【入門用】心理学用語”認知的不協和”の基本をわかりやすく解説【わかりやすい解説】

不都合な”矛盾”をムリヤリ解決! 認知的不協和の対策も紹介

 認知的不協和は『矛盾した情報に触れた時の不快感と、不快感を覚えた時の対応』に関する一連の理論です。アメリカの社会心理学者『レオン・フェスティンガー(Leon Festinger)』氏が提唱した言葉で、1957年に出版した著書『認知的不協和の理論(A theory of cognitive dissonance)』で詳しく紹介されました。

 認知的不協和を通して、彼は「精神的に平穏でいるために、人は”心理的一貫性“を追求する」と主張しました。つまり、人間は『自分の想い』に矛盾した状況に対面した時『不快感』を覚え、それを納得させるためムリヤリな方法でも解決したがるのです。例としてよくあげられるのはイソップ物語の『すっぱい葡萄』ですね。

 ブドウが欲しいのに取れない。この状況を、キツネはどう“納得”すればよいでしょう? ほかにもいくつかの例を交え、認知的不協和に関してわかりやすく解説していきます。

レオン・フェスティンガー氏の原著[A theory of cognitive dissonance]

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なぜ認知的不協和が起こる? 理想と現実の狭間

 認知的不協和は『自分の意志と矛盾した状況』に置かれた時生まれます。葡萄が欲しいのに取れない、健康に悪いタバコを吸う、ダイエットしてるのに甘いお菓子に手が出てしまう……そうした矛盾に出会った時、心が矛盾を解決するためイロイロな手段に走るのです。

 お腹が減ったら、誰だって『食べる』という行動をとりますよね? けど、キツネは食べるという行動をとることができませんでした。そんな矛盾した状況に不快感を覚えると、心がその不快感を取り除こうとイロイロな合理化を働かせようとします。イソップ物語『すっぱい葡萄』のストーリーをおさらいしつつ解説していきましょう。

イソップ物語:すっぱい葡萄、要約

――お腹を空かせたキツネが『おいしそうな葡萄』を見つけました。食べようと手を伸ばしますが、葡萄はどれも高いところに成っており『食べることができません』。怒りと悲しさに包まれたキツネは、やがて葡萄の木に背を向け、次のような言葉を口にしました。
<strong>キツネ</strong>
キツネ

アレは熟してないすっぱい葡萄だ。そんなのいらない!

 キツネくんは『葡萄を食べたい』とう意志をもつのに『食べられない』のです。事情はどうあれ、食べてないという自分の想いと矛盾した状況に対する不快感が、怒りや悲しみを生み出しました。結果、この感情を合理化させるため「あの葡萄はすっぱいんだ」と勝手に決めつけ、その場を離れていきました。

 ちょっとまって。その葡萄、ほんとうにすっぱいの?

 キツネは最初「おいしそう!」と想像していたのに、最後は「あの葡萄はすっぱいんだ!」と、葡萄に対する評価を根拠なく変えたのです。これが、自分を納得させるための合理化です。

 合理化という名前ですが、実際はまったく合理化できてないことがわかりますよね?

不快感が大きいほどに

 キツネのような思考は『認知の重要性』と『認知の比率』の狭間で発生します。

 もし、キツネが『そんなにお腹がへってなかった』としたらどうでしょう? 高いところにある葡萄に対し「届きそうにないし……いっか」と去っていく姿が想像できます。もしくは、ちょっと試してみて「やっぱムリか」と早々に離れてしまうでしょう。美味しそう、食べたいと想う気持ちが強ければ強いほど、認知的不協和の威力は強くなっていきます。

 キツネが『食べられなかったショック』をそこまで感じなかったらどうでしょう? その時は、葡萄をすっぱいなんて評価せず、ただ淡々とその場を離れていったと思います。目の前の現実に対するショックの強さが、そのまま認知的不協和の強さに直結します。

認知の重要性
  自分の信念・感じる価値の高さ
  葡萄をどのくらい”おいしそう“と感じるか
認知の比率
  重要性と比べた現実のギャップの大きさ
  葡萄をゲットできなかった”ショック“がどのくらい大きいか

 ここで感じた不快感が大きいほど、心が思いもよらぬ歪曲をしてしまうわけですね。アナタも「あの葡萄はすっぱいからいらない!」なんて口にしたこと、ありませんか?

日常に潜む認知的不協和

 ダイエットしよう! ――そう宣言したアナタのテーブルには、まだ大量のドーナツがあります。で、宣言したその口でまた頬張り始めました。そんな自分に不快感を覚えたなら、アナタが認知的不協和を覚えている証拠です。

 日常のお仕事でも認知的不協和の出番があります。これはフェスティンガー氏の研究で調査されたので紹介しましょう。

退屈な単純作業の仕事を……
 ・高い給料で行う
   → 仕事は退屈だったと評価する人が多い
 ・安い給料で行う
   → 仕事は楽しかったと評価する人が多い

 給料の違いだけで、労働者の感想は以上のように変わりました。労働者は『退屈安い給料だけど一生懸命働いた』という矛盾した経験をしたわけです。結果、労働者たちはこのような感想を抱くようになりました。

<strong>労働者</strong>
労働者

退屈で安月給な仕事を続けられるハズがない。なんでボクは働き続けたんだ? ――いや、仕事はけっこう楽しかったじゃないか

 コレ、ちょっと怖くないですか? まさかとは思いますが、安月給で働かせてる会社は認知的不協和を承知の上で安い給料のまま――まあ、考え過ぎですかね?

 ほかにも、日常にはたくさんの認知的不協和が存在します。アナタ自身どのような不快感を覚えているのか、探してみるのも良いですね。

認知的不協和の解決

 認知的不協和を感じた人は、それを合理化するため『行動』もしくは『』を変えます。

行動を変える
  葡萄を食べるのをあきらめる
  ドーナツをガマンする
  タバコを吸わなくなる
(認知)を変える
  あの葡萄は酸っぱいんだ!
  ドーナツは中央に穴あるからカロリーゼロだし
  タバコが健康に悪いと決まったワケじゃないだろ

 ドーナツを食べない。タバコを吸わないなどの行動は適切ですが、その行動ができない場合、人は自分自身の心を騙すようになってしまいます。その場合、人は以下のような方法で心を騙します。

信念を変える
  おいしい葡萄 → すっぱい葡萄
信念を新しく追加する
  ドーナツは高カロリー → ドーナツはカロリーゼロ
信念の重要性を減らす
  タバコの健康リスクが高い → タバコの健康リスクはそこまで高くない

 合理化と名付けられていますがまったく合理化できてないことに気づいてますか?

認知的不協和の例 カルト教団と洪水

 世の中には認知的不協和で説明できる現象がたくさんあります。それらの例を紹介しつつ、さらにわかりやすく解説していきましょう。

 フェスティンガー氏は、著書を発表する1年前に行った潜入調査結果を公表しました。所属していたミネソタ大学の同僚と共に、シカゴ(研究用の仮名ではレイクシティ)に存在する夫婦が運営するカルト教団へ潜入。婦人が受信したという守護霊たちの『世界を飲み込む洪水』という予言と、信者たちの予言に対する信心、予言が外れた時の反応などを詳細に報告しました。

 その宗教団体は30人程度の規模で、激しい追求にも関わらず外部に一切の情報を逃さない徹底した秘密主義を貫いていました。内部の結束は堅く、婦人が公表した予言を完全に信じ切っています。ところが、その信心が揺らぐ出来事が起こりました。

 予言された時間に洪水が起こらなかったのです。

 集結し、世界の終わりを想像していたメンバーは呆然とします。自分が信じてきた世界の破滅という現象が、実際には起こらなかった――認知的不協和の始まりですね。

 この時、リーダーである夫婦は一貫性を保つため「わたしたちが一晩中祈ったおかげで、神は世界を破滅から救ったのです」という趣旨の言葉を聖なるメッセージとして信者たちに伝えました。そしてこの結果を、それまでまったく相手にしていなかったメディア各社にアピールし始めたのです。

 ここで信者たちは以下の行動に分かれます。

<strong>信者A</strong>
信者A

予言は正しかったんだ! 誤解されぬよう世界に知らせないと!!

<strong>信者B</strong>
信者B

この教団はインチキだったんだ……もうやめよう

 自分の『予言を信じる心』と『信じていた予言が外れた』という矛盾が不快感を生み、それを説明するため自分が元々もっていた信心の強さにより予言の解釈が変化したのです。

信心深い人
  より教団を信じるようになり、布教活動に専念する
そこまで信じてなかった人
  教団を去る

 自分が強く信じていたことに矛盾する出来事が起きた場合、アナタはどう感じるでしょう? もしかして、すでに心当たりがあるんじゃありませんか? ――このエピソードはアメリカの社会心理学者ロバート・チャルディーニ』氏著『影響力の武器 第三版 なぜ、人は動かされるのか』で詳細に語られています。アナタ自身の心を知るためにも、ぜひ手にとってみてはいかがでしょう?

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認知的不協和の対策

 認知的不協和は自分の意志と矛盾した状況に置かれると生まれます。なので、最も良い対策は『自分の意志と矛盾しない生活をする』ことですが、人生そうカンタンにはいきませんよね? ということで、ここではもし認知的不協和が発生する状況に置かれた時、誤った合理化に陥らない方法を紹介しましょう。

不協和だけに気を取られない

 会社から長期出張の通達を受けたアナタは、観光地として有名な地方に単身赴任するか、家族と共に過ごすため断るかの選択を迫られました。いずれの選択をしても、アナタは『家族と過ごせない選択をした or 美しい観光地をエンジョイする機会を失った』という不協和を経験するでしょう。しかし、ちょっとまってください。

 この問題、決して家族かキャリアかだけの問題ではありません。長期出張による経済的負担や引越し先の交通の便、最寄り駅の存在、観光地で得られる恩恵、家族へのお土産話など、考慮できる材料はたくさんあります。

 アンカリングという言葉があり、人はある要素に注目すると、それ以外の情報受け付けなくなる心理があります。不協和の原因だけに意識をもっていかれぬよう、あらゆる角度から選択肢を伸ばしていきましょう。

 ちなみに、わたし(犬物語)日光市在住ですが、日光は観光地としてとてもおすすめできる場所です。機会がある方は、ぜひとも日光市へお越しいただきたいですね。

内部リンク
 日光市への交通の便は こちら

適切な”行動”をとる

 認知的不協和が恐ろしいのは『間違った合理化』に陥る可能性があることです。冗談で「ドーナツは穴が空いてるからカロリーゼロ」と言うのは良いですが、本気の本気で口にしたら明らかにヤバいヤツ認定されますよね?

 変えるべきは思考でなく行動です。タバコやお酒、日光浴にゲーム、運動など、それぞれの行為のリスクをきちんと理解し、適切な行動をとるようにしましょう。

客観的な情報を重視する

 ダイエットしたいけど食べちゃう、多くの方が経験するでしょう。なかなか行動を変えられない場合、人は心を騙しやすくなってしまいます。それを避けるため、できれば数字で表せる客観的な情報を用意しておきましょう。

 ダイエットの場合、毎日体重や体脂肪を記録しすぐ確認できる場所に貼り付けておくのが良いですね。食べ物の誘惑に襲われる前に、前もって用意したデータを見ることで、自分の行動理念を再確認することができます。

 認知的不協和に陥った時、どう行動するかで今後が変わっていきます。どうか自分を騙さずに、うまく工夫して不快感を処理していきたいですね。

主な参照サイト:SimplyPsychology(海外の法人心理学解説サイト)
 認知的不協和に関しては こちら

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