【初心者向け】糖質制限の”罠” ホントは危ない”ローカーボ”ダイエット

糖質制限がもたらす”悲劇” 実践する場合は必ず専門家の指導を受けてください

 糖質制限ダイエットとは『栄養素のうち糖質の摂取を制限したダイエット法』です。ダイエットが流行するに従って広まった糖質制限は非常に効率よく“やせる”効果があるとして一大ムーブメントを巻き起こしました。

 しかし、糖質制限について確固たるエビデンスはあるのでしょうか? 今回は流行する糖質制限についてのエビデンスについて考えていきましょう。

そもそも糖質制限って?

YouTubeチャンネル、厚生労働省:投稿動画より

 厚生労働省は糖質についての具体的摂取目標値を定めていませんが、日本人は日々の食事のなかで約1日あたり300グラム程度の糖質を摂取しています。糖質制限ではこの量を減らし、一般的に『軽い糖質制限』とされる食事でも1日あたり130グラム程度にまで抑えられます。白米を茶碗1杯で50グラム程度ですから、1日3食摂るとすでにオーバーしてしまう計算になりますね。

 実はこの糖質制限、中途半端に実践してしまうと後で手痛い“しっぺ返し”が待ち構えています。次の項目ではそんな糖質制限の罠をご紹介しましょう。

厚生労働省
 日本人の食事摂取基準(2020年版)については こちら

罠その1 糖新生

 糖新生とは『身体から糖質を生み出す反応』です。糖質が不足すると脳は「エネルギーが足りない! 糖質をちょうだい!!」と信号を送ります。はじめは肝臓などに蓄えられている糖質を使うのですが、それも1日ほどで使い果たし、じゃあ次はどうするかというと身体のなかでムリやり糖質を作り出します。その材料はタンパク質――糖新生によって筋肉が分解され糖に変換させられてしまうのです。

 猫などの肉食動物は脂質やタンパク質の食生活が主なので糖新生で糖を作り出しています。しかし人間は普段糖質を摂取している生き物で、不足すれば脳のエネルギーが枯渇しイライラ感や倦怠感などの悪影響に苛まれます。

糖新生対策

 糖質制限をすると筋肉は減っていく。この事実があるため普段筋力トレーニングをしている方は中途半端な糖質制限を行うことはありません。彼らは『ケトーシス』という糖質制限を極限まで追求する手法をとっています。

 1日50グラムレベルの糖質制限をすれば、身体は脂肪からなる『ケトン体』という栄養素を糖の代わりとして利用し始めます。ここまですれば筋肉が分解されなくなるのですが、1日50グラムと言えば茶碗1杯の白米で終了です。この生活を何ヶ月もできるか? と問われればうーんと唸ってしまうところでしょう。

罠その2 リバウンド

 糖質制限の成果があり、アナタはダイエットに大成功しました。やった! と安心しきってしまうのもつかの間、こんどは太らないための戦いが待ち受けています。

 糖質制限とはすなわち食事内容の制限です。アレ食べたいコレ食べたいを我慢し続けていくなかでフラストレーションが溜まり、やっと乗り越えられた自分へのご褒美と称して暴飲暴食。ちょっとくらいならいいやと食べてしまうと、糖質は食欲にダイレクトアタックを仕掛けてきます。

 人は血糖値が下がると食欲が湧いてきます。そして糖質を手っ取り早く上昇させるのはもちろん糖質たっぷりの食べ物です。気づけばアナタはおいしい白米を手に取り、パンを頬張り、野菜にも糖質が入ったドレッシングをたっぷりとぶっかけます。その末に待ち構えている未来は――もうおわかりですよね?

 おいしい食べ物は止まらない!

“やせる” と “健康になる” は別物

 糖質制限に関しては長い研究の歴史があり、論文の中には『やせるし健康に良い』という意見と『やせる一方で健康被害が出ている』という意見が入り混じっています。これらについて、今回は『松村むつみ』氏著作『「エビデンス」の落とし穴』から引用して解説していきましょう。著書では巷でよく騒がれるようになった『エビデンス』の真の意味と、コロナウイルス感染症に関わるエビデンスの有無や各種まぎらわしい疑問に答えてくれる良書です。

Amazon.co.jp: 「エビデンス」の落とし穴 (青春新書インテリジェンス) : 松村 むつみ: 本
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健康とは?

 医学的な意味での健康とは『死亡率を減らす深刻な病気(心筋梗塞など)を減らすこと』と言えるでしょう。最高のパフォーマンスとかではなく、あくまでも『スタンダード』な状態を目指しているわけですね。

 それを基に、著書に記された内容や参考論文などを参照すれば、糖質制限のメリット・デメリットは以下のようです。

メリット
 ・”やせる“効果が認められている
 ・短期的に心筋梗塞、脳卒中などのリスク因子を改善する可能性がある
デメリット
 ・長期的に心血管系の合併症が増え死亡リスクが上昇する

 糖質(炭水化物)“質”についても言及があります。白いパンより全粒粉のパンが良いとされ、有名なイギリスの医学雑誌『BMJ』に掲載された論文では心筋梗塞のほか、なんと悪性新生物による死亡リスクを下げる結果が示されました。日本人を対象としたエビデンスではありませんが、これは非常に大きな成果だと思います。

 またハーバード大学が行った25年にもわたる長期研究によれば『炭水化物の摂取が多すぎても少なすぎても死亡リスクが高い』という結果が出ました。日本人を対象としていない研究ながら、これは厚生労働省が参考する資料としても挙げられており、これはいかにバランスの良い食事が重要であるかの示唆にもなっているでしょう。

痩せたいのか? 健康でいたいのか?

 アナタの目的が『健康リスクを鑑みてもとにかくやせたい!』というのであれば試してみる価値はあるかもしれません。ただし糖質制限という名前がついている以上、このダイエット法は『人間が本来すべき食生活と乖離している』事実を見落とさないようにしましょう。

 わたしは糖質制限を独学で実践し、全盛期の体重125キロから現在では83 ~ 85キロ程度で調整しています。ただし2022年夏時点においては糖質制限を続けるつもりはなく、やるとすれば『総カロリー』を計算した全体的な食事制限を選択するでしょう。

そもそも糖質制限は難しい

 糖質制限は非常にキビシイ条件があり、長続きしにくいという特徴があります。だからこそリバウンドなどのが潜んでいますし、世の中にはたくさんの「糖質制限で失敗した!」という声で溢れかえっているのです。そういった失敗を未然に防ぐためにも、ぜひ専門家の指導のもとで行うようにしましょう

 ダイエット法を選択する最重要項目としてもっとも優先すべきは『アナタが継続的に行えるダイエット法』であるかどうかです。筋トレが好きで毎日だってできるという方は筋トレを中心としたダイエット法、食事制限をしたくないという方は、食べる量は減らさず何を食べるか? を考えるダイエット法など様々な手段が考えられます。ぜひともアナタ自身が健康的にやせられるダイエット法を見つけましょう。

 アナタの心身の健康を心から祈っています。

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