裁判員に選ばれる”確率”は? 刑事裁判を一般人に審議させる”意味”とは?
裁判員制度とは『国民の中から刑事事件の裁判員が選ばれる制度』です。選定には基準があり、裁判員は有罪・無罪の判断、刑罰の重さなどを裁判官と共に判断します。
裁判員制度は平成21年(2009年)5月に開始され、日本では6名の裁判員(2名の補填員)と3名の裁判官が共に刑事裁判に参加します。刑事裁判に国民が参加することで、裁判の内容や手続きに国民の視点・感覚が反映され裁判の仕組みを理解してもらい、司法への信頼性向上を図った制度だったのですが、裁判員制度が始動してから、ニュースではとりわけ批判的な扱いが多かったように思います。
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突然通知表が送られてくる不安があるかもしれません。今回は裁判員制度についてわかりやすく解説していきます。
裁判員になるまでの流れ
裁判員制度によってアナタが裁判員に選定される手順は以下の通りです。それぞれ解説していきましょう。
① 地方裁判所ごとに管内の市区町村の
『選挙管理委員会』がくじ引きにより名簿を作成
② 名簿から、さらに翌年の『裁判員候補者』となる名簿を作成
③ 選挙管理委員会が名簿に記載された人に
候補者に選ばれた旨を通知、調査票を送付
④ 辞退理由が認められればリストから外される
刑事事件が発生した後、裁判所による選任手続きが行われる
⑤ 裁判所にて質問票、面接により最終的に最大6人(+補填2人)が選出
⑥ 裁判に参加する
名簿の作成
名簿作成は地方裁判所の管轄内で行われますので、たとえば北海道に住む人がいきなり「沖縄の裁判に参加してください」なんて通知を受け取ることはありません。基本的に自分の市区町村を管轄している地方裁判所ですから、わたし(犬物語)は2022年現在『日光市』在住ですので『宇都宮地方裁判所』での刑事裁判において候補に挙がることになります。
名簿の作成は毎年11月頃。候補者に選定された人には通知が届く仕組みになっており、令和4年度の通知は11月16日に発送されました。今年分の通知ももうすぐ発送されると思われますので、以下のサイト内であらかじめ通知表のデザインを把握し、心の準備を終えておくと良いかもしれません。
最高裁判所、裁判員制度
通知票については こちら
裁判員を辞退したい場合
裁判員を辞退したい方は、送付されてきた手紙内の調査票にその旨を記入することができます。ただし「イヤだから辞退します」というわけにもいかず、これには一定の理由がなければ辞退することができません。具体的な例として以下のようなものがあります。
・70歳以上もしくは学生、生徒
・妊娠中・産後8週間(場合によって夫なども辞退できる)
・重い病気やケガを患っている
・親族や同居人の付き添い、育児、介護など
・重要な仕事であり、その日出られないと企業などに大きな弊害がもたらされる
・社会生活上の重要な用務(冠婚葬祭など)がある
ともあれ、裁判員になりたくない方はその意思を示すのも良いと思われます。辞退理由が承知されれば裁判員に選定されることはありませんがそうでない場合、もしくは辞退しなかった場合、実際に刑事事件が発生した時再度通知が届きます。
候補者に選ばれたら
次の送付資料には具体的な裁判の期日が記されています。まだ裁判員になることは確定しておらず、期日に合わせて地方裁判所に向かうことになるのですが、この通知は期日より6週間前までには送付されるので焦る必要はありません。ゆっくり心の準備をしておくことができます。
地方裁判所へ訪れたら、まずは手荷物検査などをしつつ匿名性のためにアナタは番号で呼ばれることになります。ここで最終的に裁判員となる最大6名(+補填2名)を選定する『選任手続き』が始まりますが、たとえば『裁判の被告人や被害者が身内だった』などという理由から裁判員になれないこともありますね。もちろんいずれかと知り合いだった場合も同じことです。
裁判員決定
最終候補に残ったら、アナタは地方裁判所で具体的な刑事事件の概要を説明されます。どのような事件かの説明を受けたあと、事件を担当する裁判長からの質問を受け公平な裁判を行えるかどうか審査されます。
これらの結果を踏まえ裁判員の選定に入りますが、検察官と弁護人は、規定内で候補者の中から特定の人を理由を明かさず裁判員に選ばないように請求できます。最終的にこれらの関門を突破した最大6名(+補填2名)の方が裁判員となります。
裁判員となった方は、さらに裁判員として裁判に参加する上で必要な情報、知識を裁判官から説明され、最後に裁判員として法令に従い公平誠実にその職務を行う宣誓を行う必要があります。
裁判員及び補充裁判員は、最高裁判所規則で定めるところにより、法令に従い公平誠実にその職務を行うことを誓う旨の宣誓をしなければならない。
裁判員法:第三十九条第2項より
ちなみに、という話
裁判員に選ばれなかった方はここで終了となるのですが、法律により旅費、日当及び宿泊費が支給されます。もちろん裁判員として選出された方も同様です。
裁判員裁判の流れ
ここまでの手続きを終えた後、実際に裁判の場にて審理を行うことになります。裁判員が関わる要素は以下の3点です。
審理
アナタがイメージする『裁判』の世界です。被告人が受けた『起訴状に書かれていた犯罪を本当に行っていたか?』を判断することになります。
法定でそれぞれの立場から提出された証拠などを調べ、証拠書類の説明を受けたり、証人や被告人の話を聞きます。もちろん彼らに対して質問をすることも可能です。
評議・評決
別室において裁判員と裁判官だけの間で行う議論です。対応する法律などを裁判官から説明してもらいながら活発な議論が行われます。裁判員制度は一般市民の感覚を重視した制度ですからどのような意見でも良心に従って積極的に発言するほうが良いでしょう。
裁判員は『有罪・無罪』の判断のみならず『有罪であればどの程度の罰が適当か』まで判断する必要があります。法解釈については裁判官の方が説明してくれますので、アナタは良心に従って屈託のない意見を述べましょう。
判断における注意点
基本的に全会一致、もしくは多数決で最終決定されるのですが、ここで心理学的に注意すべき集団心理をご紹介しましょう。
人には『集団極性化』という『集団での議論になると極端な結論に達しやすくなる心理』があります。また、集団のなかで自分の責務を怠けてしまう『社会的手抜き』現象も起こるため、自分から積極的に意見を交わし、極端な思考に走らないよう注意しましょう。
内部リンク
思い込みに囚われない方法は こちら
判決宣告
判決です。裁判長が判決を述べるので、わたしたち裁判員がすることはありません。ただ席について裁判の終わりを待ちましょう。
新たに”成人”になるアナタへ
新年度の法改正に伴い、『2022年4月1日』から満年齢18歳以上の成人も裁判員に選ばれる可能性が出てきました。ちなみにという話ですが、通称『裁判員法』では成人が裁判員になるのではなく『衆議院議員の選挙権をもつ人』の中から選ばれて裁判員になる仕組みであるようです。
第十三条 裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、この節の定めるところにより、選任するものとする。
e-gov法令検索:裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 より
ブログ内で書いたように、裁判員候補者の名簿は前年度に作成済みなので、今年度に20歳未満の方が裁判員になることは無いでしょう。20歳未満の方に裁判員制度が適用されるのは、今年の秋名簿が作成される『令和5年度』からとなります。
また、少年法においても、18 ~ 19歳の方は『特定少年』として処理されるようになりました。詳しくは下記のリンクをご参照ください。
もし裁判員に選ばれたら?
YouTubeチャンネル、裁判所(COURTS IN JAPAN):投稿動画より
もし裁判員候補に選ばれて混乱してしまった時は、慌てずに裁判員コールセンターに電話しましょう。裁判員候補者のみが知ることになる『名簿記載通知』に記載されているのでそれを参考に、間違ってもなくさないように気をつけたいですね。
大切なことですから繰り返し書きますが、裁判員制度は『一般市民の視点・感覚を反映する』意味合いがとても強いです。ですから、遠慮せず良心に則って屈託のない意見を述べるようにしましょう。
ちなみに裁判員の質問表にウソを書いたり、理由もなく宣誓を拒絶したり、裁判当日に無断で欠席した場合は過料が課されるのでご注意ください。最高で30万円も支払うことになりますし、一方から報酬を受けそちらに有利な発言をしようものなら最高2年間の懲役刑もあるので、裁判官に選ばれた方は良心に則って決してウソを述べることのないよう努めてください。
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