病院の”たらい回し”を防ぐ 通うべき正しい科目は?
最近ストレスを抱え込んでしまって辛い……病院へ相談にいこうかな?
精神科って響きがイヤだな……周りに知られるのも恥ずかしいし、そういえば心療内科ってなんだろう?
周りにヘンな偏見持たれたくない! 病院に行きたくない!
――このような悩みを抱えている方、多いのではないでしょうか。心の病気は対応が速ければ速いほど解決も速いので、自分の心に違和感を覚えたらすぐにでも最寄りの病院を受診するよう強くおすすめします。
心の“課題“を抱えてしまい通院を決意した。だけど上記のような『似た名前の科目がたくさんあって「どこに通えばいいのか?」が分かりづらい!』という問題、あると思います。
結論を簡潔にまとめると以下のような分類になります。
・精神科
脳になんらかの不調が表れ精神に影響を与える病気全般
『精神神経科』も同じ
・神経科
もともと『精神科』も含んでいたため『ほぼ精神科』と解釈して良い
現在神経科を名乗る病院は少ない
・心療内科
精神的な要因が絡む”身体の病気“を主に扱う『内科』
1996年に標榜開始。心理療法も対応可能
・神経内科
こころの問題とは完全に別。神経疾患を扱う
2017年以降『脳神経内科』に変更
純粋に心の問題を解決したいのであれば『精神科』を受診するのがベストでしょう。ただし、自分の症状をハッキリ判断できるとは限らないので、その場合は『大きな総合病院の“総合診療科“』を選択して診断をしてもらい、適切な科目へ誘導してもらうのが1番です。
今回はそれぞれの科目について解説していきます。
病院には”標榜科目”がいっぱい! 一般人にはもはや判断不能
病院には『内科・外科・循環器科・整形外科』などさまざまな『標榜科目』がありますが、病院が看板などで広告可能な診療科目は『厚生労働省』によって定められています。
精神科・神経科・心療内科はいずれも心の問題を範囲内に扱う科目になりますが、それぞれベクトルが異なりますのでそれぞれ解説していきましょう。
精神科・神経科
YouTubeチャンネル、関西医科大学【公式】:投稿動画より
冒頭にあげた通り『精神科』と『神経科』に大きな違いはありません。神経科は歴史的に『精神医学 +脳神経科学』の意味をもっていたのですが、医療研究が進むに連れ範囲が膨らんできたためそれぞれが分かれることになりました。
昔の日本ではまた『精神科』という言葉の印象が良くなかったため、精神科が広まっていく際『神経科』の看板を掲げる病院が多かったという歴史的な問題があったようです。
『神経科』とある場合はそのまま精神科と解釈して良いでしょう。また『精神神経科』という看板を掲げている病院もあるようです。いずれにしても、心の問題で病院に通いたい場合『精神科』を探すのが最も無難です。精神科は『メンタルクリニック』の名前で専門的に診断してくれる病院が多くあります。心の問題を解決したいなら迷わず最寄りのメンタルクリニックへ通ってみましょう。以下に代表的な疾患を紹介します。
・うつ病
・躁うつ病
・不安障害
・統合失調症
・依存症
・認知症
・発達障害
心療内科
YouTubeチャンネル、心療内科医たけお 心身健康TV:投稿動画より
心療内科は『心身症』を主に扱う科目となり、あくまでも『内科』の側面が強い科目です。
心身症とは『身体疾患にストレスなど心の問題が絡むこと』を指します。身近な例を挙げれば以下のようなものがわかりやすいでしょう。
はぁ……最近やることがいっぱいで頭が痛いわ
うっ、イタタ……緊張で急にお腹が!
このように、ストレスや心の不調が深く関わることで“身体に影響が出る疾患“を専門とします。これらは『心身相関』という心と身体が密接に関わるとする考え方のもとで治療が行われ、心の問題も取り扱うため心理療法なども手段のひとつとして用いられます。あくまで『内科』的治療をメインとして行われます。
心療内科では重度の精神障害や『希死念慮』レベルのメンタル疾患は対応できず、その場合はお医者さんから精神科への受診をすすめられるでしょう。精神科という名前を嫌い心療内科を受診する患者の多さから、それらについて対応せざるを得ない事情もあるようですが、メンタル疾患は基本的に『精神科』の役割だということを忘れないでください。以下が心療内科が扱う代表的な疾患です。
・ストレス性高血圧
・ストレス性胃潰瘍
・過敏性腸症候群
・偏頭痛
・糖尿病
・過食症、拒食症
心療内科が日本で生まれたのは1996年のこと。医療全般の歴史で言えば新参者で、心療内科を専門にする方は少ないようです。ただ、よくある『メンタルクリニック』などでは精神科と心療内科をどちらも掲げている場合が多く、この場合精神科医メインの先生が心療内科の看板も掲げているパターンが多いようですね。
神経内科
YouTubeチャンネル、聖隷浜松病院チャンネル:投稿動画より
神経内科は『脳や神経・筋肉の病気を診断し治療する科目』です。見るのはあくまでも『神経』であり精神(心)ではありません。ただし、脳の病気は得てして後遺症が残ったり、治療法が確立されず不自由な生活を強いられる場合があるので、そういった生活とどう向き合っていくか? という心理的サポートを行うことがあります。
アプローチは完全な『内科』的治療です。最近は誤解を避けるため『脳神経内科』の看板が掲げられている場合が多いです。手術が必要な場合は『脳外科』と連携し治療にあたり、以下のような疾患を幅広くカバーしています。
ひとまず『神経内科は別』ということを覚えておきましょう。
・アルツハイマー型認知症
・くも膜下出血
・脳梗塞
・パーキンソン病
・ビタミン不足による認知症
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
たらい回し 診療難民
同じ『認知症』でも、たとえばビタミン不足による認知症は神経内科の領域ですし、『胃潰瘍』もストレスが原因の場合や食中毒から派生した場合など可能性がたくさんあります。原因が異なればそれぞれの科目の治療を受けなければなりません。
これは現代医療の問題である『患者のたらい回し・診療難民』の原因の一端でもあります。アナタが「お腹が痛い」と症状を訴えて病院に通ったとして、ではそれが『ストレス性』の腹痛なのか? それとも『食中毒』の腹痛なのか? ――問診である程度の診断がつけば良いでしょうが、より専門的な診断をするには、どうしてもそれぞれの標榜科目ごとの診断を受けなければなりません。
こういった問題を抱え込まないためにも、ぜひアナタだけの『かかりつけ医』を見つけるようにしましょう。
どうしてもわからない! という方は”総合診療科”を受診しよう
YouTubeチャンネル、JPCA on YouTube:投稿動画より
どうしても「どこを受診すればいいのかわからない!」という方は、迷わず大きな病院の『総合診療科』を受診しましょう。その名の通り総合的に診療してくれる科目です。
または『とりあえず心当たりのある科目に通院してみる』ことをおすすめします。その時わからなくても、診断によってほんの少しでも治療に近づくことができます。これからも心身の健康に気をつけていきたいですね。
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