【ビタミンD】人間も”光合成”できるって知ってる?【コレステロール】

YouTubeチャンネル、国立環境研究所動画チャンネル:投稿動画より

人間は光合成でビタミンDをつくる!? 光を利用してビタミンDを合成する方法とは?

 植物は、太陽の光を浴びて栄養を作る『光合成』でエネルギーを生産しています。メインの役割を担うのは『葉緑体(クロロフィル)』です。学校で習ったことが思い出されますね。

光・水・二酸化炭素 → ブドウ糖・酸素

 これと同じような仕組みを、わたしたち人間を含めた多くの動物は『呼吸』によって行っています。植物の葉緑体に対し、動物では『ミトコンドリア』がエネルギー生産に関係しています。

 人間をはじめ、多くの動物は『呼吸』でエネルギーを生産しています。こちらは『ミトコンドリア』が深く関わりますね。

酸素 → 二酸化炭素

 『呼吸』は酸素を取り込み、不要になった二酸化炭素を吐き出します。動物の場合、食べ物を食べることで『糖質・脂質・タンパク質』などの栄養素を身体に溜め込み、ミトコンドリアがそれらを使ってエネルギーを生産しています。常識的に考えて、人間が光合成するとは考えられませんが、光合成を『光を浴びてなんらかの物質を合成する事』と考えると、人間も立派に光合成していると言えるのです。

 アナタは『ビタミンD』をご存知ですか?

 ビタミンは、三大栄養素と異なり、エネルギーや身体をつくる成分とほとんど関係ありません。しかし、様々な生理機能の維持や、エネルギー生産の過程でとても重要になる栄養素です。とくにビタミンDは以下の要素で大きな役割を果たします。

・骨形成、再石灰化の促進
・神経伝達
・筋肉収縮
・血液凝固

 丈夫な骨を作るため欠かせない栄養素で、成長期の子どもは特に気をつけておきたい栄養素と言えるでしょう。毎日バランス良くビタミンDを摂取するのは難しいですが、実は『太陽の光を浴びる』ことで、わたしたち人間はビタミンDを自力で合成することができます。これ、もはや『光合成』と言えるのではないでしょうか?

 今回は、ビタミンDが光合成によって作られる過程、ビタミンDの役割について書いていきます。

東京薬科大学
 光合成の解説は こちら

ビタミンDとは? どのような食品にふくまれている?

 ビタミンDは普通の食事でも接種可能です。主に、以下の食材に多く含まれています。

μg = マイクログラム = 100万分の1ミリグラム
・アンコウの肝(30g)
  33μg
・サケ(80g)

  26μg
・サンマ(100g)

  14.9μg
・イワシ丸干し(50g)

  25μg
・うなぎの蒲焼き(100g)

  19μg
・卵(生)

  0.9μg

 主に魚介類に多い栄養素ですね。野菜や穀類にはほとんど含まれていません。アンコウの肝には、とくに豊富に含まれています。

 ビタミンDを一日でどのくらい摂取すれば良いのか? これは厚生労働省が提供する『日本人の食事摂取基準』に記されています。

成人男女、ビタミンDの食事摂取基準目安量(一日分)
 男性:8.5μg(上限量:100μg)
 女性:8.5μg(上限量:100μg)

 目安量とは『栄養状態を維持するのに充分な量』のことです。上限値が決められているので、ムリにビタミンDを意識する必要はありません。普段の献立に魚料理を加え、ほどよく食べるようにしましょう。

厚生労働省、日本人の食事摂取基準2020
 脂溶性ビタミンに関する項目は こちら

ビタミンDの働き

 ビタミンDが最も力を発揮するのは『骨形成再石灰化』です。肝臓や腎臓で活性化されたビタミンDは、骨の材料である『カルシウムリン』の吸着(石灰化)を高め、骨の健康に大きく役立ってくれます。

 また、活性化ビタミンDは甲状腺ホルモン副甲状腺ホルモンと協力することで、血中のカルシウム濃度を一定に保つ働きもしています。

 ビタミンDが不足すると、これらの機能に不具合が起こり、骨をうまく形成できないことで起こる骨粗しょう症のリスクが増加。カルシウム濃度を保てないことで、消化器の不調をはじめ数多くの症状に悩まされる可能性も増えます。

ビタミンDの欠乏・過剰

 身体にビタミンDが欠乏している場合、以下のような症状が表れます。心当たりがある場合、すぐ病院へ通うことを強くおすすめします。

・低カルシウム血症
・くる病
・骨軟化症
・骨粗しょう症

 ビタミンDを過剰摂取している場合、以下のような症状が表れます。欠乏症と同じように、心当たりがあるならすぐ病院に行くべきでしょう。

・高カルシウム血症
・腎障害
・軟組織の石灰化

人間の”光合成” ビタミンDを合成する方法

 食生活に気をつけなきゃいけない。それはわかっていても、なかなか魚料理をバランスよく食べることができない事情もあると思います。ビタミンDは魚以外にはほとんど含まれていないので、一日のビタミンD摂取量をクリアするには、毎日魚料理を食べる必要があります。

 それは難しいですよね。そんな時は太陽を浴びて、体内でビタミンDを作っちゃいましょう!

 ビタミンDは、太陽を浴びることでも自力で合成可能です。食事だけで賄えない場合は、太陽の光を浴びることでビタミンDを作りましょう。

現代日本人はビタミンD不足

 1980年代、地球環境で『オゾンホール』が問題に取り上げられるようになりました。地球を覆う『オゾン層』に穴が空いたことで、降り注ぐ紫外線の量が増加。様々な問題が発生しました。

 日本でも大きく取り上げられ、オゾン層を破壊するフロンの規制など様々な対策が講じられます。消費者の間でも紫外線の影響を不安視する方が増え、紫外線をカットする様々な商品が開発、販売されることになりました。現代でも、紫外線対策は美容関係で重要視されていますね。

 紫外線はシミ日焼けの元になりますし、さらに皮膚がん白内障など目の病気にも関わります。避けた方が良い気がしてきますが、日差しを浴びなさすぎるのも禁物です。ビタミンDの合成が進まず、逆にビタミンDの欠乏を招いてしまうおそれがあるからです。

環境省
 紫外線の健康影響については こちら
国立環境研究所
 日本人のビタミンD欠乏に関するデータは こちら

ビタミンDの合成

 人間の皮膚には『プロビタミンD3』と呼ばれる、ビタミンDの素(コレステロール)があります。紫外線に当たることで『ビタミンD3』になり、体温で温められた結果『ビタミンD3 = ビタミンD』になります。

 食事によるビタミンD摂取と異なり、日照によるビタミンDは『必要量だけ生成』されます。つまり、食品と違って過剰にビタミンDが生成される恐れがないのです。欠乏症や過剰症の心配がないため、外で何時間も日差しを浴びるスポーツ選手などでも過度に生産されることはありません。

 もし「ビタミンD不足かな?」と感じた時は、積極的に日差しを浴びるようにしましょう。

どのくらい日差しを浴びれば良い?

 ビタミンDの合成を促してくれる日差しは『紫外線』。その中でも、とくに日焼けを生じさせる『UV-B』と呼ばれる波長です。浴びすぎは身体によくありませんので、ビタミンDを合成しつつ、身体に悪影響のないバランスの良い日光浴時間が知りたいですね。

 国立研究開発法人、『国立環境研究所地球環境研究センター』では、時間ごとのビタミンD生成量を予測する『ビタミンD生成・紅班紫外線量情報』を公表しています。当サイトによれば、必要な日光浴時間は『スキンタイプ』により異なるので、下記サイトを参照し、アナタにとって必要な時間を把握しておきましょう。

 日本人に多いのは『スキンタイプ』とされています。

国立環境研究所、地球環境研究センター
 ビタミンD生成・紅班紫外線量情報は こちら
 スキンタイプ、他用語集については こちら

 上記サイトでは『10分間で合成できるビタミンD量』を算出しています。厚生労働省が発表する目安量は『8.5μg』なので、アナタが住む地域に近い局を選択し、グラフをクリックして比較してみましょう。地域別の詳細データを閲覧できます。

 よく晴れた日であれば、だいたい『30分』も日光浴をすれば充分そうですね。30分といえば有酸素運動をするにも最適な時間です。ぜひ、晴れた日は動きやすい格好で外に出てみてはいかがでしょうか? 紫外線を過度に浴びると、白内障や皮膚がんなどのリスクが上昇します。自分の肌と相談して、ぜひ健康的な日光浴を楽しんでください。

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