メタ認知ってなに? 概要と具体的なテクニックをわかりやすく解説

自分自身を俯瞰的に評価するテクニック アナタにとってなにが”ふつう”ですか?

 とつぜんですが、アナタは何が好きで、どういう性格をしていて、今どんな気持ちでいるでしょうか? ――禅問答のように見えますが、これこそ『メタ認知(Metacognition)』の考え方です。

 メタ認知とは『自分を客観視してうまくコントロールすること』です。自分をまるで他人のように観察すると、自分の心や行動をうまく制御することができます。

 メタ認知を活用すればアナタ自身の学習能力を高めたり、ストレス緩和問題解決能力の向上など多くの恩恵を受けられます。近年話題に挙げられるようになったメタ認知の効果、具体的なテクニックなどをわかりやすく解説します。

メタ認知とは?

 メタ認知とは『自分を客観視してうまくコントロールすること』です。

 自分がどういう考え方をもっているか、野球や犬などにどういう印象を抱いているか、なにを『ふつう』と感じているか――そういった『自分』を他人のように見つめ、冷静に分析することを指します。

 メタ認知を行う上で必要な要素は以下のふたつです。メタ認知の概念を考えたアメリカの発達心理学者『ジョン・H・フラベル(John・H・Flavell)』氏が提唱しました。

・メタ認知的知識
・メタ認知的活動

 アナタは『自分の記憶は完璧ではない』ということを知っていますし『物事を覚えるにはメモをしたほうが良い』ということも知っていますよね? こういった『人間の認知的特徴に関する知識』がメタ認知的知識です。これに対し『人間は哺乳類である』や『徳川家康が江戸幕府を築いた』というのは単なる知識です。

 メタ認知的活動は『自分を評価し、コントロールすること』です。ある難しい問題に悩んでいるとき、ふと「ピンと来ないなぁ……ちょっと視点を変えてみよう」と考えたことはありませんか?

 これは『自分が難題に行き詰まっている』ことを自覚し『別の視点を得よう』と認知をコントロールしている状態です。難しいゲームでもやり方を変えてみたらあっさりクリアできた、なんて経験があったりするのではないでしょうか。

 メタ認知はこの知識活動をうまく操りより良い状態に導いていくテクニックなのです。

メタ認知的知識

 メタ認知のカギは知識・活動にあると書きましたが、では具体的に何を気をつければ良いのでしょうか?

 フラベルはメタ認知的知識を3つのキーワードに分けています。

人間の認知に関する知識
  人間は一度にたくさんの情報を記憶できない
  自分は心が弱っていると理性的な判断が難しい
  あるクラスメイトはユニークな発想をする
② “課題についての知識
  スポーツの上達には練習したほうが良い
  科学論文を読んで理解するのには時間がかかる
  テストは先生が求める答えを回答する必要がある
課題解決の方法に関する知識
  ミスを防ぐには何度も見直すと良い
  データを整理すればより深く理解できる
  授業をより理解するにはノートをとれば良い

 『』は人間がもつ能力とアナタ個人がもつ能力、さらにクラスメイトや同僚などの個別能力も把握しましょう。ふつうの人が3回勉強して覚えられる物事を、アナタの場合1度で覚えられることだってあります。

 ある同僚は何度教わっても覚えられないけどうっかりミスはゼッタイにしない、なんて方もいるかもしれませんね。アナタがどのような科目が得意でどこが苦手なのかを客観視してみましょう。

 『』はある課題の性質を見極める認知です。国語のテストでよく『作者の気持ちを考えなさい』なんて問題がありますよね。これは実際に作者にインタビューして答えを求めろというワケではなく、先生がどのような回答をするのを期待してるかをテスト中に出された文章内から察するための問題だったりします。

 課題に秘められた性質、難易度を見極める必要があるため、これは経験がとても重要になります。野球経験者と未経験者に「狙ったところにボールを打て」と課題を与えたときどちらが成功しやすいかは言うまでもないですよね。

 『』は課題を解決する手法に関する知識です。いわば『』をクリアするための知識をどれくらい持っているか、ということです。課題解決は脳をフル活用する必要があるため『』の知識も重要になってきますね。

 最も大切なのは『その課題を解決するため、なぜその手法が有効なのか』を知ることです。狙ったところにボールを打ちたいのにキャッチボールの練習をする人はいませんし、授業中先生が板書内容をただノートに書き写すだけでは学びの効果は薄いです。

 ノートに書く行為が脳にどのような効果をもたらすか、なぜ有効なのかを知ってこそより深い学習につながるのですね。

自分自身の知識を知る

 アナタ自身を客観的に評価してみましょう。たとえば記憶することが得意でしょうか? うっかりミスは多いか少ないか、他者とのコミュニケーションが得意で人付き合いがうまいのか……自分をすこし遠くから眺めて“アナタ自身がどういう人間なのか”を観察してみましょう。

 もし自分自身のことがよくわからない時は紙に書く習慣”を身につけると良いでしょう。毎日の日記は学習内容を思い出す訓練にもなり、後で見返すことで自分がどのような気持ちでいたか、自分自身がどのような考えでいたかを客観的に判断することができます。

 日記を書いたことがないという方も、まずは少ない行数からはじめてちょっとずつ伸ばしていくと、自分の気持ちや出来事をうまく描写することができるようになります。

Bitly

メタ認知的活動

 メタ認知的活動とは『今の自分を認知し、コントロールするスキル』を指します。実はわたしたち自身、常にメタ認知的活動を行っているのです。

<strong>Aさん</strong>
Aさん

次のテストは世界史かぁ……ちょっと不安だから年表もういっかい確認しよっと

<strong>Bさん</strong>
Bさん

あのお客さん最後まで渋ってたし、このままだと契約は難しそうだな。追加でわかりやすい資料を作成しておこう

<strong>Cさん</strong>
Cさん

キレのいい変化球だ。でもホームランを狙わず単打狙いならイケる

 どの例も置かれた状況を認識し、自分のその後の行動をコントロールしていることがわかりますね。たとえばAさんの場合『歴史年表を暗記できたか不安』という自己分析をしました。だからこそ『テスト前に年表を確認する』という活動に繋げられたのです。

メタ認知の効果

 メタ認知で自分をコントロールできるようになるとより深い認知的活動が可能になります。またメタ認知は心理的不安の軽減犯罪や非行少年への心理学的アプローチ、職場における課題解決など幅広い場面で活躍していますね。

 これらの効果は多くの科学的根拠が集められており、日本においては文部科学省が定める『学習指導要領』にも組み込まれ、子どもたちの学ぶ姿勢向上に役立っています。

グラスゴー大学
 学校におけるメタ認知の有効性に関する論文は こちら
文部科学省
 教育課程の実地と学習評価については こちら

具体的にどうやるの?

 メタ認知を100%活かすためどのような行動をとれば良いのか? ここでは具体的な手法を解説していきます。

メタ認知は”善き脳”からはじまる

 自分の思考を客観的に監督し、評価し、コントロールする――こういった手続きは脳にかなりのエネルギーが必要です。そのためには睡眠時間をしっかり確保し、脳が力を発揮できる条件を整えることが重要です。

 どんなにメタ認知力が優れている人でも、その能力を働かせる脳が疲れていたら充分なパワーを発揮しません。まずはしっかり休息してしっかりメタ認知を働かせる土台をつくりましょう

自己分析でメタ認知的知識を蓄える

 メタ認知テクニックを活用するには、アナタ自身のメタ認知的知識が必要です。まずは自分自身の脳のクセを知ることからはじめましょう。

 自分はどんな人間なのだろう? こころの中で考えることはできますが、それをしっかり認識するには紙に書き出すことがとても大切です。ここではいくつかの手法を紹介しましょう。

日記を書く
ジョハリの窓を書く
マインドマップを書く

 ひとことで日記を書くといってもそのスタイルは様々です。メタ認知として活用したい場合、ただ事実を書くだけでなくその時覚えた感情、なぜそう感じたのかという理由、他にやり方は無かったのかなど多角的に考え書くとより効果的になります。

 書いたら終わりではなく、たまに見返す時間もつくりましょう。その時自分が何を考えていたのか、どういう行動をとったのかを客観的に見つめることができ、さらにメタ認知としての効果が期待できます。

Bitly

 ジョハリの窓は、開発者であるアメリカの心理学者『ジョセフ・ルフト』、『ハリントン・インガム』両氏の名からとられたテクニックです。

 紙とペンを用意して4つの窓作りましょう。それぞれにこれらの要素を記述していきます。

自分も他人も知っている要素
自分は知っているけど他人は知らない要素
自分は知らないけど他人は知っている要素
自分も他人も知らない要素

 具体的な内容を書く必要はなく、たとえば『〇〇が得意』や『フレンドリー』、『独立心がある』、『融通がきく』などの大まかな性格特徴を書けばオッケーです。

 自分も他人も知らない自分なんてどう書けばいいのか? ――実はこれこそがジョハリの窓の真髄です。他者から自分が知らない自分を教えてもらいつつ、コミュニケーションを通して新たな自分を探る貴重な機会を得られます

 他者とコミュニケーションをとると自分とが“当たり前”だと思うものと“それとは異なる考え方がある”ことに気づきます。そういった別の視点からアナタ自身のことを尋ねると、アナタが想像していなかったアナタ自身の可能性に気づかせてくれるかもしれません。ぜひ、以下のジョハリの窓を参考に書き出してみてください。

 マインドマップは『キーワードを芋づる式に連想していくテクニック』です。自分の思考を整理したい場合に役立ちます。

 連想ゲームを見える化する、たとえば『食べ物 → りんご → 赤い → 広島東洋カープ』といった流れですね。あまり意味がないように感じられますが、これだけで「食べ物からたった3つ辿っただけでプロ野球チームが連想される。自分はほんとうに野球が好きなんだな」といった自己分析もできたりします。

 自由な発想で連想させ、それらの完成図を後から俯瞰してみる。繰り返していけば、アナタの思考の傾向が見えてくるかもしれませんね。

Bitly

 ほか、このブログでは心理学、脳科学の知識を生かしたテクニックがたくさん紹介されています。アナタ自身のメタ認知力アップにお役立てれば幸いです。

内部リンク
 心理学カテゴリの記事は こちら
 脳科学カテゴリの記事は こちら

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