日本はアナタが思ってるよりずっと大きい! 地図法のわかりやすい解説
はじめて訪れた場所を散策するとき、アナタは地図を持って探検するタイプですか? それとも気の向くままにあちこち散策するタイプですか? ――道に迷った時、地図はアナタを助けてくれます。現在はスマホでかんたんに検索できますが、大昔の人々はいろいろな方法で地図を残そうとしてきました。
世界最古の世界地図は『バビロニアの世界地図(Babylonian Imago Mundi)』です。紀元前9世紀以前に作られたと考えられており、粘土板で小さいながら注釈なども書かれた詳細な地図でした。
そのほか、各地で少しずつ世界地図が作られていきますが、それを爆発的に広めたのは中世ヨーロッパの大航海時代です。命がけで海を渡っていた当時、地図の存在は生命線と呼べるほど重要な存在です。そのため正確な地図の需要が高まっていきました。
現在は数多くの地図があたりまえのようにわたしたちの生活に密着しています。ですが、実は地図って実は正確ではないことをご存知でしょうか?
正確な世界地図は不可能!? 地図法のわかりやすい解説
あたりまえですが地球は丸いです。それを平面の地図にしなきゃいけないとなるとどうしてもゆがみが出てしまいます。みかんの皮を剥いて並べてみると、どうしても平面にならないことがわかりますね。力技で押しつぶしちゃダメですよ?
どのような優れた地図であっても悪意のない嘘が数多く含まれているのです。グーグルマップはメルカトル図法で作成されていますが、ちょっと以下の地図をご覧ください。
おなじみの世界地図ですね。一見正確に見えますが……ちょっと世界最大の島であるグリーンランドと、南半球の大国オーストラリアの大きさを見比べてみましょう。
グリーンランド、さすが世界一大きな島ですね……しかしちょっとまってください。グリーンランドは島ですが、オーストラリアは大陸と呼ばれるほど大きいはずです。実際、両者の面積は大きく違うのです。
グリーンランド
→ およそ 2,166,000 平方km
オーストラリア
→ およそ 7,692,000 平方km
とんでもない違いですね。オーストラリアは世界第6位の国土面積を誇っているのですが、地図上ではそうと思えなくらいの大きさです。さらに、ロシア連邦は17,125,000平方km(日本の約45倍)と世界一の国土面積を誇っていますが、正しい縮尺にするとそれほどの圧倒感はありません。
ロシアは意外と大きくない。これがメルカトル図法の罠と言えるヒミツです。
メルカトル図法ってなに?
メルカトル図法は『角度が正しい地図』です。有名な地理学者『ゲラルドゥス・メルカトル(Gerardus Mercator)』の名前が付いていますが、実際はドイツの地図製作者『エアハルト・エッツラウブ(Erhard Etzlaub)』によって考案されたものとされます。どういうやり方で作られたのでしょうか?
突然ですが、アナタはみかんの皮を剥くときどうやりますか? ――たとえばこんな剥き方をしたりしませんかね?
球体をこのように剥くと平面にでき、いい感じの地図ができあがります。しかし、このままだと地図上にナゾの空間があるのでなんとかしてスキマを埋めなければなりません。っということで、剥いた皮を引き伸ばしてむりやりくっつけます。
この際『南北を正確にする』ように引き伸ばしていきます。見た目はいい感じですが、これだと引き伸ばしたぶんだけ東西の角度がズレるので北極や南極に近い地域ほど極端に面積が広い地図になってしまいます。
ということで、横に広げたぶん縦にも広げていきましょう。
このように、球状をムリやり平面の地図にして、引き伸ばしを繰り返したものがわたしたちが普段使っているメルカトル図法の地図です。
このようにいろいろイジりまくったので、メルカトル図法の地図にはいろいろな問題が起こっています。
メルカトル図法の罠
YouTubeチャンネル、まつおか秘密研究所:投稿動画より
地球は丸いです。細かいことは省きますがドイツの数学者『ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス(Johann Carl Friedrich Gauss)』によって「距離を歪ませない正確な地図は書けない」と証明されています(ガウスの定理Theorema Egregiumによる)。
正確な地図は作れないけどどうにかしてなるべく正確な地図を作りたい! ということで、人は昔からたくらんの地図を作り上げてきました。地図に必要な要素は以下の4つです。
・面積
・距離
・角度
・方位
メルカトル図法は“角度“だけが正確の地図です。なのでその他はまったくデタラメです。解説のとおりグリーンランドをはじめ色々と巨大化(面積:×)してるので大陸間の長さなどもバラバラ(距離:×)です。さらに東西南北も正確ではない(方位:×)ため、たとえばチリへの最短距離は、メルカトル図法ではおおよそ以下のような軌道を通ることになります。
メルカトル図法の地図は経度と緯度がきちんと整理されているので角度に関しては正確です。しかし方位に関しては地図上の上辺と下辺がそれぞれ『北極点・南極点』を表しているため南北は正しいのですが東西はズレています。
北が”上“なら東は”右“だろ? なんでズレるんだ?
地球が球体であることを思い出してください。球体の場合真東の方位は直角に90度ではなく赤道側に寄っていきますよね? ――メルカトル図法の“右“は東ではなく同じ緯度であることを表します。東京から真東の方位は本来チリですが、メルカトル図法上で東にあるっぽく見えるのはアメリカですね。
角度以外はバラバラな地図。なぜこのような歪んだ地図が使われているのでしょうか? それには大航海時代の航海事情が深く関わってきます。
メルカトル図法の真価
YouTubeチャンネル、Takahashi Suzuki(防災 看護師):投稿動画より
メルカトル図法最大のメリットは『東京を出発した時点から常に“真東“を保ち続ければ必ずアメリカにたどり着ける』という点です。
現代のような観測技術が確立される以前は、航海士がコンパスや定規などで角度を測り進行方向を確認するしかありませんでした。現代こそ数時間かければかんたんに海を超えられますが、当時は数週間や数ヶ月をかるく超える長い旅路です。
航海中の病気、食糧問題などがあり遭難したらまず助からないでしょう。そんな中、この『常に同じ角度さえ保っていれば、どんなに遠回りでも必ず目的地にたどり着く』という事実が大きな意味をもっていました。
現在はこれらを改良し面積、距離、方位を極限まで正確にした『ユニバーサル横メルカトル図法』が国際的に採用され、日本の地図情報を作成する公的機関『国土地理院』も、この図法で日本地図を作成しています。Web上で確認できるので、興味ある方はいろいろと試してみてはいかがでしょうか?
国土地理院
地理院地図は こちら
すべてにおいて正確な地図は存在しません。が、現在の地図は極限まで正確なものばかりです。それでもカンペキで正確な地図がほしい! という方は地球儀という選択肢もあります。コンパクトながら各国の面積、距離、角度、方位を球体のまま示した地球儀であれば、二次元の地図よりずっと正確になっているでしょう。
国旗よみがな付き万能地球儀
地図っていろいろあるんですね。迷わない航海にはメルカトル図法による地図、地図上の人口密度など表現するならドットマップ、気候変動を知りたいならメッシュマップなど、地図は見るだけでなく様々な活用法があります。
たとえウソだらけの地図でも、メルカトル図法のように目的によっては最高級に使える神アイテムになるのです。このような地図の使い方について詳しく記されている参考書が手元にあればとても助かりますね。
プレゼン、発表会などの資料作りに最適
メルカトル図法は角度だけが正しい地図です。この地図を持ち出してミサイルの射程距離を同心円状に表示するのは間違いもいいところなので騙されないようにしましょう。まあ、そんな間違いが起こるわけないと思いますけどね。
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