【劇物指定】エタノールとメタノールの違いをわかりやすく解説

エタノールを飲むと酔っ払い メタノールを飲むと命を落とします

 エタノールもメタノールも『アルコール』の一種です。アルコールとは『炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置き換えた物質』ですが、これではちょっとわかりにくい説明ですね。要約すると以下のようになります。

① 炭素(C)と水素(H)でできた化合物
② 水素が1つヒドロキシ基(-OH)に置き換わっている

 アルコールは独特の香りが特徴的ですね。わたしたちが日頃呑んでいるお酒にはエタノールが含まれており、工業用アルコールの多くはメタノールが含まれています。日常的にアルコールといえばエタノールを指すとイメージしましょう。

 今回はエタノールとメタノールの違い、それぞれの特徴について書いていきたいと思います。

エタノールとは?

 お酒に含まれるアルコールがこれです。独自の香りがあり、少量の摂取は酔いの効果をもたらします。化学式は『C2H6O』です。

 わたしたちが飲用ほか様々な用途で使用するエタノールは糖を発酵させることで精製します。無酸素状態、かつ酵母に活躍してもらうことで精製できますが、日本では酒税法により無許可で酒を製造販売することは禁止されているのでぜったいにやらないでください。

 消毒用、工業用アルコールもエタノールが使われていますが、エタノールのほか飲用に適さない成分が多々含まれているので決して誤飲しないよう注意しましょう。とくにメタノールは劇物指定されるほどキケンなアルコールです。

 薬局などで販売されている『無水エタノール』はほぼ100%のエタノールです(残りはわずかな水分)。パソコンなど機器の消毒用として重宝しますが、はやく乾いてしまうので、手指の消毒の場合少量の水で70~80%に希釈して使用することをおすすめします。

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 酒税法は こちら

お酒を飲むとどうなる?

 エタノールは中枢神経をマヒさせβエンドルフィンという快楽物質を放出させます。不安感が取り除かれ、代わりに高揚感が得られる『酔い』の状態になっていきます。

 適度な飲酒は血行をよくさせたり精神をリラックスさせるなど一定の効果があります。ただし、呑みすぎれば神経に作用し意識の喪失や呼吸麻痺、最悪命に関わることもあるので呑みすぎには注意しましょう。ちなみにアルコールは『7kcal』のエネルギーがあるとされます。

エタノールの代謝
  ① エタノール
     → アルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒド
  ② アセトアルデヒド
     → アルデヒド脱水素酵素により酢酸
  ③ 酢酸
     → 全身へめぐり二酸化炭素
  ④ 二酸化炭素
     → 呼吸尿により体外へ排出

 エタノールの代謝はゆっくり行われるので、過度な飲酒は二日酔いなどの症状をもたらします。とくに毒性が強いアセトアルデヒドに関して、日本人の多くは酵素が働かず酒に弱い人が多いとされています。過度な飲酒はくれぐれも控えてください。

メタノールとは?

 主に工業用、燃料、さまざまな科学実験に用いるアルコールとして活躍しています。化学式は『CH4O』です。

 日本では毒物及び劇物取締法により劇物指定を受けており、薬剤師や毒物劇物取扱責任者などの資格を持たなければ取り扱いできません。

 エタノールの価値が高騰すると、酒の密造者や密輸者はメタノールを代替品として利用し多くの被害を生み出してきた歴史があります。また新型コロナウイルス感染症への間違った対策としてメタノールを飲むという危険行為も発生しているようです。メタノールに消毒効果はなく、逆に人体をキケンに晒します。飲酒もコロナウイルス撃退効果はありませんので気をつけましょう。

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 毒物及び劇物取締法は こちら
世界保健機関(WHO)
 当該記事は こちら(注:英語)

メタノールを飲むとどうなる?

 メタノールを摂取すると、体内でホルムアルデヒドギ酸に代謝されます。ホルムアルデヒドはテレビで話題となった『シックハウス症候群』でおなじみですね。ギ酸はさらに毒性が強く少量の摂取で失明してしまう原因にもなっています。

メタノールの代謝
  ① メタノール
     → アルコール脱水素酵素によりホルムアルデヒド
  ② ホルムアルデヒド
     → ホルムアルデヒド脱水素酵素によりギ酸
  ③ ギ酸
     → 全身をめぐり二酸化炭素
  ④ 二酸化炭素
     → 呼吸尿により体外へ排出

 エタノールのアセトアルデヒドも有害ですがホルムアルデヒドとギ酸はそれに輪をかけて有害です。ギ酸は体内を酸化させ(アシドーシス)多くの弊害をもたらします。致死量は個人差が大きいですが、メタノールの誤飲により表れる症状は以下の通りです。

吸入
  咳、めまい、頭痛、吐き気、視力障害
皮膚に付着
  乾燥、発赤
誤飲
  腹痛、息切れ、嘔吐、痙攣、意識消失、視力障害

 ちなみに、メタノールを誤飲した場合応急処置として『エタノールを少量ずつ飲む』という方法もあります。身体がメタノールよりエタノールを優先して代謝することからきてますが、結局すべて代謝されてしまうので効果は薄いです。メタノールを誤飲した場合一刻も早く医療機関へ駆けつけましょう

 メタノールを摂取すると失明は免れず命に関わります。誤飲にはくれぐれも注意してください。

日本中毒学会
 メタノールの毒性に関しては こちら
厚生労働省、職場のあんぜんサイト
 メタノールの取り扱いについては こちら

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