言論の自由はウソ!? 圧倒的な権力の前にペンも剣も意味がない?
アナタは『ペンは剣よりも強し』という言葉を知っていますか?
言論の力は武器より優れるという意味でよく使われていますね。ですが、元をたどると実はこれ権力者が部下に対し言った言葉であり、むしろ『権力者はいとも簡単に力無き者を排除できる』という意味の言葉なんです。
この格言がどうして生まれたのか、その裏事情をわかりやすく解説していきます。
ペンは剣よりも強しの語源、歴史についてわかりやすく解説
『ペンは剣よりも強し』 ――この格言はだれが生み出したのでしょう? 歴史上、これに似た言葉は度々登場しました。
諸説ありますが、最も古いとされるのは紀元前5年に成立した旧約聖書外典の『アヒカル物語(Story of Ahikar)』です。数ある写本のひとつに『言葉は剣よりも強し』と書かれているようですね。
ほか、歴史上の偉人もこれにならった言葉を多く残しています。
・ウィリアム・シェイクスピア:戯曲『ハムレット』の一説
→ レイピアを身につけている人の多くは、ガチョウの羽ペンを恐れている
※ many wearing rapiers are afraid of goosequills
・ナポレオン・ボナパルト
→ 10万の銃剣よりも敵対的な新聞4紙の方が怖い
※ Four hostile newspapers are more to be feared than an hundred thousand bayonets
・ロバート・バートン:著書『憂鬱の解剖(The Anatomy of Melancholy)』の著作に際して
→ このことから、ペンが剣よりどれほど残酷であるかは明白だ
※ From this it is clear how much more cruel the pen may be than the sword
格言というより言われると納得する文言的な扱いですが、これが格言として定着したのはいつからなのでしょうか?
The Church of Jesus Christ od Latter-Day Saints
アヒカル物語については こちら(英語)
Project Gutenberg
憂鬱の解剖については こちら(英語)
語源は?
この格言の起源とされるのは、イギリスの作家『エドワード・ブルワー = リットン(Edward Bulwer-Lytton)』が1839年に発表した戯曲の一説です。
・リシュリュー ~あるいは陰謀~
→ Richelieu: Or the Conspiracy
実在の人物リシュリュー枢機卿を主人公とした作品ですね。部下が自分の暗殺計画を企てていることを知ったリシュリューは、しかし自身が枢機卿(聖職者)であるため武器をもって戦うことはできません。
しかし、枢機卿はローマ教会における最高顧問であり、さらに首席国務大臣(日本で言う総理大臣)の地位にもあり、サインひとつでだれでも処刑できちゃうような立場にありました。
暗殺者が武器を持てる立場にあると指摘された彼はこう言い放ちました。
完全に偉大な人間の支配の下ではペンは剣よりも強し
つまり『圧倒的な権力の前で武器は無力』といったニュアンスです。実際、彼にとってはサッと処刑執行許可証にサインしちゃえば合法的に相手を葬り去ることができるのです。
INTERNET ARCHIVE
戯曲『リシュリュー』当該ページは こちら(英語)
現代の使い方
現在は『言論の力は武力に勝る』といった意味で使われているようです。日本においては、たとえば開成学園や慶應義塾が標語として採用していますね。特に各種報道機関、ジャーナリスト、ネット上でも多くのSNSで言論の自由と権力への反抗を意味するスローガンとして多用されています。
言葉は大きな力を生み出すのですね。しかし、力が強いからこそ人は言葉によって深く傷つき、場合によっては取り返しの付かない事態につながることだってあるのです。
言葉の暴力は銃より恐ろしい
真実がなんであれ『ペンは剣よりも強し』はうなずける言葉ですよね。事実、SNSでは誹謗中傷という言葉の力で相手を傷つける銃より強力な武器となっていると思います。それによって自ら命を断った人も少なくなく、この格言がいかに重要であるかがわかりますね。
ネットに限らず、何気なく言われた言葉に傷つくこともあるでしょう。気にしないほうがいい、と言葉で片付けられるのもまた辛いですよね。そういった言葉に惑わされないためには自分のこころを落ち着かせたり、そんな自分のこころを見つめることが重要です。
ネット上で見かけた言葉に傷ついたり、思い出して気分が落ち込んでしまう。そんな時自分を癒やしてくれる言葉があるとうれしいですよね。
精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉福沢諭吉が記した学問のすゝめの説明でありがちな『人は生まれながらにして平等』も、実は先を読むと『人は平等だが実際の暮らしは平等ではない。最終的に学ぶことで“差“が生まれるから勉強しなさい』という文脈になっています。
有名なことわざ『風が吹けば桶屋が儲かる』は風と桶の間に何があるのか説明をできなければ理解してると言えません。自分がその格言の意味を本当に理解してるのか、身近な語源について調べると思わぬ発見があるかもしれません。
こういった言葉は時代の流れで解釈が変わったり、別の意味が込められたりします。ペンは剣よりも強しも、今は言論の自由を肯定するような意味で使われていますね。
アナタが当たり前と思ってる言葉の意味が、何年か先にはまったく別の意味をもつようになるかもしれません。たまに別の世代の人と話をして、そういったジェネレーションギャップを感じてみてはいかがでしょうか?
ユル昭和 ~懐かしの死語メドレー~
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