【入門用】心理学用語”犯罪心理学”の基本【わかりやすい解説】

犯罪に至る心理とは? プロファイリングとは? 犯罪者の特定・防止 犯罪心理学の基本用語をわかりやすく解説

 犯罪心理学は『犯罪の実態と、犯罪者がする犯罪行動の心理を研究する科学的学問』です。決して『犯罪者の心理を分析する』だけの分野ではないことをまずご理解ください。これは『プロファイリング』というもっと細かい分野になりますね。

 犯罪心理学は以下の主だった役割が期待されています。

・犯罪を未然に防ぐ (予防心理学
・犯罪捜査の強力  (捜査心理学
・犯罪者の更生   (矯正心理学
・被害者のカウンセリング(被害者心理学

 非常に幅広い分野を取り扱っているので、それぞれ『○○心理学』という名前までつけられていますが、おおまかに犯罪心理学のいち部門とイメージして良いでしょう。犯罪心理学というネーミングは、ちょっと『犯罪者を特定するための学問』と誤解させてしまいガチですね。

 今回はそんな『犯罪心理学』について、歴史から現在の研究、行われている対策などを網羅的に解説していきたいと思います。

犯罪心理学の歴史、研究、現代に行われる活動まで幅広く解説

 人間は社会を形成する生き物です。犯罪は社会に深く関わるので『社会心理学』の知識が強く影響していきます。後々解説していきますが、犯罪は地域の状態が深く関係してくるのです。

 昨今の犯罪心理学研究によって、現在は多くの事が明らかになってきましたが、犯罪に関わる研究は長い歴史があります。その中には科学的根拠のない憶測も存在していました。

 まずは『歴史』の話からはじめましょう。

歴史

 原初の研究は『犯罪人類学』です。現在から約200年前にはじまり、当時は『犯罪者には身体的にある種の特徴を備えている』としていました。つまり容姿によって犯罪者を決定していたのですね。

<strong>犬物語</strong>
犬物語

見た目で人を判断しちゃダメだぞ!!

 言うまでもなくトンデモ理論ですが、当時はそんなトンデモ理論こそが最先端でした。それに加え、人の骨の形から性格や性質、知能や心理まで特定しようと試みる『骨相学』というものを元に、精神科医者の『チェーザレ・ロンブローゾ』は、犯罪者に共通する特徴を探そうとしました。後に犯罪者の家計調査まで行い、最終的には「犯罪者とは、生まれたときからそうなる運命にあって、退化した遺伝子を持った人間である」という『生来犯罪者説』を唱えるに至ります。

 まさにトンデモ理論ですね。しかし、しつこいようですが当時はこれこそが最先端の科学です。賛否両論あったものの、彼の考えは世間に大きな影響を与えます。ちなみにこの『チェーザレ・ロンブローゾ』氏、ゴルジ体ゴルジ染色で有名なノーベル生物学・医学賞受賞者『カミッロ・ゴルジ』の指導教官を務めていたこともありました。

人ではなく”社会”に着目する

 犯罪人類学は多くの批判を浴びつつも、遺伝子学の発展には大きく貢献しました。それから生物として犯罪を犯す理由を研究する犯罪生物学を経て、フランスの法医学者『アレクサンドル・ラカサーニュ』が『犯罪社会学』を創始します。彼は「犯罪は犯罪行為を助長する環境によって起こる」としました。

 つまり、社会環境によって犯罪の起こりやすさが決まるのです。現在はこの考え方を基盤に、様々な研究が行われているようですね。

犯罪が起きやすい”環境”

 社会関係によって犯罪の起こりやすさが決まる。これはいったいどういうことなのでしょう?

 『ゴミの投げ捨て』や『壁の落書き』が放置されていると、誰もがそのような行動に走りやすくなります。つまり、ある行為をする『心理的なハードルが低くなる』のですね……もしかして、アナタは以下のような考えをした経験があったりしますか?

<strong>Aさん</strong>
Aさん

なんかここすっげー汚いし……ゴミ捨てちゃってもいいんじゃね?

 誰もがゴミを投げ捨てるような環境になると、当然ながらその環境は汚れていきます。こういった『軽微な犯罪行為』が見過ごされると、さらに犯罪行為を行う心理的ハードルが下がり、やがて『重大な犯罪行為』まで発生するようになっても「まあ、あそこだから……」となんとなく受け入れられるような空気に――その環境の治安まで悪化していくのです。

 これらを総称して『割れ窓理論』と呼ばれています。たった1枚の割れ窓を放置しただけで、やがて他の窓も次々と割られていくという、アメリカの犯罪学者『ジョージ・ケリング』が唱えた説です。

 小さな問題を芽のうちに摘んでおく。これこそ犯罪を生み出さない最大の対策と言えるでしょう。あと、これはあくまで心理学で提唱されているひとつの説です。決して「人間心理としてそうなんだからゴミを捨ててしまっても仕方ない」というわけではありませんので道端にゴミを捨てるなんてことはゼッタイにしないでください

人はいかにして犯罪に走るのか

 現在、犯罪の原因として大きく取り上げられるのが『犯罪原因論』と『犯罪機械論』の2つです。それらは『内山絢子』氏監修『面白いほどよくわかる! 犯罪心理学』に詳しく書かれています。氏は科学警察研究部に所属した経歴をもち、長く心理カウンセリングの教鞭をとっていました。定年後も精力的に活動されており、多くの著書に関わっています。

 著書は犯罪心理学に関するありとあらゆる知識、事象、例を記したまさに『犯罪心理学』の入門書です。図解でわかりやすく解説されており、心理学のみならず社会に関心をもつ方にも有益な1冊となるでしょう。

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 この著書をもとに、より深く追求してみましょう。

犯罪原因論

 犯罪は『個人の性格資質環境』が大きく影響するとする理論です。この研究が進むことによって以下の効果が得られます。

犯罪捜査
  犯罪者の”行動”を知ることに繋がる
犯罪を未然に防ぐ
  犯罪に至る”原因”を事前に摘み取ることができる

 警察官が持ち合わせていない専門知識を、犯罪捜査に提供することができますね。さらに、ある人が性格や資質に何かしらの問題を抱えている場合、その人に対しカウンセリングなどを行い、問題解決を図ることができます。

 上記で解説した『割れ窓理論』のように、環境に問題があるのであれば、相談を受けた際犯罪を起こさせやすい環境を指摘し整備させる活動にも繋がります。

 個人の資質というのは『遺伝子ホルモン』的なことも考慮されますし、環境というのはその人をとりまく『人間関係メディアなどから得る情報』なども考慮されます。遺伝子的な問題、ホルモンの問題、さらにその人の人間関係、よく見るマスメディア、ストレスなどを網羅的に扱うため、非常に多角的な角度から研究する必要があるのですね。

犯罪機会論

 犯罪は『犯罪を犯す機会があるかどうか』が大きく影響するとする理論です。この研究が進むことによって以下の効果が得られます。

環境分析
  犯罪を犯しやすい”場面“がわかる
犯罪を未然に防ぐ
  環境整備により犯罪”原因“を事前に摘み取ることができる

 この理論の場合『犯罪を犯す人犯さない人』の間におおきな区別はなく、犯罪を行える機会があれば誰でも犯罪を起こしうるという考え方になります。なかなかに物騒ではありますが、この考え方は地域の環境整備において重要な役割を果たしています。

 犯罪機械論が得意とするのは『予防』です。過去によく犯罪が起こった環境(場所時間帯など様々な要素を含む)を分析し、そのような環境を排除することで、起こりうる犯罪を未然に防ぐことが主な目的です。

 犯罪はそれ相応の理由があって発生するものと考えます。割れ窓1枚を放置しない事のように、犯罪の原因となる要素を取り除くことは非常に大切なのです。

犯罪を未然に防ぐために

 犯罪原因論と犯罪機械論は、いずれも『予防』において効力を発揮します。具体的な対策として以下のようなものが考えられますね。

・地域のクリーン活動
・夜間街灯の充実
・地域安全マップの導入

 地域安全マップに関しては、各市町村により導入されている場合もあるので、ぜひ各地方自治体ホームページなどでご確認ください。また海外旅行などに赴く場合、日本人に対し危険度を知らせる『海外安全情報』が国から公表されています。昨今は新型コロナウイルス感染症に対する危険性や、各地域間に起こっている紛争に関する情報も公表されているのでぜひ確かめてみてください。

外務省
 海外安全情報は こちら

 また、最近はこれらの研究を両立させる動きもあります。現状日本では『犯罪原因論』が強く語られていますが、今後は『犯罪機会論』がより活発に議論されていくことになると思います。社会においてどのような原因が犯罪へ繋がりやすいのか、どのような機会があれば人は犯罪に至るのか、それぞれ考えてみる価値がありそうな気がしますね。

犯罪対策のプロファイリング

 プロファイリングとは『犯罪の性質や傾向を行動科学的に分析し、犯人の特徴を分析する』もので、アメリカ連邦捜査局(FBI)が開発した技術です。行動心理学を利用した犯罪捜査支援技術のひとつで、日本でも昨今猟奇的な殺人事件が勃発したことから、操作手法にプロファイリングが利用され始めました。

 そのまえに、それまでに行われた日本の従来的な捜査方法に関して解説していきましょう。

 アナタは『ウソ発見器』をご存知でしょうか? これはポリグラフ検査と呼ばれ、皮膚に流れる電気活動呼吸心拍などの生体反応をもとに、被験者の心理状態を判断する検査法を指します。ある質問をしたときどのような態度を見せるか、身体がどのような反応をするかを細かく計測することができます。

 これに加え、日本の警察が導入した手法のひとつとして、犯人であれば被害者が被害に遭う瞬間などに関する特定の質問に強い緊張を示すはずだという仮説に基づいた『緊張最高点質問法(POT)』という質問法があります。

 従来の警察はこれらを駆使して高い成果を挙げていた、とされていますが、この捜査方法は未公開だったので証拠としての能力が認められない場合もあったのです。現在日本においては、捜査員の地道な捜査のみならず科学的データを用いた捜査も行われています。

3種類のプロファイリング

 現在、犯罪における主なプロファイリング手法は以下の3種類です。

リンク分析
  解決した過去の事件と関連する未解決事件を掘り起こしたり

  新たに発生した事件が類似事件と同一犯によるものか否かを推定する。
犯罪者プロファイリング
  犯人像の推定を行う。パーソナリティや共通する特徴など

  人間の行動に関する仮説(行動心理学)に基づいて行われる。
地理的プロファイリング
  犯行血と犯人の居住地との関連性や連続犯行エリアの予測などを行う。

 刑事ドラマではよく描写されるので「ああ、そういえばそういう描写があったな」と感じた方もいるかもしれません。大まかな流れとしてまず『リンク分析』で事件のパターンを掴み『犯罪者プロファイリング』で犯人像を絞っていくイメージですね。個人的な感想ですが、こういう描写はとくに海外の刑事ドラマでわかりやすく描かれているように感じます。

プロファイリングを活用しよう

 地理的プロファイリングのなかで最もカンタンな手法に『円仮説』があります。これは犯罪者の活動空間と住居の特定に役立つテクニックで、小学生でもできるシンプルな手法です。犯罪捜査以外にもたくさん利用できそうですね。

 以下の図を見てください。

 ある市街地の地図で、赤い丸[]が犯罪が勃発した地点とします。それらをすべて書き記し、最も離れている2つの点を直径とした円を描きます。

 円を描くと、その円の中にすべての犯罪箇所が含まれていることが分かります。そして『犯人の住所も、この円の中に含まれている』と考える。これが円仮説の考え方です。

 現在の地理的プロファイリングは、円仮説のほか空間情報の管理や地点間の距離計測など、多数の地理分析ツールを駆使して捜査しています。プロファイリングは他にも『交渉』や『取り調べ』などで役立っており、今後プロファイリングを専門とする『プロファイラー』の活躍が望まれますね。

 犯罪心理学によれば犯罪は誰もが起こしえるものです。もしかしたら、わたしたちは事件報道を見て「こわいなぁ」と思うことではなく「自分がこうならないよう気をつけよう」と思うべきなのかもしれません。それと同時に犯罪とはなにか? をもう一度考え直す必要があるのかもしれません。

 アナタは犯罪をどう考えますか?

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