【今さら聞けない】エビデンスってなに? 医療における”エビデンスレベル”の解説【入門用】

動物実験に”エビデンス”はありません 科学的根拠をわかりやすく解説

<strong>Aくん</strong>
Aくん

お湯でコロナを予防できる

<strong>Bさん</strong>
Bさん

生姜がコロナに効くんだって!

<strong>Cさん</strong>
Cさん

花崗岩の持つ放射線効果でコロナが死滅するらしいぞ

 ――インターネット上で実際にあった『コロナウイルスの撃退法』だそうです。2019年末に発生、爆発的に増加した新型コロナウイルス感染症は世界的なパンデミックを引き起こし、テレビでは毎日のように新型コロナウイルス関連のニュースが報道されました。

 もちろん、上記の予防策はまったくのデマですが、当時はエビデンスの重要性も語られることなくただ「〇〇すればコロナが撃退できる!」という字面だけが先走り多くのデマがあちこちで信じられてきました。

 このようなことを繰り返さないように、しっかりとエビデンスとはなにか? を理解しなければいけませんね。今回はこの『エビデンス科学的根拠とはなにか?』という話題、医療におけるエビデンスの重要性、エビデンスピラミッドの存在、エビデンスにおける注意点などを解説していきます。

エビデンスとはなにか? エビデンスレベルとは?

 エビデンス科学的根拠とは『研究に基づいて明らかにな多々事実』です。ある問題に対し研究を重ね、データとして正しさが認められたものがエビデンスだと言えます。ある薬を投与して『10人中9人に効果があった』という研究結果が得られ、それを論文にまとめて発表するなどがイメージしやすいでしょうか?

 さらに、このエビデンスにはレベル信頼性の高さが存在します。

 エビデンスレベルはオックスフォード大学が提唱した『実験者のバイアスを考慮した上でどの程度信頼できるか?』という考え方で、モデルはいくつかありますが今回は『松村むつみ』氏著作『エビデンスの落とし穴』を参照した内容を中心に解説していきます。エビデンスに関する疑問のすべてに『答え』を示してくれる良書です。

「エビデンス」の落とし穴 (青春新書インテリジェンス)
ワクチンは効果があるvsあまり効果がない、糖質制限は健康にいいvs健康に悪い、卵はコレステロール値を上げるvs上げない……どれも「エビデンスあり!」なのに正反対の情報が出てくるのはなぜ?そもそもエビデンスとは?医師にして医療ジャーナリストの著者が「エビデンス」の真実を明らかにした一冊

 ここでしっかり『エビデンスとはなにか?』を学び、ただただ「エビデンスが~」なんて叫ぶだけの人は卒業しましょう。

エビデンスの信頼性を知る

 エビデンスについて、はじめに重要なことを明記しておきます。

エビデンスがある = 確実ではない

 10人中9人に薬の効果があった、と先ほど書きましたが、これは逆に言えば1人には効果がなかったということでもあります。なぜ10人中9人に効果があったのか? という謎も研究する必要があります。さらに、他の研究機関において、同じ条件のもと実験を行い、同じような結果が現れるか確かめる必要もあります。それらの過程を積み重ねていき、やっと「この薬剤には効果があるのだろう」と言えるようになります。

 エビデンスは信頼性の強さであり、決して確実ではないのです。エビデンスを理解するためには以下の要素が重要です。

・エビデンス = 真実とは限らない
・エビデンスありでも、必ずその診断や治療法が正しいとは限らない
・エビデンスも玉石混交

 これらを踏まえて、次は『エビデンスレベル』について書いていきましょう。

 エビデンスレベルは基本的に『1 ~ 6』で示されます。1に近いほど信頼性が高いので、信頼性が低いレベル6から順番に紹介しましょう。

エビデンスレベル6:専門委員会や専門家個人の意見

 個人的な意見とはいえ専門家ですから、そういった方の言葉には非常に重みがありますね。テレビでもそういった専門家の証言が紹介されていますが、その人が『ほんとうにその筋での専門家か』を見極める必要があります。

 日本において医師免許を所持する方は、麻酔科以外はどの標榜科目も名乗れる『医術に関して幅広い知識や技術をもっている』ことを示します。とはいえ、日々進歩する医療の世界で、常に最先端の知識を得るには、それぞれの分野のエキスパートである必要があるでしょう。

エビデンスレベル5:症例報告

 記述研究とも呼ばれます。ある病気を患った患者さんに対し、その効果を確かめ論文などにまとめ、専門家同士で議論を交わしたりします。新型コロナウイルスの治療に関しても、インフルエンザ治療薬の『アビガン』を投与してみたら症状の改善が見られた、という症例報告がありましたね。

エビデンスレベル4:症例対照研究・コホート研究

 分析疫学的研究とも呼ばれます。それぞれを端的にまとめると以下のようになります。

症例対照研究:過去にさかのぼり病気の要因について研究する
コホート研究:追跡調査で病気の要因について研究する

 症例対照研究の手法として、例えば『現時点で肺がんを患っている方』を集め、その方一人ひとりに喫煙歴運動習慣睡眠時間など様々な生活習慣について調べ、現時点で肺がんではない人』と比べてどのような違いがあるのか? を比較研究するものです。

 コホート研究は『現時点で肺がんでない人』を数千人規模で集め、例えば喫煙者と非喫煙者に分け数年間観察。将来的に『喫煙者で肺がんになった人非喫煙者で肺がんになった人』の数を集計してみるような調査方法です。

 上記コホート研究の場合は『喫煙の習慣がある人は、そうでない人と比べて〇〇倍肺がんになるリスクが高まる』というような表現ができますね。症例対照研究より比較的信頼できるとされていますが、どちらもサンプル数が鍵となるようです。

エビデンスレベル3:非ランダム化比較試験

 これはレベル2のランダム化比較実験と内容が重なりますので以下で解説します。

エビデンスレベル2:ランダム化比較試験

 ある集団に対し比較実験を行うものです。新薬のテストなどではほぼ必須の実験といえるでしょう。おおまかな手続きは以下の通りです。

① 新薬テストの実験参加者を(AB)の2グループに分ける
Aグループに”新薬“を投与
Bグループに”偽薬“を投与(プラセボ
④ それぞれのグループごとに”薬の効果“を検証する

 Bグループに『偽薬プラセボ』を投与する理由は『プラセボプラシーボ効果』対策です。偽物の薬を渡されても、心理的な作用で実際に治ってしまうことがあります。わざわざBグループを用意するのは、薬そのものの機能によって治療できたか? を知るための対照実験ということですね。

 実験に関しては基本的にランダムで人選が行われるのですが、薬の種類やお医者さんの判断などでランダム化処理を行わない場合もあるようで、この場合信頼度は若干弱くなりますね。いずれも実験参加者患者はどちらの薬を投与されてるか知りません。さらに、薬を処方する医者さえプラセボかわかならいようにする二重盲検法という手法があり、これはさらに信頼度が高くなります。

エビデンスレベル1:システマティックレビュー・メタアナリシス

 システマティックレビューは『同じ内容の研究データをできるだけ集め、統合分析し結果を出す』ものです。『新薬は〇〇病に効くのか?』という論文やデータを集められるだけ集計し、その薬効を検証するイメージですね。

 メタアナリシスは上記の強化版で、データに不備があるものや極端なデータは排除し、統計学的に統合して結果を出す手法になります。おそらく『メタ分析』という言葉を知っている方もいるのではないでしょうか?

 以上がエビデンスレベルで、レベル1に近い研究が多ければ多いほど『信頼性が高い』ということになります。

エビデンスによる信頼性

 これらをまとめ上げ、エビデンスピラミッドの頂点には科学的根拠を基に策定された『エビデンスに基づく診察ガイドライン』が存在し、ガイドラインに示された基準により患者を診断しています。

 ガイドラインは医療研究の進化により毎年のように作り変えられており、さらなるエビデンスが積み上げられれば、いままでの常識が覆るなんていうことも珍しくありません。お医者さん方はこういった積み上がりの上で患者さんを診ているのですね。

 現状の問題点として、学会によりエビデンスレベルの細かい定義や解説が異なるので、各標榜や団体などでガイドラインに微妙な差があるかもしれません。

厚生労働省:エビデンスレベルとガイドライン(2017年以降)については こちら

 また、信用度が高い手法(コホート研究など)で見いだされた同じ論文でも『実験者バイアス』などが働いたり、主要テーマに沿った内容だけ取り上げ記述されるなど差があるため、活用する専門家はそれらを客観的に見つめる必要があります。

 それぞれレベルはあっても、目的や期待によって研究手法は柔軟に扱われます。たとえば『今すぐ感染者数を調べデータを出したい!』という場合、数十年かけてコホート研究を行うわけにはいきませんよね? こういうときは広くサンプルが得られる横断研究が有効的です。

よくあるエビデンスについての”勘違い”

 なにかと騒がれているエビデンス。商用でもよく利用され、ことあるごとに「エビデンスがあります!」と宣伝されていますが、エビデンスでよくある勘違いについて書いていきましょう。

動物実験はエビデンスの段階ではない

 動物実験試験管レベルで成功した実験は、人間でデータをとっていないのでエビデンスはそもそもありません。エビデンスはあくまでも人間で試さなければ意味がないのです。

 また、マウスのような小さい動物に対して『10グラム投与したら効果があった!』という情報があったとします。百万歩譲ってそれがエビデンスある真実だとしても、それを宣伝文句にした商品に含まれる成分が『5グラム』とかだったら噴飯ものです。マウスよりウン十倍もデカいサイズの人間にマウスより少ない量摂取させても意味ねーだろとツッコミを入れたくなりますがそこは抑えて、黙ってセールスマンに「NO」を突きつけましょう。

エビデンスと”メカニズム”は別

 よく通販番組で「〇〇の成分が軟骨成分の回復を促すことが解明されました!」的な文言を見たことがあると思いますが、これは単にメカニズムが解明されただけに過ぎません。これは『〇〇という物質を注射したら軟骨成分が回復する』というエビデンスにはなりえないのでご注意ください。

 例えばプロテインは筋肉増強に役立ちます。しかしプロテインを飲む = 筋肉が発達するわけではありませんよね? プロテインでタンパク質を摂取し、さらに筋トレを行い傷ついた筋肉を修復する過程で発達するのです。一方で『ステロイド』は過剰にホルモンを増強させ、筋トレによって人間が本来もつ以上の筋肉を付けさせてしまいます。健康被害に関するエビデンスも豊富にあり、だからこそステロイドは禁止されるのです。

 エビデンスと上手につきあい、健康的な毎日をおくりましょう。

本日の”ToDo”

①コロナウイルスの情報を確認しよう
  新型コロナウイルス感染症については厚生労働省のホームページで確認できます
②エビデンスを判断する力を身に着けよう
  報道番組の”専門家の意見“をチェックしてみよう
③コロナウイルス対策をしよう
  マスクのエビデンスは信頼性が高いようです

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