
狩猟免許だけではクマを撃退できない!? 鳥獣保護法や銃刀法はどう関係するの?
2023年はクマ出没のニュースが多く見られるようになりましたね。
今年は暖冬になり、作物不足のクマが餌を求め人里へ降りてくるパターンが多かったようです。冬眠にも影響があり、2023年は11月時点すでにクマによる人身被害が過去15年間で最多を更新しています。
動物保護、作物や人名への被害など議論がある話題ですが、環境省はクマを指定管理鳥獣に含める検討を開始するなど議論が進行しています。
クマはとても大きく、おおよそ人が素手で叶う相手ではありません。通常は猟銃を持った漁師により捕獲や狩猟が行われるのですが――ここでひとつの疑問がありますよね。

狩猟免許ってどうやって取るの?
猟師になるのはどうすれば良いのでしょう? 免許の取得方法は? 銃刀法でどう扱われるのでしょうか? どうやって保管し、どう使えばいいのでしょうか?
猟銃免許に関するわかりやすい解説をしていきたいと思います。
猟銃免許の取得方法は? 費用や補助金制度はあるの?

猟銃免許は『環境省が管轄し各都道府県知事が交付する国家資格』です。
猟は『鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)』をもとに整備されています。猟銃を持つ場合、これとは別に『銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)』などの法律も関わりますね。
ひとことで狩猟免許といっても、同じ国家資格である車の運転免許と同じようにいくつかの種類があります。
・網
むそう網
はり網
つき網
なげ網
・わな
くくりわな
はこわな
はこおとし
囲いわな
・第一種銃猟免許
装薬銃
・第二種銃猟免許
空気銃
※ コルク発射は除く
銃による猟は『第一種猟銃免許』ですね。これらの免許を取得するには、都道府県知事が実地する狩猟免許試験に合格する必要があります。日程や会場などは各都道府県のホームページに公開されているので、アナタがお住まいの都道府県をぜひチェックしてみてください。以下はわたしのふるさと『栃木県』の令和5年度狩猟免許試験です。
また、地元の猟友会などで狩猟免許対策の事前講習会を任意で受講することも可能です。狩猟免許は国家資格であり、車の運転免許と同じような感覚でこういった講習も受講できるのですね。
環境省
野生鳥獣の保護及び管理に関しては こちら
栃木県
令和5年度 狩猟免許試験については こちら
狩猟免許取得手順については こちら
栃木県猟友会
令和5年度 狩猟免許試験事前講習会については こちら
どういう試験をするの? メガネでもおっけー?

狩猟免許の申請は各都道府県が指定した部署に申請書類を提出します。おおくは森林事務所や林野庁管轄の事務所であることが多いですね。
車の免許取得時とおなじように専用の申請書類、本人確認用書類、精神疾患や薬物中毒でないことを証明する診断書など書類を提出し、都道府県が指定した会場にて試験が行われます。
試験は以下のように分けられています。
・知識試験
狩猟関連の法律を熟知しているか
猟が許可される鳥獣を見分けられるか
取得したい猟具の取り扱いを把握しているか
・適性試験
視力、聴力、運動能力等に問題ないか
・実技試験
猟具の判定、架設(わな等の設置)や銃器の操作が適切か
距離の目測や鳥獣判定が適切か
狩猟免許はメガネでも受験可能です。その場合、車の運転免許と同じように狩猟を行う条件として付け足されます。
試験内容は受験した猟具によって異なり、たとえば銃猟を選択した場合、網やわな猟の実技などは行われません。2023年12月1日現在、日本では26種の鳥、20種の獣が狩猟鳥獣に定められており、それら以外を狩猟することは禁じられています。なのでこれらを画像で見分けるテストが実施されます。また、場合によって都道府県知事が狩猟を禁止する場合もあります。
問題形式も車の運転免許と同じような選択問題になります。狩猟免許は教習所で筆記試験を鍛えるという手段がありません。また車の運転免許のようにややこしい問題文が多数登場するので過去問や例題集などでしっかり経験を積むとより突破率が上がりそうですね。
免許を取得したら銃ももらえるの?

猟銃は別途自身で用意する必要があります。また、日本では銃の所持が禁止されているので最寄りの警察署(生活安全課)へ赴き銃の所持許可を得なければなりません。警察に必要書類を提出し、講習会と射撃講習・技能検定を受けてから銃所持の許可を各都道府県の公安委員会へ申請しましょう。
講習はおおむね月に1,2回行われます。受講後の試験に合格すれば認定証明が交付され、銃を所持するための準備が整います。ちなみに許可申請にも書類を準備して提出する必要があります。銃刀法があるとはいえアッチコッチにたらい回しされてなかなか手間のかかる作業ですね。
必要な手続きを完了させ、予め申請しておいた銃をやっと手に入れることができますが――銃はけっこう高いです。かんたんに調べてみましたが最も安価な中古銃でも3万円台。通常の価格帯は新銃20万円台からという手を出しにくい領域。まあ、命を扱う道具と考えれば逆に安いものなのでしょうか。
各自治体から補助金が出ます
自治体によっては狩猟免許に関わる諸費用の負担を補助してくれる制度が設けられています。たとえばわたしのふるさと『日光市』では、以下のような補助制度が用意されています。
・全額補助
狩猟免許、猟銃等所持にかかわる各種手数料、診断書料
新規猟友会会費、各種保険料
・最大半額補助
猟銃等購入(1丁、上限15万円)
猟銃保管庫購入(1台、上限2万円)
これらは各都道府県、市町村のホームページで確認することができます。ある程度補助してくれるとはいえ、さすがに自腹で猟銃購入は経済的に厳しいですね。狩猟が金持ちの道楽と言われる理由がわかる気がします。
狩猟免許は各種手続きの手数料だけでなく、保健や猟友会の所属費用もかかります。公的機関から要請を受け狩猟をすると報奨金がもらえますが、それを加味したとしても狩猟いっぽんで食べていくのは難しいでしょう。
銃を撃つ感覚を味わうだけでも――という方は実弾を使わない銃をご検討ください。
日光市
狩猟免許にかかわる各種補助金制度は こちら
猟友会ってなに?
YouTubeチャンネル、大日本猟友会:投稿動画より
猟友会は『狩猟事故の防止、マナー向上、その他狩猟関連に関わる一般社団法人』です。国認定の組織で、実際に鳥獣が出没した場合警察などと協力して捕獲活動をすることもあります。
猟友会は狩猟免許を取得した方が所属し、新たな担い手の育成にも努めているようです。ベテランが新人を指導したり、Webサイトや雑誌などで情報発信をしたり、動物愛護活動や狩猟のみでなくクレー射撃の大会参加や主催など幅広く活動しているようですね。
猟友会は『大日本猟友会』を本部として各都道府県の支部、場合によってさらに各地域の支部があります。狩猟免許の所持者は必ずしも猟友会に加入する必要はありません。また必ず地元地域の猟友会に加入しなければならないわけでもありません。が、猟の手間や資金などモロモロの問題で加入しない選択肢は実質無いでしょう。
狩猟免許を持ってない人が狩りをする方法
YouTubeチャンネル、ふく屋ちゃんねる:投稿動画より
法律により禁じられた狩猟方法があります。
・禁止される事項の例
指定された鳥獣類以外の狩猟
日の出前、日没後の狩猟
狩猟期間外の狩猟
10月15日 ~ 翌年3月15日まで狩猟可能(北海道を除く)
特別な保護地域の狩猟
爆発物、劇薬などを用いた狩猟
禁止指定された銃・わな類の使用
矢、犬、キジ笛、テープレコーダー等を用いた狩猟
狩猟方法は細かく指定されていますが、逆に書けばそれ以外は“狩猟”にあたらないということですね。
パチンコ、鷹狩、あるいは素手などは狩猟免許とは別で、これらは上記期間、区域、鳥獣であれば県知事の許可なく行うことができるようです……ただし素手でクマと戦おうなどとは冗談でも考えないでください。命を粗末にするものではないでしょう?
環境省
狩猟の禁止事項に関しては こちら
ちょっとした縁で、知り合いに狩猟免許を持っている方がいます。その人によると、狩猟免許をもつ多くの方は定年を迎えた年配の方であり、もっぱら趣味で取得している場合が多いようです。
その方は年配の男性ですが、最近は若い女性が取得する例が多く、実業系高校で学び取得するんだと喜んで語っていました。
昨今、狩猟免許所持者が減少傾向にあるようです。とくに第一種猟銃免許をもつ人材が激減しており、多くの関係者が頭を悩ませているようですね。
もし経済的に余裕があり、狩猟に興味があるのでしたら趣味のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか? ――アナタの人生に新しい刺激が誕生することを願っています。
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