犯罪者の矯正 非行の原因究明 矯正心理学とは?
矯正心理学は『個々の犯罪者・非行少年が行う犯罪や非行性を明らかにし、矯正の場を利用して彼らの改善、矯正のために科学的技術や理論を提供する学問』です。簡潔にまとめると以下のようになります。
・なぜ犯罪者が犯罪を犯したのか? を解明する
・矯正に必要となる、科学的根拠のある心理学の理論等を提供する
罪を犯した人や非行少年を収容し、改善・矯正のために各種プログラムを用意している施設を『矯正施設』と呼びます。矯正施設は収容された人が秩序ある共同生活を送ることができる環境を確保し、収容者たちが前向きに、改善更生へと向かうようサポートできる場所でなければなりません。もちろん、そこで働く矯正職員たちはそれらの環境確保のため尽力します。
これらの役割を通して、矯正心理学に関わる人は犯罪者の社会復帰をサポートします。今回は犯罪心理学について、それらに関わるいくつかの範囲も交えて解説していきます。
犯罪者の更生 立ち直りを支援する矯正心理学
刑事事件において、2022年現在日本で下される判決には以下のような種類があります。
・科料
1000円以上1万円以下の強制的徴収
・罰金
1万円以上の支払い命令
・勾留
執行猶予なしの実刑。1日以上最長29日間、刑事施設に収容される
軽犯罪上では最高刑
・禁固
期限が設けられた場合は原則として1ヶ月以上、20年以下
希望があれば刑務作業(刑務所内で働く)も可能
・懲役
期限が設けられた場合は原則として1ヶ月以上、20年以下
ただし併合罪により最長30年まで加重可能
刑務作業は義務
勾留、禁固、懲役は自由を拘束するので総称して『自由刑』とも呼びます。犯罪者を隔離し一般人の安全を確保する目的がありますが、現代社会においては出所後に再犯を起こさせないよう教育し、成長させる矯正教育に重点が置かれているようです。矯正の一環として、刑期が満了する前に条件付きで社会復帰させる『仮釈放』の制度も設けられていますね。日本においては再犯者が多く、国としても対策が急がれるところです。
法務省
再犯率と再犯防止のための対策などは こちら
未成年者の犯罪
矯正心理学は、とくに未成年者に対し重要になります。未成年者が犯罪を起こすには家庭環境や両親の愛情、学校のいじめなどなんらかの問題が考えられます。こうした背景から傷つき、自信をなくし、生きる希望をなくして犯罪に手を染めた未成年者に対し厳罰だけを求めるのは社会的にも不合理でしょう。
そこで、少年犯罪では厳罰だけではなく周囲のサポートが重要だと考えられ、少年法にも『少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。』と記されています。
デジタル庁、e-Gov法令検索
少年法に関しては こちら
では、犯罪者に対して矯正心理学はどのようなアプローチをしていくのでしょうか?
アセスメントと心理療法
矯正心理学は、冒頭で紹介した2点を解決するため主に『アセスメント・カウンセリングと心理療法』2つの要素に分類して進行していきます。この流れは心理カウンセラーが行うカウンセリングをおおむね同一ですが、それぞれより対象の心理を把握できる手法を用いて行われます。
アセスメントは対象者の心理状況を知るために行われる評価、査定のことで、心理カウンセリングと同じように対象者の心理を分析します。知能テストや性格テスト、行動観察、面接などさまざまな手法を行い、ここで現れた結果が少年審判や少年院での処遇計画にも影響されます。
心理アセスメントでは、対象者により多くの手段を講じますが、多くの場合『面接法』が基本になります。非行少年に対しては特に重要で、実際に会って会話し、今の率直な気持ちや非行当時の気持ち、家族のこと、友人関係などを聴いていき、少年の心理状態を把握することに努めます。
アセスメントによって得られた結果を考慮し、対象者にカウンセリングを心理療法を試みます。犯罪の罪の重さを認識させカウンセリングしつつ、再犯防止のためのサポートを行い自立への支援をしていきます。たとえば、実際現場で数多くの非行少年たちをカウンセリングしてきた『岡本茂樹』氏の著作『反省させると犯罪者になります』では以下のような手法が紹介されています。ただし、著者以下の手法も利用のしかたによっては逆効果だと警鐘を鳴らしています。
・ロールレタリング
誰かに扮して手紙を書く手法
自分から家族への他、母から自分へ、友人から自分へなど他者になりきり手紙を書く
自分の内面や相手の心情を観察する訓練になる
・内観療法
ある人から『してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと』の3つを考える
1週間泊まり込み、ひたすらこれを繰り返す。とくに迷惑をかけたことについて考える
仏教の『身調べ』という修行法から考案された
矯正の意味とは?
矯正心理学は刑務所や少年院を出所した人の再犯・再非行防止のサポートも行います。補導、家出した少年の居場所・活動できる場所を提供して、非行防止や補導活動の支援の役割も担っています。単なる矯正だけでなく、薬物依存の恐ろしさや犯罪の危険性を広報するなど健全な社会環境をつくる役割も担っています。
人間の心はそう簡単に変わることはできません。しかし、ふとしたきっかけで人生観を180度変えてしまうような出会いもあります。罪を犯した瞬間は『悪』だったとしても、その人が『最初から最後まで悪だったわけではありません』。施設で働く法務技官の方は、そういった“人の内面“と向き合う仕事をしているのかもしれません。
YouTubeチャンネル。MOJchannel(法務省公式チャンネル):投稿動画より
本日の”ToDo”
①法務省のチャンネル動画を視聴してみよう
国が運営するチャンネルは複数存在します
②瞑想をしてみよう
自己洞察力を磨くことができます
③ストレス解消をしよう
ストレス解消のための外出は不要不急にあたらないと思います
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