【宇宙】重力ってなに? 宇宙に存在する”最も弱い力”重力の7ふしぎ

重力がもつ”7つのふしぎ”をわかりやすく解説

 宇宙には4つの力があります。そのなかでも最も身近に存在すると言ても良いでしょうこの『重力』。身近すぎて、普段の暮らしではまったく気に留めることはありませんよね? ですが、この重力があるからこそわたしたちの宇宙は存在しているのです。

 しかしこの重力にはおもしろい特徴がたくさんあります。今回はそれら重力がもつふしぎな特徴7つを紹介。重力とは何か? について簡潔に解説していこうと思います。

重力の魅力 7つのふしぎ

 わたしたちは地球の重力によって引き寄せられており、身体の力を抜くと地面に倒れ込んでしまいます。ボールを上に投げればやがて落ちてきますし、雨が登っていくことはありません。せっかく購入したアイスクリームを落としてしまった、なんて悲しい思い出がある方も多いと思います。

 そんな『あたりまえ』な存在である重力ですが、これを研究者たちが学術的な視点から観察すると、なんともふしぎな魅力がたっぷり詰まっているようです。今回紹介する7つのふしぎを記した 『大栗博司』氏著作『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』ではそんな重力に対するナゾや著者の想いなどがふんだんに詰め込まれており非常に見応えある内容でした。理学博士を取得した著者は、後に東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の機構長を務めるなど素晴らしい活躍をしており、素粒子論に精通している方です。

 著者は『重力とは?』に関する答えを7つめのふしぎとして記しています。いったいどのようなふしぎなのでしょうか?

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宇宙に存在する”4つの力”のうちの1つ

 量子力学の発展により、重力は電磁気力と同じ宇宙の根幹たる『』のひとつということがわかりました。さらに有名な物理学者『アインシュタイン』の『相対性理論』では、重力とは『空間のゆがみ』のことだと述べています。地球によってまわりの空間がゆがむことで、わたしたちは地球へと落ちていくのです。

 かつて、石が地面に落ちていく姿を目にした古代の哲学者『アリストテレス』は「物質は自らの場所へ戻ろうとする性質がある」と考えました。石は地面にあるものですから、上に投げたら本来の自分の場所である地面に帰っていくだろう、という塩梅ですね。実際、この考え方は中世ヨーロッパまでは主流だったそうです。

 はじめて『重力』を発見したのは、みなさんご存知『アイザック・ニュートン』です。彼の生まれは1642年ですから、アリストテレスからかなり後の時代ですね。彼のすばらしい点は、物体に働く『』を明確に定義した点です。これは現代でも『運動の第1法則第2法則第3法則』として学校でならいますね。

第1法則
  物体は、力が作用しない限り静止、または等速直線運動をする
  慣性の法則
第2法則

  物体の加速度は物体に働く力に比例し、物体の質量に反比例する
   ニュートンの運動方程式
第3法則

  ふたつの物体が衝突したとき、そのふたつには等しく逆向きの力が働く
   作用・反作用の法則

重力は4つの力のなかでも最弱

 以前の記事でも紹介しましたが、重力は他の力と比べるとがつくほど極端に弱いのです。重力の力を『10』として、具体的な数値で紹介すれば以下のようになります。

重力相互作用:10
電磁気力相互作用:10の38
弱い力の相互作用:10の15

強い力の相互作用:10の40

 ――なかなかイメージできませんね。では身近なたとえを紹介しましょう。たとえば小石ほどの磁石を、地面に落とした金属にゆっくり近づけていく――すると、ある地点でパチン! と金属が磁石に引き寄せられますね。その時点で『小石ほどの大きさの磁石、つまり電磁気力が、地球という超巨大物体がもつ重力に勝利した』ということです。いかに重力が弱いかがわかるでしょう。

どんなに遠くにいても伝わる力

 このとおり、力は最弱の重力ですが、その有効範囲は電磁気力と並び無限大に及びます。とはいえ影響範囲は重力元の大きさに比例しますので、実際には際限があるように見えます。たとえば太陽は1.6光年ほど先までが重力圏とされています。

 触れてもいない遠くの物質をも引き寄せる重力ですが、実際にはほかの『』と同じように、その力を媒介するなんらかの素粒子が互いにコミュニケーションをとるしていると考えられています。しかし残念ながら、その素粒子とされる『グラビトン』は現時点でも発見されていません。

すべての物質に等しく働く力

 この『等しく』という点が重要で、事実として物体は質量の大きさに関わらず、同じ高さで落下させたら同じタイミングで着地します。しかし、直感としてはものすごく違和感を感じるところですよね。1キロの鉄球と10キロの鉄球では10キロのほうが速く落ちそうと考えるのが直感的ですね。しかし、事実として同じタイミングで地面に落下します。これは『ガリレオ・ガリレイ』がピサの斜塔で行ったとされる実験を思い出していただければよいでしょう。

 重いものは重力質量の問題で『引っ張る引っ張られる総力が強くなる』のは事実ですが、それと同時に慣性質量による『動かしにくさ』があり、それらが釣り合っているので結果として、同じ速さで落ちていくのです。それでも感じる違和感の正体は、おそらく空気抵抗などそのほかの条件によるものでしょう。同じ重さでも物質や形によって空気抵抗の大きさは変化していきます。それがほんの僅かな差を生んだりするのです。

重力は消せる

 電磁気力による産物です。そして、わたしたちは雷対策として避雷針を用意したり、外出しないようにしたりします。さすがにゴムで全身を覆ったりはしないでしょうが、これらは結局『電磁気力は操作できる』ということを表しています。では重力はどうでしょう?

 空を飛ぶ鳥たちは決して重力無効のスキルを所持しているわけではなく、ただ空気の流れを操って重力に抵抗しているだけです。わたしたち人間は、それを飛行機という形でなしとげました。まだ重力を消すことはできていませんが、ここで飛行機のエンジンを切って自由落下させた場合はどうでしょう?

 この時、擬似的ながら無重力体験をすることができますね。しかし、アインシュタインの相対性理論にあてはめると、これは実際に『重力が消えた』状態だというのです。これに関しては複雑な解説が含まれますが、ぜひ今後機会があれば記事を書いていきたいですね。

 重力は”“へいざなう

宇宙の均衡はふしぎなほど釣り合っている

 上記の通り、重力を消すことはできるのですが、重力の伝わり方を操作することはできません。雷は避雷針に吸い寄せられたり、光は壁にぶつかると遮られるのに対し、重力はどのような遮蔽物も意味なくすり抜け伝わっていきます。さらに、重力はあらゆる物質を引きつける力のため、物質が集まれば集まるほどより強くなっていきます。

 これ、実は非常に重要なことで、たとえば重力の強さが現状よりほんの少しでも強ければ、宇宙はあっという間にすべての物質が引き寄せられ、自らの重力で潰れ、あっという間に冷え切ってしまい、生命はおろか星の形成さえままならない宇宙だったかもしれません。

 上記で紹介したように、重力は他の力よりも圧倒的に弱い力です。しかし、逆に圧倒的に弱いからこそ、現在の『ちょうどいい宇宙』ができあがったのです。これは重力のみならずほかの『』にも言えることでしょう。電磁気力、つまり電気や磁石の力が今より強ければわたしたちは常に放射能を浴び続けるような世界で生きることを強いられていたかもしれません。いずれにしても、この宇宙がわたしたちにとってちょうどいい世界であることに感謝しなければなりませんね。

 あるいは、この宇宙が実はおかしな世界で、真実の『ちょうどいい』とかけ離れているかもしれませんが……。

重力の理論は完成していない

 上記で挙げたふしぎは重力にまつわるナゾの数々です。重力の強さ、働きなど観測されたデータによって計算された数値はありますが、まだ『なぜそうなったのか?』という疑問ははっきりしていません――つまり「重力とはなんだ?」については「わからない」というのが現代の科学による結論です。

 アリストテレスの時代から考えられてきた重力。ニュートンによって物理的な理論が確立されながらも、量子力学というミクロ単位で考えた場合さらなる問題が生まれ、天才アインシュタインの理論をもってしてもまだまだ不明な部分がたくさんあります。

 わたしたちの身近に存在しながら、まだナゾだらけの『重力』。研究者たちの奮闘はまだまだ続いていくことでしょう。あるいは、これをきっかけに好奇心がうずいたアナタが重力のナゾを説くかもしれません。

本日の”ToDo”

①重力と勝負しよう
  垂直跳び、アナタの記録は何センチですか?
②重力の弱さを体験しよう
  地面に金属を置き、磁石で重力と戦ってみよう
日常生活で重力を感じよう
  アナタの身近に重力の影あり!

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