょう。
消化器官ってスゴイ!
消化器官と言えばみなさんは『胃袋』や『小腸・大腸』を思い浮かべると思いますが、実はたくさんの臓器が協力しながら食べ物を消化しているのです。ここでは食べ物を消化する過程を1から順番に書いていきます。
口
口(口腔)は『最初の消化器官』です。アミラーゼがでんぷんを消化することは誰もが習ったことでしょう。実はアミラーゼにはいくつもの種類があるようですが、それらはでんぷんなどの『炭水化物』を消化するはたらきをもちます。
ちなみにでんぷん(澱粉)は自作できるようなので、もし時間があれば挑戦してみてはいかがでしょう?
国土交通省、北海道開発局、帯広開発建設部
でんぷんの作り方は こちら
胃
胃袋は『Ph値が1にもなる超強力な酸性の泉』です。この環境は口から入ってきた雑菌を消毒し、消化酵素のペプシンがタンパク質を消化するため活性化してくれる良い環境でもあります。
腐敗するほどバイキンが増えないので、胃袋はある意味“清潔な環境“とも言えるのではないでしょうか? ちなみにお口で大活躍したアミラーゼはこの環境ではあまり力を発揮できなくなります。ここでふと感じたわたし個人の疑問ですが――、
胃液ってそのまま腸に流れていくの? ヤバくね?
――この疑問に関しては、胃から出て腸の入り口にあたる十二指腸によって解決されるようです。ここでは重炭酸イオンなどのアルカリ化物質で強力な酸性の胃液を中和してくれるので、食物が腸に流れても大丈夫ということですね。
酸性とアルカリ性の違いについては過去の記事を参照ください
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酸性とアルカリ性の違いは こちら
腸
小腸・大腸とありますが役割は全く異なるものです。小腸は長さ6~7メートルもあるとても細長い管で、胃から腸への入り口を『十二指腸』。そこから先を『空腸』。大腸へ続く道を『回腸』と呼びます。小腸は『消化吸収のメイン会場』となり、長い時間をかけて栄養素を吸収していきます。
とくに重要なのは入り口にあたる『十二指腸』ですね。ここでは以下のような動きがあります。
・肝臓から”胆汁“が分泌。脂肪を乳化し吸収しやすくする
・膵臓から”膵液“が分泌。3大栄養素を消化しやすくする
大腸は『水分の吸収』が主な機能になります。ここでは消化されない食物繊維や消化液、粘膜から剥がれ落ちた細胞のカスなどがひと塊になります。食物繊維は人間にとって消化できない不要な物ですが、腸内細菌にとってはこれ以上ない“ごちそう”です。それをエサに多くの短鎖脂肪酸が作られ人間のエネルギーとなる、いわば共存関係のような立場で働いています。
まあ、彼らが頑張るおかげで発酵が進み、あの筆舌し難いような悪臭を生み出すわけですが……ちなみに腸内細菌業は食生活や生活習慣などで変化していきますので、ぜひとも健康的な生活を心がけていきたいところですね。
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う💩ちに関するお話は こちら!
各栄養素の消化
多くの栄養素は小腸によって消化、吸収されます。水に溶ける栄養素は血液にも溶け込めるため、いちど肝臓でろ過してから血液に合流します。ただし脂溶性の栄養(脂肪)は血液に溶けませんのでリンパ管を通ってから静脈に入っていくことになります。各項目で詳細に書いていきましょう。
糖質の消化
・でんぷん
アミラーゼによりマルトースへ
小腸のマルターゼによりグルコースへ
・他の糖質
小腸で単糖類にまで消化、吸収される
多くの糖はより細かい形態にまで分解され、最終的にはもっとも単純かつ水に溶けやすい『単糖』として吸収されていきます。
3つの栄養素のうちもっともシンプルな過程で消化され、すぐ吸収しエネルギー源として活用できるので、普段エネルギッシュに活動したい場合は脂肪にならない程度にたっぷり摂取しましょう。ただし現代社会の食事は糖質過多な傾向があるため注意が必要です。
脂質の消化
①胆汁により乳化
②膵液により消化 → 脂肪酸とモノシアルグリセロールへ
③脂肪酸のうち短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸は
小腸から吸収、肝臓を介し血液へ
④長鎖脂肪酸とその他の産物は
再度合成、タンパク質と合成
⑤リンパ管を通し血液へ
脂肪は『脂』で、血液はほぼ『水分』です。血液内では文字通り“浮いた存在“になってしまいます。そのままの状態で血液に流れると血栓待ったなしなので、まず血液に溶け込める形にする必要がありますね。ここで必要なのは腸の解説で紹介した『胆汁・膵液』になります。
小さな脂肪酸は水に溶けます。その他の産物は特殊なタンパク質に包まれることでリンパ管に送られ、これが中性脂肪として血中を巡回するようになります。余分にある場合はそのまま脂肪に姿を変えるので、できることならエネルギーとして消費したいですね。
消化にちょっと時間がかかるため、脂質の多い食事はいわゆる『腹持ちがいい』ものになります。
タンパク質の消化
①胃のペプシンにより一部消化
②膵液により消化 → ペプチドへ
③膵液によりさらに消化 → アミノ酸に分解され小腸から吸収
タンパク質は多くのアミノ酸が結合した分子なので消化が大変です。カギとなるのは膵液で、これは3大栄養素を消化する大量の酵素が含まれています。
吸収までの過程がものすごく大変であると同時に、消化にも大きなエネルギーが必要なため、熱生産のひとつである『食事誘発性熱産生』がそれだけ大きくなります。
食事誘発性熱産生の比率
・糖質:6%
・脂質:4%
・たんぱくの比率:30%
タンパク質を多く摂ると、食後に身体がぽかぽかしてくることはないでしょうか? 温まりたいならタンパク質を多めに摂るのもひとつの手段かもしれませんね。
これらについてより詳しく知りたい方には医学博士であり聖徳大学名誉教授でもある『中嶋洋子』氏監修の『改訂新版 いちばん詳しくて、わかりやすい! 栄養の教科書』がおすすめです。
とても細やかに記されていながら図解形式でとてもわかりやすい! 入門書どころかこれ1冊あれば栄養学はだいたいおっけーと言えちゃうレベルです。食べ物をなんとなく選んでいるそこのアナタ、乱れた食生活で後悔する前にこの本を参考にしてみてはいかがでしょう?
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