【心理学】心に存在する”盲点” 思いこみにとらわれないテクニックを紹介【認知バイアス】

認知バイアスとは? 脳の”クセ”を理解しパフォーマンス向上を目指すテクニック

 脳は複雑な処理を電気信号を介し一瞬で行います。目から入った光は視神経を通り人に周囲の景色を教えてくれますし、肌には圧力痛み温度感覚などを感じるための神経が張り巡らされています。感覚的なことに限らず、普段の思考判断など、脳は1日を通してありとあらゆる処理を行い働き続けるのです。

 そんな忙しい脳ですから常に全力で働くわけにはいきません。普段のエネルギーの消費を抑えたい脳は、その機能にちょっとした『クセ』のようなものを持ってるんですね。

 これは日常生活を送る上で必要な機能ではありますが、時として厄介な『凡ミス・勘違い』を引き起こしてしまうもともあります。それを防ぎつつ、うまくこの『認知バイアス』と付き合っていくために、今回は認知バイアスの自動処理について紹介しつつ、どうすれば脳の勘違いを防ぐことができるのか? についても書いていこうと思います。

 では、これから脳の『偏見』とお付き合いしていきましょうか。

脳の”クセ”とはなにか?

 下にある画像を見てください

 自作なのでちょっと出来がアレですが、2人の人間が道路に人が立っているようなイメージです。この絵を見た場合、アナタならどう解釈するでしょうか? わたしの主観ですが、たとえば『となり同士で立ち並んでいる親子』みたいなイメージを思い浮かべます。では、次の場合はどうでしょう?

 この絵を見てのアナタのイメージを教えて下さい。さて、どう見えるでしょうか?

 左の人間と右の人間、この2人に『身長差』を感じるでしょうか? ――どちらかというと、この2人は『同じ身長で右側の人は遠い場所に立っている』。アナタの脳はそう認識しているはずです。

 美術、芸術、マンガやアニメの世界では、これらは遠近感を出すための手法としてキャンバスに描く際広く利用されています遠近法など。ただ並べるだけでは身長差があるだけのように感じるので、奥行きの道路を描いたり目安となる箱を描きこんでみたりと工夫するわけです。

 棒人間の大きさは全く変えていません。ただ棒人間を描く場所を変えただけです。しかし、棒人間がいる場所を変えなくても、ちょっと背景にひと工夫いれるだけでまた『親子』のような身長差に錯覚させることもできます。

 画力はわたしの今後の課題として、人は同じ大きさのものでも、脳の勝手な処理によって印象が全く変わるということを理解していただけたと思います。

 これは決して悪いクセというわけではありません。視覚は眼球を通して脳に『反転した2次元の情報』を送っているので、それらを精査していかに3次元として捉えるかが課題となっていきます。その問題のなかで脳が「こう解釈すればより空間を把握できるんじゃね?」と判断して生み出したのが『視界』なのですが、この処理をする上で生まれてしまう勘違いこそが上記の認知バイアス『錯視』です。

 このように、バイアスはある意味脳が限られた知覚のなかで生み出した『より正確に情報を認識するための歪み』と言えるでしょう。認知バイアスがあるからこそ、人は距離感をつかめるのです。

認知バイアスの対策テクニック

 認知バイアスはわたしたちの判断力にも影響を及ぼします。「ここまでやってきたんだから今さら引き返せるか!」と、続ければ悪化することを知りつつ停められなくなる『コンコルド効果』、自分にとって都合の良い真実だけ目を向け先入観の塊になる『確証バイアス』、災害に見舞われても「自分は大丈夫」と考えてしまう『正常性バイアス』など、判明しているだけで分厚い本ができてしまうレベルです。幸いにも薬学博士であり、人間の脳の可塑性を研究している『池谷裕二』氏が、自身の著作『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』にて代表的な認知バイアスをわかりやすい例でたっぷり紹介しています。自分が陥っているかもしれない認知バイアスをこれでチェックしてみてください。

自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80 (ブルーバックス)
買い物で、得だと思って選んだものが、よく考えればそうでなかったことはありませんか。こうした判断ミスをもたらす思考のクセは、「認知バイアス」と呼ばれます。認知バイアスは、無意識のうちに判断ミスを引き起こす、いわば思考の錯覚。その不思議な世界を気鋭の脳研究者がひもときます。認知バイアスの古典例から最新例までクイズ形式で実感...

 認知バイアスについて知識を蓄えても、ではどういった対策テクニックがあるのか? という話になってきますね。ということで、次はわたしがおすすめする認知バイアス対策へのポイントをご紹介しましょう。

ポイント① 冷静に”事実”を見つめる

 2021年5月現在、去年に引き続き新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう状況です。みなさんはきちんとコロナ対策としてマスクや消毒をしていらっしゃるでしょうが、なかには「俺は大丈夫だから」とか「私はコロナウイルスにはかからない」とか、はたまた「ワクチン打ったから・いちどコロナにかかったから大丈夫」なんて思ってらっしゃる方もいるのではないでしょうか?

 振り込め詐欺などに関してもそうです。自分は詐欺にかからないとか、自分のところには電話は来ないなんて考えていると、いざその時がやってきた時、アナタは冷静な行動ができないかもしれません。自然災害や火事、事故などに「自分は大丈夫」という感覚で日々を過ごし、そして実際にそれらを体感して「まさか自分が―」という言葉を口にする。よくあることです

 これは『正常性バイアス』と呼ばれるものです。コロナウイルス感染症は、1億人以上いる日本において非常に少ない比率ではありますが、しかしアナタが感染しないという理由にはなりません。きちんと事実を認識し受け止めればよいのですが、その気持ちを持ち続けてしまうと、現状として感染者が(世界を見渡してみると比較的)少ないということもあり、さらに『自分が現状感染してない』ということに自信をもち、都合の良い情報だけを選びだす『確証バイアス』までもってしまう可能性もあります。

 コロナウイルスは『誰にでも感染しうるウイルスである』という事実をしっかり認識しておきましょう。このとき「○人中○人しか感染してないから大丈夫」と解釈したのであれば、アナタはすでに正常性バイアスに取り憑かれてる可能性があります。コロナウイルスは“○人中○人感染する”のではなく、接触し身体の中に侵入したら感染するものです。データはデータかもしれませんが、それは時に事実を覆いボカすフィルターになります。データではどうなってるか? ではなく、データからどのような事実がわかるか? をしっかり見つめましょう。そのデータを自分の都合よく解釈してしまわない注意も必要です。

 わたしたち個人でできることはマスク着用、手洗い消毒などがあります。しかし、自粛に疲れてストレスを溜め込むのは免疫学的にもよくないので、ほどよくストレス解消する手段を用意しておきましょう。外に出て15分ほど散歩するだけでもココロと身体がスッキリする場合があります。こんな世の中だからこそ自分なりのストレス解消法を探していきたいですね。

ポイント② クリティカルシンキング

 脳は『直前に触れた情報をもとに現在の情報を解釈する傾向』があります。たとえばアニメなどはただののはずなのに、パラパラ漫画のように次々と別の絵を見せていくことで動きを認識していますね。直前までの刺激が今の判断に影響することを『プライミング効果』と呼ぶのですが……ここでちょっとした脳トレをしてみましょうか。

 『牛歩』って言葉ありますよね。牛のような速さで歩くっていうアレです。牛は昔田んぼかどこかを耕すために使われてたみたいな記憶があるのですがどうですかね? ――牛の色は白と黒ですが、わたしのとなりにいる『ラブラドール・レトリーバー』は真っ黒なわんこです。散歩が大好きで、動くものに敏感でこのまえはノラ猫を追いかけようとして制御が大変でした。さすがに空を飛ぶカラスは追いかけられませんけどね。

 と、ここで質問です。アナタが思い浮かべる『もっとも速いモノ』はなんでしょう? ちょっとだけ考えてみてください。

 ――もしかすると、アナタは『チーター』とか『ハヤブサ』なんて思い浮かべていたのではないでしょうか?

 あ、もし違ってたらすみません。だけど、もっとも速いモノって考えると、チーターは時速100キロ前後ですし、ハヤブサも急速降下時に時速400キロに届くかというレベルですので、もっとも速いモノという質問の答えとしては少々物足りないのではないでしょうか。

 わたしは宇宙が好きなので『光の速度』なんて答えちゃうんですけど、どうでしょう? わたしと同じ、もしくは上記の答えより速いモノを選んだ方はどれほどいるでしょうか? これまでさんざん『』や『』などの動物を取り上げた理由は、もっとも速いモノを尋ねる前に『動物』を見せることで、脳に印象付けさせて動物に関する速いものを連想させるためだったのです。

 プライミング効果は無意識レベルで人の判断を狂わせます。思っている以上に直前までの情報に引っ張られることを防ぐため、ここでひとつ『クリティカル・シンキング』の考え方をご紹介しましょう。

 クリティカルシンキングとは日本語で『批判的思考』と訳せるのですが、なんでもかんでも否定すれば良いというわけではなく『常に別の手段がないか模索するという姿勢』のことを指します。上記の例だと、もっとも速いモノと質問され真っ先に浮かぶのが『チーター』だったとして、そこで(ほんとうにその選択肢でいいのか?)と自分に問いかけてみるのです。そうすれば『動物』というカテゴリに縛られることなく「速いモノ“であって動物である必要はないのでは?」という発想に至ることができるでしょう。

 この思考法は大切です。質問の意味を吟味し、前提を確認し、なによりも結論を急がない。この3点だけでも理解しておくと今後判断が必要な時に助けとなってくれるでしょう。

ポイント③ 目的意識をもつ

 人はわりと周囲に流されやすい生き物です。社会性のある動物はだいたいそうですが、たとえば行列のあるお店は気になりますし、みんながラーメン屋で『醤油ラーメン』を食べていると、わりと「じゃあ、僕も」的な流れで醤油ラーメンを注文する方も多いのではないでしょうか?

 日本は特に『同調圧力』に乗せられやすい性質があるようです。これはある種のムーブメントを引き起こす良いきっかけにもなりますが、同時にサービス残業が横行するブラック企業を生み出したり、なんとも長短併せ持つ要素ですね。

 多数派の選択にそのまま従う人間の心理は、専門用語では『バンドワゴン効果』と呼ばれますが、こういった集団の力に対抗するには自らで判断する力が必要となります。そのために、物事に取り組む前に自分の目的をしっかり立てておきましょう。パソコンをひとつ購入するだけでも、たとえば『どんな目的で利用するのか?』によって選択すべきスペックが変わっていきます。事務仕事で利用するだけだから最低限のスペックだけほしいのか、ウェブ会議ができるようなパソコンがほしいのか――インターネットで動画を見たいならそれなりのグラフィックボードやメモリが必要ですし、プロゲーマーを目指すならそれはもう高性能なパソコンに周辺機器が必要でしょう。

 ただセールスマンに「これがオススメですよ!」と言われるままではなく、そういった目的をもって事前に情報収集すると良いですね。なんならそのセールスマンに質問攻めして困らせるレベルでも良いでしょう。なぁに、相手から心理的操作で買わされるよりはそっちのがマシです。

ポイント④ 他者の意見を聞く

 上記の例は個人の決断の重要性が示されていますが、なにもかも自分で決めるとなるとそもそもの情報量が少なかったり、自分自身が気づかぬバイアスにとらわれてしまう恐れがあります。それを防ぐために必要な要素がこれです。

 他者の力を得るためには相談してみたり、情報の共有をしてみたりするのが良いでしょう。上記で紹介した要素や、心のなかにある全ての意見を出してみる『ブレイン・ストーミング』も有効ですね。脳は曖昧なものを嫌い確実な情報から判断しようとする『曖昧性効果』もありますので不安を解消する意味でも必要でしょう。

 ただし、ここからさらに注意があります。脳は情報が多すぎると逆に判断に窮するという『情報バイアス』があります。さらに、不必要な情報であるにも関わらずその情報が気になって仕方ないという『アンカリング』も存在するため、いかに必要な情報や意見をスポイルするかが鍵となってきます。これらの問題は、さきほど紹介した目的意識やクリティカル・シンキングをうまく活用すると良いでしょう。

 他者の意見として、たとえばアンケートなんかも良い手段です。純粋なデータとして情報収集したい場合、性別や年齢など最低限のステータスにとどめ、純粋な数字として受け止めるようにしてください。

 バイアスは意識していたとしてもなかなか冷静に判断できない厄介者です。まあ、バイアスがあるからこそ人間はものを正しく認識できる側面もあるので、なるべく都合の良い操作を覚えていくしかありませんね。

本日の”ToDo”

クリティカル・シンキングを実践しよう
  普段何気なくしていることに疑問をもってみましょう
目的意識をもとう
  なぜそれをするのか? 1回立ち止まるだけで気づくことがあります
③他者と意見交換をしよう
  他者の意見から新たな道が見えることもあります

 アナタの心に知識というオアシスを

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