医療ミスが原因の病気? 医原病について関連用語もまとめて解説
医原病とは『医療行為そのものが原因となってもたらされる症候群』を指します。原因となる医療行為は検査手段、薬剤投与、外科治療などの治療行為まで様々で、これらはしばしば『医療ミス』として取り上げられます。
医原病のほか『医源病』、『医原性疾患』、『治原性疾患』、『治原性障害』など表現は様々ですが、それらを網羅的に表した言葉が『医原病』になります。今回はこの医原病について、起こりうる状況や関連用語を交えて解説していきたいと思います。
医原病とはなにか? 関連用語なども網羅的に解説します
大昔から外科手術等の治療法は存在しましたが、当時はまだ無菌室など衛生管理が徹底された環境はなく、しばしば細菌に汚染された手で治療にあたり、患者に多くの害を与える可能性がありました。
細菌が発見されたのは19世紀中ごろ、ドイツの細菌学者『ロベルト・コッホ』やフランスの細菌学者『ルイ・パスツール』が『細菌』を発見するまで、人類は感染症を『悪い空気』によるものと捉えてきました。つまり、それまでは汚れたままの手でも平気で手術行為をし、お産したての赤子や母体に触れ、消毒法すらも確立していませんでした。
言ってしまえば、100年ほど前まで人類は医原病の宝庫のなかで治療されていたことになります。
現在では徹底した無菌管理が行われ、手術後の感染症は極限にまで抑えられています。しかし、現在の時代をおいてもなお医原病は様々な場所で猛威を奮っています。今回参考にした著書『渡辺徹也』氏著作『心療内科とは何か』においては、精神科や心療内科の世界で起こりうる医原病を取り扱っていました。
彼は医学博士であり精神神経科、麻酔科、神経内科など様々な科目を学び、多角的な視点から患者にアプローチする診療から評価を得ています。著書においても先入観を持たない診断の大切さを記しており、読者にとっても医療難民になりかねない状況を適切に回避する方法が見つかる1冊といえるでしょう。
現代医療における医原病
医者が処方する薬は強力なため、得てして副作用をもたらすことがあります。医者はそれらを総合的に判断して処方するのですが、場合によっては副作用が強く出て患者に悪影響をもたらすこともあり『薬害』に至る場合もあります。また薬を大量に処方し減薬、断薬が難しくなる『多剤大量処方』という言葉もあります。
輸血による医原病も注意が必要です。昔は同じ注射器で複数の方に薬を打つこともあり、それが原因で様々な疾患にかかる人もいます。また『院内感染』も医療施設内で観戦が広がったということで医原病とみなせるようです。
医原病のもともとの意味
医原病はもともと『医原性疾患(iatrogenic disease)』という言葉で、イギリスの医者である『アーサー・フレデリック・ハースト』が命名したものです。
意味は『医者の言動や態度が起因してかかる疾患』です。これは決して医者の乱暴な言い方のみを指すわけではなく、たとえば誤った診断名を下したり、治療法の説明から勘違いをさせる等による医原病が、患者側に大きな問題を引き起こすことがあるのです。もちろん、医者の乱暴な言い方であったり、患者に対し心遣いのない言葉を口にした場合による影響も計り知れません。
医者も人間なので言葉のアヤというものはあるのでしょうが、あまりにぶっきらぼうな態度でいるとそれは患者にも伝わり、とくに参考にした著書では心に大きな傷を負っている患者を対象としているので、さらに注意が必要といえるでしょう。場合によっては患者(クライエント)の状態を悪化させてしまう場合があります。
YouTubeチャンネル:ほっしーのメンタルハックちゃんねる、投稿動画より
お医者さん側の事情があるとはいえ、中には本当に衝撃的なことを告げられる場合もあるようですね。
さらに、著書では病気でもないのに「〇〇の疾患ですね」と病気を告げられ立派な病人へと仕上がってしまうことがある、という衝撃的な記述もありました。医原病として有名な病名に『ガス灯症候群』があります。
ガス灯症候群
ひと言でまとめれば、ガス灯症候群は『本当は精神疾患でないのに、周囲の人間によって自分は精神疾患だと思いこんでしまうこと』を指します。
たとえば、メディアが取り上げた『認知症』に関する情報番組を見て不安に感じた家族が高齢者を「認知症ではないか?」と病院へ連れていき、病院では家族の『不安からくる数々の証言』を鵜呑みにした医者が「認知症でしょうね」と安易に診断を下して投薬することがあります。さらに、それを服用し続ける高齢者が、次第に本当に認知症のようになるパターンがあるのです。
病名は『ガス灯』という映画が元になっています。もともとは『パトリック・ハミルトン』が創作した戯曲で、それをもとに作られたサスペンス映画となります。モデルになったのは1944年、アメリカで放映されたもののようですね。
資産家の女性から巨額の財産を奪うため、夫が首謀者となり多くの人が共謀して彼女を精神病者に仕立て上げるという物語になります。些細な嫌がらせを行ったり、わざと誤った情報を提示し相手の記憶や認知などを撹乱させる心理的虐待のひとつである『ガスライティング』という言葉もこの映画から誕生しました。
どうやらAmazonのプライムビデオで視聴できるようですね。1940年代のもので白黒映像作品という、古き善き時代な雰囲気を感じさせる作品ですね。
情報が錯綜する時代
最近はインターネットなどでカンタンに情報を収集することができますね。しかし、時には誤った情報に振り回されることになる場合もあり、そのサイトに記された情報が正確かどうかを判断する力も求められます。わたし自身、読書等を通じて得た知識をブログに載せていますが、その情報の正確性について疑問がある場合は個人で調べてみたり、対応した論文があるのか検索をかけてみたりします。
このブログには正確な情報を記述するよう努めていますが、できれば複数のブログ、著書、専門家からの話など複数の情報を集めてから判断することを強くおすすめします。よく「この商品にはきちんとしたエビデンスがあります!!」というメッセージとともに商品が紹介されていたりしますが、エビデンスとは確実に正しいことを述べているとも限らないので注意が必要です。これに関しては『松村むつみ』氏の著書『「エビデンス」の落とし穴』に子細が語られています。医学博士であり、病院に勤務しながら研究を続け、独立後は医療に関する情報を提供するジャーナリストとしても活躍されているスゴイ方ですね。
本日の”ToDo”
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