LGBTってなに? 性的マイノリティの人権問題などをわかりやすく解説
LGBTは『自身の性的指向と性自認の傾向』です。多くの人は「男性は女性が好きになり、女性は男性が好きになる」と考えるでしょう。しかし世界ではその例に当てはまらない方が多く存在し、差別や偏見から彼らを開放しようという人権問題にまで発展しています。
たとえ男性であっても男性を好きになる場合があり、その逆もある。生物学的に男性だとしても自身を女性と認識する人もいる。男女別け隔てなく愛せる人がいる。世界にはそんな人々がたくさんいるのです。
アナタにちょっと質問があります。男性が男性を好きになる。コレはおかしいことでしょうか? それともふつうのことでしょうか? ――それぞれの意見があると思いますが、LGBTの方は多くの先入観や偏見に苦しんでいることが多いようです。ある国では同性愛自体が犯罪になる場合もあります。
国はこういった問題に対し政策に取り組み、法務省では『Myじんけん宣言』と称した活動も行っています。LGBTとはいったいどのようなものなのでしょう?
LGBTってなに?
YouTubeチャンネル、Hiroki Suzuki – illustrator:投稿動画より
LGBTは以下の言葉の頭文字をまとめた言葉です。わかりやすく一覧にまとめてみましょう。
L:Lesbian
女性の同性愛者
遺伝・生物学的性別
→ 女性
性自認 → 女性
性的指向 → 女性
G:Gay
男性の同性愛者
→ 本来同性愛者全体を指す言葉だが、レズビアンと区別するため使われる事が多い
遺伝・生物学的性別
→ 男性
性自認 → 男性
性的指向 → 男性
B:Bisexual
両性愛者
遺伝・生物学的性別
→ それぞれの性別による
性自認 → それぞれの性自認による
性的指向 → 両性
T:Transgender
トランスジェンダー
遺伝・生物学的性別
→ それぞれの性別による
性自認 → 人により異なる(男性でも女性でない場合もある)
性的指向 → 人により異なる
※ トランスセクシュアル(Transsexual)とも呼ばれる
同性愛や自身の性別に違和感をもつ人は19世紀までは精神的疾患者として扱われていました。そのためヨーロッパでは紀元前から同性愛に関する文化があったにも関わらず、多くの性的マイノリティーに属する方々はひどい偏見や差別に悩まされていた過去があります。
現在も精神医学で扱われていますが、精神疾患の分類として有名なDSMの最新版では『性的違和(Gender Dysphoria)』という名前になり、病気や障害というよりひとつの個性・特徴であるといったニュアンスが強くなっています。
もし「性別違和をなくしたい」とするなら、精神科医やカウンセラーのもとで自身の性自認を合わせていく選択ができますし、そのままでいる選択もできます。性別違和は必ずしも悪い疾患だというわけではないと言えそうですね。
その他の性的傾向
性自認は『自分の性別を“男女のどちら“と認識しているか?』によって変わります。自分を男性として認識するなら性自認は男性。女性として認識するなら性自認は女性になります。ただしLGBTの“T“のように『自分が“男性“なのか“女性“なのかわからない』という悩みをもつ方もいます。
Tのほか、それらをさらに含めた派生として『LGBTQ+』、国際連合では『LGBTI』として紹介されています。他にもかなりの数があるのでそれらの一部を紹介してみましょう。
Q:Queer
クィア = 奇妙な・独自のという意味
LGBTいずれにも該当しない性的マイノリティーを指す
Q:Questioning
クエスチョニング = (自分自身に)問いかけるという意味
自身の性別に疑問をもっている状態
I:Intersex
インターセックス = 間性
生物学的に男女の区別ができない
男女どちらとしても自認する、もしくはしない
※ 日本語訳としての『intersex = 間性』は生物学的な用語の意味合いが強い
U:Unknown
アンノウン = 不明という意味
自身の性自認や性的傾向がわからない
A:Asexuality
アセクシャル = 無性愛者
性的欲求自体が無い
2S:Two-spirit
ツースピリット = ジェンダー的な第3の人格
典型的”男女“のイメージとは異なるアイデンティティをもつ
P:Polyamory
ポリアモリー = 複数(Poly)の愛(amory)
男女関係なく複数の人と関係をもつ
ここで紹介したものはあくまで一部でしかありません。ヨーロッパではさらに細分化された区分けもあり、日本とくらべてLGBT問題に深く取り組んでいることがわかりますね。
性的マイノリティーの人権問題
YouTubeチャンネル、TIME:投稿動画より ラベンダーの恐怖
ヨーロッパでは紀元前からLGBTに関連する文化があり、古代ギリシャでは同性愛は普遍的なもので、ゲイのみで構成された『神聖隊(Sacred Band of Thebes)』がとくに有名ですね。しかし次第に同性愛を悪とする流れが広まり、中世時代においては同性愛は最悪死刑になる国も存在するようになりました。
ヨーロッパにおいて同性愛に関連する法整備が進むのは19世紀以降ですが、それでも根強い偏見や差別は残り、アメリカのフロリダ州では『ラベンダーの恐怖(The Lavender Scare)』など大事件に発展する出来事もありました。
LGBTはヨーロッパにとって歴史的な問題でもあるのですね。20世紀以降、LGBT関連の権利を守る活動が盛んになり、今日では病的ニュアンスが強かった性同一性障害の診断名はなくなり“状態“的なニュアンスが大きい『性別違和(Gender dysphoria)』が採用されています。
レインボーフラッグ
YouTubeチャンネル、YouTube Japan 公式チャンネル:投稿動画より
ヨーロッパでは次々と自身がゲイやレズビアン、トランスジェンダーであることをカミングアウトする方が増え、スポーツや政治など多くの世界でLGBTが浸透していっています。LGBT人権問題、コミュニティーの象徴は早い時期から登場していました。
それがプライドフラッグであり、その代表的な旗が『レインボーフラッグ』です。
ピンク → 性別 (Sex)
赤 → 生命 (Life)
オレンジ → 癒やし (Healing)
黄色 → 太陽 (The Sun)
緑 → 自然 (Nature)
ターコイズ → 芸術と魔法 (art/magic)
青 → 静けさ (Serenity)
紫 → 精神 (The Spirit)
レインボーフラッグをはじめとしたLGBTプライドフラッグはLGBT関連の社会運動において世界的な象徴として役割を果たしています。
GLBT歴史協会(GLBT Historycal Society)
レインボーフラッグに関しては こちら
日本のLGBT関連法
この記事を書いている2023年4月23日現在、日本では『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律』が施行されていますがLGBTに関係する法整備が進んでいないのが現状です。
日本を除くG7(日本・カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・イギリス・アメリカ)の国々が法整備を進めていることに比べると、どうしても遅れてる感が否めませんね。東京都で東アジア初のパートナーシップ制度が始まりましたが、国として本格的な法整備が進んでいない状況です。
日本ではLGBT関連法整備を願う団体が多くありますが、国は『何が性的マイノリティーの方にとって“差別“になるのか?』などの問題を解決するため、まずは『差別禁止』ではなく『理解増進』にするべきではないか? という意見が多くあるようです。
アナタはどう考えるでしょうか?
日本ではまだまだ法整備が進まないLGBT人権問題ですが、ヨーロッパ連合では『LGBTIQ平等戦略』として2025年までをめどに法整備や各種対策などが計画されています。今後、日本はどのような形でこの問題に取り組んでいくのでしょう?
デジタル庁、e-GOV法令検索
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律全文は こちら
参議院
日本におけるLGBTの現状と課題は こちら
Equality Act Jaoan
公式ページは こちら
European Commission
LGBTIQに関するヨーロッパ連合の取り組みに関しては こちら(英語)
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