【コード進行】音楽における”パクリ疑惑”の真実 似ている音楽が多い理由

日本と世界でよく使われるコードを紹介 日本の”王道”は世界に通用しない?

 パクリ疑惑のある音楽が多い理由は『コード進行』にあります。

 音楽には『リズムメロディハーモニー』の3要素が存在します。一定のスピード間隔を刻むリズム、様々な音の高さを表現するメロディ、複数の音を同時に奏で彩りを生むハーモニー。これらのうち1つでも欠ければ“音楽感”がなくなってしまいます。

 このなかで今回最も重要なのは『ハーモニー』です。通常の歌で考えればがメロディー、リズムはドラムセットが主に担当し、ハーモニーはピアノやギターなどが和音(コード)を奏で、それぞれの音を融合させます。同じ歌詞というのはありえないですし、リズムをパクリなんて言い出したらキリがありません。人の耳に“パクリ感”を与える主要な原因はコード進行にあります。

 今回は「なぜあの曲は似ているのか?」といった疑問に関して、3つの主要なコード進行を解説する形で説明しましょう。

代表的な3つのコード進行

 現代音楽はたった12個の音の組み合わせでオリジナリティーを生み出す必要があります。本人に悪気はなくても「パクリだ!」と指摘されることもあるでしょうし、上記の問題もありこの先も“パクリ疑惑”は定期的に炎上案件になると思われます。コード進行は音楽の根幹を成すものですので、それをパクリだと言われてしまったらそもそも音楽を作れなくなりますよね。

 では、よく使われるコード3つと代表的な曲を紹介しましょう。

わかりやすさを重視し全て“ド”の音を基準とした『Cメジャースケール』を想定し書いていきます

王道進行【F-G-Em-Am】

 日本で最も使われていると言っても良い『王道進行』と呼ばれるコードはありとあらゆる楽曲に使用されています。とくに“Em”を強調した展開になることが多く、明るい響きのなかに一抹の切なさを感じさせる日本人好みの曲調が魅力ですね。

 徐々に音階が下がり静けさを増していくコード進行。サビに入れ込むことで最大限の効果を発揮し、恋をテーマにした曲であれば恋心の葛藤を演出するのにピッタリだと思います。能天気な明るさではなく、日本人の『侘び寂び』が突き詰められたコード進行と言えるのではないでしょうか?

 洋楽界でも80年代に流行を見せましたが、現在ではほとんど使われていないようです。テンポを上げたり転調することで純粋に明るい曲でも利用でき、応用の幅が広いコードとも言えます。ありとあらゆる曲に利用されていますので、アナタが愛聴している曲でも使われているでしょう。とくにサビの部分を意識してみてください。

YouTubeチャンネル、Nanaki Piano:投稿動画より

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カノン進行【C-G-Am-Em-F-C-F-G】

 17世紀に活躍したドイツの作曲家『ヨハン・パッヘルベル』の『カノン』に使用されたコード進行です。安定した曲調になり、耳馴染みが良く、なめらかで綺麗な雰囲気の曲ができます。一時期は「カノン進行の曲を出せば売れる」という流れもあったようです。

 パッヘルベルのカノンをはじめ『SMAP/世界に一つだけの花』や『井上陽水/少年時代』など歴代の名曲にも多用されています。聴く人の心にやすらぎを与えてくれるコード進行ですが、刺激を求めている方にはやや物足りないかもしれませんね。

YouTubeチャンネル、0Bach0:投稿動画より

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ポップパンク進行【C-G-Am-F】

 世界ではこのコード進行が最もメジャーと言って過言ではないでしょう。1曲を通してぜんぶこのコードが採用されることもあり、壮大さや感動を与えるコードとして、日本では『感動コード』と呼ばれることもあるようです。

 ディズニー映画作品である『アナと雪の女王/Let It Go』はサビの部分でこのコード進行を採用しています。最大の特徴は曲の初めから終わりまで延々とループできる汎用性の高さにあります。とくにコードを頻繁に変化させることが少ない洋楽で採用度が高く、アメリカの3人組コメディアン『the Axis of Awesome』というグループが『pop punk chord progression』という命名をして一躍有名になりました。

YouTubeチャンネル、random804:投稿動画より

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類似度に関する研究 実際に起きた衝撃的裁判

 音楽情報雑誌『研究報告音楽情報科学(MUS)』に掲載された3278曲のサンプルを分析した結果によれば、同じアーティストの場合類似度はそこまで大きくならないようです。ただコードに関しては同じものが多用されているとあり、やはりコードが他の音楽と似通ってしまう一因となってしまうのかもしれませんね。

情報処理学会
 音楽の『類似度』や『ありがち度』の推定法に関する研究は こちら

 アメリカでは楽曲盗作に関する訴訟がいくつも起こっています。2013年、アメリカの人気歌手『ロビン・シック(Robin Thicke)』が、同じくアメリカのシンガーソングライター『マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)』の親族との裁判で敗訴。楽曲が盗作だとして530万ドルの賠償金と楽曲のクレジットを渡すよう判決がくだされました。

 この裁判では楽曲の類似性ではなく雰囲気その作曲家らしさについて争った判例として有名です。サウンド、ベースラインなどの要素が似ていたということで親族側の勝訴。この判決は尊敬するアーティストへの想いをこめたオマージュ作品がすべて訴訟リスクにさらされるのではと論争を巻き起こしました。

 実際の楽曲はこのような感じです。まずは2013年発表、ロビン・シック氏の楽曲『Blurred Lines』はどうでしょう?

YouTubeチャンネル、Robin Thicke:投稿動画より

 続けて1977年発表、マーヴィン・ゲイ氏の楽曲『Got To Give It Up』はどうでしょうか?

YouTubeチャンネル、Marvin Gaye:投稿動画より

 どうでしょう? アナタはこれらが似てると感じたでしょうか? ――アメリカではこれが盗作として、ロビン・シック氏ら側に530万ドルの支払いが命じられました。

 もし雰囲気だけ似てるからアウト、なんて世の中が訪れたら驚きですね。アナタがもし作曲家志望であれば、他人の曲をまるまるパクってしまったり、無断で流用せずうまいコード運びでオリジナリティーを出していきましょう。

Bitly

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