アッという間に”お迎え”が来ちゃう “最強”の毒もち動物ランキングTOP10
世の中にはたくさんの『毒』をもつ生物、植物、微生物がいますね。ヘビなどは多くが毒をもつと言われ、ご家庭の裏庭に足を運べばすぐ出会えるほど身近な存在でもあります。海辺にひっそり存在する貝なども毒をもつ場合があり、気づかぬうちに踏みつけてしまったらタイヘンです。足元には充分お気をつけください。
今回は『最強の毒持ち動物』をランキング形式で紹介します。みなさんの知っている動物はいるでしょうか? はやく知りたい方はもくじから一番下までジャンプしてみてください。
毒に関する予備知識 そもそも”毒”ってなんだ?
毒とは『少量の摂取で身体に都合の悪い働きをする物質』です。本来の意味で完全な毒や薬は存在しません。たとえば生命の維持に必要な『水』にも致死量が存在します。薬とは『身体に都合の良い働きをする物質』ともとれ、言い換えれば毒と薬は表裏一体ということになります。
このような関係ですから、ある量の摂取までは『薬』として作用しても、一定量を超えればどの物質も『毒』へと変貌します。以下に『水、塩、砂糖の”致死量”』を挙げておきますが、これはあくまでも目安で、これ以下の量を摂取しても個人差により命の危険があります。
・水(成人男性の場合)
10 ~ 20リットル
・塩(体重65キロ換算)
32.5 ~ 325グラム
・砂糖(体重65キロ換算)
約1キロ
ちなみに法律における『毒の定義』は存在しませんが、法的に『毒物』とする物質などは一覧に記されています。今回は毒について書いていきましょう。ちなみに、過去に『薬が効くしくみ』についても記事を書き上げましたのでそちらも並べて参照していただければ幸いです。
毒の強さを示す”半数致死量”
ある物質の『どこまでが“薬“でどこまでが“毒“か?』という問題についてはいくつかの指針が存在します。そのなかでも知られている指標として『半数致死量』が挙げられるでしょう。
半数致死量とは『その毒を摂取した動物の半数が命を落とす量』で、『LD50値』という単位が利用されています。表記方法は以下の通りです。
・イルジンSのLD50値 = 30mg/kg(ラット/静脈)
イルジンSはツキヨタケに含まれる毒ですね。この毒を『ラットに、1キロあたり30ミリグラムの量を、静脈注射で投与』すると、投与したマウスの半数が命を落とすことになります。個々のマウスの性質にもよりますので必ず半数というわけではありませんが、ひとつの指標としては充分わかりやすいですね。ちなみに実験する動物はラットやマウスなど複数存在し、投与方法も以下の4通りあります。
・皮下投与
皮膚だけを突き抜くように注射針を刺し毒を投与
・経口投与
専用の器具を胃袋まで差し込み投与
・静脈投与
静脈(マウスの場合主に尻尾)に注射針を刺し投与
・腹腔内投与
腹部の奥まで注射針を刺して投与
人間の場合、これを自分の体重に示し合わせればだいたいの致死量がわかります。体重60キロでしたら上記『イルジンS』の例だと『30 × 60 = 1800mg』ということになりますね。たった1.6gで半数の人命に関わると考えると恐ろしいですが、あくまでも目安量ということにご留意ください。
最強の毒ランキング
では、以下から猛毒生物ベスト10をご紹介していきましょう。みなさんが想像した動物はランクインしているでしょうか?
第10位:インランドタイパン
YouTubeチャンネル、これは面白い:投稿動画より
基本データ
・分布
オーストラリア
・サイズ
約1.4m
・毒の種類
主に神経毒
・半数致死量
0.025mg / 1kg
毒蛇最強の『インランドタイパン』が第10位にランクインしました。毒を体内に最大110ミリグラム保持できるので、ひと噛みするだけで多くの生物を殺傷できる強さです。
人間がこのヘビに噛まれると45分程度で命を落とすとされています。ただし穏やかな性格をしており、人間の気配を察知したら通常隠れてくれる生き物なので、ヘンに挑発したりしなければ襲われることはないと言います。そこだけが安心できる点でしょう。
第9位:ヒョウモンダコ
YouTubeチャンネル、一号元気探検隊:投稿動画より
基本データ
・分布
西太平洋熱帯域、亜熱帯地域
・サイズ
約12cm
・毒の種類
神経毒
・半数致死量
0.02mg / 1kg
『ヒョウモンダコ』の見た目は小さくかわいらしいのですが、噛まれるとフグに含まれる毒と同じ『テトロドトキシン』により痙攣、嘔吐を引き起こし命を落とす危険性があります。
ヒョウモンダコは相手に対し警戒心を示すと『青』い光を放ちます。もし、海辺に青く光るタコがいたら「うわぁ、きれぇ~」なんて言わずにすぐその場を離れるようにしてください。刺されてからでは遅いのですから……。
第8位:アンボイナガイ
YouTubeチャンネル、すさみ町立エビとカニの水族館YouTubeチャンネル【公式】:投稿動画より
基本データ
・分布
インド洋 ~ 太平洋
・サイズ
約12cm
・毒の種類
主に神経毒
・半数致死量
0.012mg / 1kg
岩礁に美しい貝がいたら、それは『アンボイナガイ』かもしれません。別名『ハブガイ』として知られ、大きな口内部から飛び出した歯で獲物を刺します。人間は刺されて数時間で命を落とすとされるようです。
海辺に転がっている貝をみかけたらとりあえず毒持ち動物だと判断すれば無難でしょう。貝コレクターを目指すならきちんと知識を蓄えるようにしてくださいね。
第7位:カリフォルニアイモリ
YouTubeチャンネル、Coyote Charlie:投稿動画より
基本データ
・分布
アメリカ
・サイズ
約12 ~ 20cm
・毒の種類
神経毒
・半数致死量
0.01mg / 1kg
背中が栗色をした『カリフォルニアイモリ』は、ペットとして飼育されるくらい人気の高いイモリです。しかし危険を察知すると皮膚から臭い匂いを出し、その正体はあの『テトロドトキシン』です。
カリフォルニアイモリの毒は全身の筋肉、血液、卵巣、果ては卵にも含まれており、卵が産み付けられた池では毒が水中に溶け出し魚が死滅する被害も出ているとか。メイワク極まりないイモリですね。
第6位:ハブクラゲ
YouTubeチャンネル、平坂寛:投稿動画より
基本データ
・分布
インド洋 ~ 琉球列島
・サイズ
約1.5m
・毒の種類
混合毒
・半数致死量
0.08mg / 1kg
沖縄におけるクラゲ被害の半分はこの『ハブクラゲ』によるものです。毒性は強いですが慌てず対応すれば少しの被害で済むようです。ただし、毒が含まれる長い触手に絡まれると一気に危険性が増します。
呼吸困難、水疱、最悪壊死や命に関わる症状があらわれますが、回復することが多いようです。透明で美しい姿をしているからこそ遠くから眺めることをおすすめします。もし刺されたら上記動画であるように『酢』をたっぷりかけてあげると良いようですが、あくまで対処法なので刺された際はすぐ病院に駆けつけるようにしましょう。
第5位:カバキコマチグモ
YouTubeチャンネル、はぐくみ幸房:投稿動画より
基本データ
・分布
日本(沖縄以外)
・サイズ
雄:約1.2cm
雌:約0.9cm
・毒の種類
神経毒
・半数致死量
0.005mg / 1kg
日本の蜘蛛のなかで特に毒が強いのが、この『カバキコマチグモ』です。黄色、もしくは赤みのある蜘蛛で、噛まれると灼熱感を伴う激しい痛みを味わうことになります。
毒性が強いものの、2021年12月現在まで死亡例は報告されていないようです。年中日本の各地に生息していますが、特に被害が多いのは繁殖期の6月ごろ。ススキやイネを巻いて巣をつくる習性がありますので、そのような葉っぱを見かけたら近づかないようにしましょう。
第4位:モウドクフキヤガエル
YouTubeチャンネル、DEF VIDEO:投稿動画より
基本データ
・分布
南アメリカ
・サイズ
約5 ~ 6cm
・毒の種類
神経毒
・半数致死量
0.005mg ~ 0.002mg / 1kg
ブローチのような美しさをもつ『ヤドクガエル』は、この種のほとんどが皮膚から強力な毒を分泌します。特に猛毒『バトラコトキシン』をもつこのカエルは、10人程度であれば1ミリグラムで葬ることができます。
名前の由来は『矢毒』。アマゾン熱帯雨林の先住民族が吹き矢に毒を塗り込んでいたことが由来です。上記のような強力な毒ですから、ゾウや大型猛獣でもひとたまりもありませんね。
第3位:ズグロモリモズ
YouTubeチャンネル、314 ビーンの動画:投稿動画より
基本データ
・分布
インドネシア、パプアニューギニア
・サイズ
約60 ~ 80cm
・毒の種類
神経毒
・半数致死量
0.002mg / 1kg
毒をもつ珍しい鳥として『ズグロモリモズ』が挙げられます。鳴き声から別名『ピトフーイ』とも呼ばれており、この鳥が毒をもつことが判明したのは意外と最近で1990年のことです。
この鳥がもつ『ホモバトラコトキシン』は上記ヤドクガエルのそれと成分が似ており、10ミリグラムの皮下注射だけで、マウスを20分足らずして命を落とす結果に追い込みました。
第2位:ゴウシュウアンドンクラゲ
YouTubeチャンネル、Free Documentary:投稿動画より
基本データ
・分布
オーストラリア ~ インド洋
・サイズ
約4.5m
・毒の種類
混合毒
・半数致死量
0.001mg / 1kg
通称『ボックス・ジェリーフィッシュ』とも呼ばれるこのクラゲは、さらに『キロネックス(殺人者の手)』という物騒な別名も所持しています。60本程度の触手には50億もの毒を出す針があり、これまで多くの犠牲が出ています。
この毒はクラゲの意思に関わらず、触手に触れたものすべてに刺さる仕組みになっています。刺されると2 ~ 3分で命を落とす場合もあり、被害が多いオーストラリアでは防クラゲネットを海に張り巡らせるなど対策がされています。
第1位:マウイイワスナギンチャク
YouTubeチャンネル、Everything Aquariums:投稿動画より
基本データ
・分布
マウイ島
・サイズ
約3.5cm
・毒の種類
神経毒
・半数致死量
0.00005mg ~ 0.00001mg / 1kg
第1位はまさかの『マウイイワスナギンチャク』というイソギンチャクの一種でした! 知られている限りでは『最強の毒持ち生物』であり、ハワイでは古くから矢尻毒として利用され、毒素兵器としてあらゆる国で研究された名実ともに最強の毒でもあります。
このイソギンチャクがもつ毒『パリトキシン』は、あのテトロドトキシンの60倍もの毒性を持つとされます。観賞用として、気づかずマウイイワスナギンチャクを購入し、毒素が気化して一家ごと病院に搬送されるという事故も発生しました。
日本においても『イワスナギンチャク』がパリトキシンを持つ動物として知られ、またスナギンチャクを食べた『アオブダイ』による食中毒も10例ほど確認されています。
これらの猛毒生物は『今泉忠明』氏著作『猛毒動物 最恐50 改訂版 コブラやタランチュラより強い、究極の毒を持つ生きものは?』で詳細が記されています。2020年最新の猛毒動物ベスト50の詳細なデータ、解説を画像と共に紹介している良書です。著者はあの『ざんねんないきもの事典』の監修者としても有名ですね。
ちなみに、という話ですが健康に気を使うみなさんがよくご存知の『栄養素』にもLD値があります。バラつきはありますが、資料によれば『ビタミンC』の半数致死量は12000ミリグラム。体重60キロ換算では『720グラム』ですね。市販のビタミンC粉末でも1箱60 ~ 80グラム程度なので、とりあえず10箱分飲みきったら危ないかな? というレベルです。
農林水産省
毒性の強さランキング(ベスト7)は こちら
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