【宇宙】”月面着陸”に成功した人数、何人か知ってますか?【月】

YouTubeチャンネル、NASA:投稿動画より

“政治と金” “夢と希望” ぜんぶつまった”月”への探究

 夜空に輝く。アナタにはどのような姿に見えるでしょう?

 うさぎの餅つき? ライオンが吠えている姿? 大きなハサミをもつカニ? それとも女性の横顔だったり木の下で休む男性の姿でしょうか? ――これらはすべて国によって異なる月の見え方です。遠い存在だからこそ、月は様々な姿をイメージさせてくれました。

 遠い存在だったはずの月。しかし人類は飛行機を開発し、ロケットを開発し、ソビエト連邦とアメリカの間ではじまった冷戦により宇宙開発は加速し、最終的には12人の人間が月面着陸に成功しています。

 宇宙開発のなかでも最も身近な星である月。人類は月にどのようなアプローチをしてきたのでしょうか?

https://amzn.to/3DpfbMX

ソビエト連邦とアメリカの月面着陸競争

 人類は1800年代から宇宙進出を夢みていました。アメリカの天文学者『ウィリアム・リーチ(William Leitch)』は自身の著書でロケットによる宇宙飛行を提案しています。ちょっとしたお値段になりますが、これが記された彼の著書『God’s Glory in the Heavens』は今でも手に入れることができます。

 歴史的価値が非常に高い1冊

Bitly

 1900年代、宇宙開発はドイツが先行していましたが第2次世界大戦に突入。アメリカがドイツから鹵獲したロケットを宇宙研究に利用。この時多くの科学者がアメリカに亡命した影響か、この後はアメリカが宇宙開発に大きく台頭することになります。宇宙開発が本格化するのは1950年代のことでした。

冷戦

 宇宙開発は軍事関連技術に転用できます。宇宙という未開拓の領域に手を伸ばす意義は大きく、また戦後疲弊しきった民衆へ夢を与えるという意味でも重要な任務でした。

 1957年にソビエト連邦がはじめて大陸間弾道ミサイル(ICBM)のミッションを行い、さらに史上初の人工衛星打ち上げに成功。この時はじめて宇宙に進出した哺乳類は『ライカ』でした。残念ながら命を落としたライカですが、彼女の牌は今でもモスクワに存在します。

 意外と知られていませんが、宇宙開発をリードしていたのはアメリカではなくソビエト連邦なのですね。月面着陸にはじめて成功したのもソビエト連邦の『ルナ2』です。着陸というより衝突ですが、ルナシリーズは太陽風の発見月裏面の写真撮影など国際的にも高い評価を受けています。

アポロ計画 ~人類宇宙へ~

 月は地球からの距離が最も短いことから宇宙開発をする上で格好の的でした。数々の動物実験を経て人間が宇宙進出を果たしたのは1961年のこと。史上初の有人宇宙飛行を成し遂げたソビエト連邦のパイロット『ユーリ・ガガーリン(Yuri Alekseevich Gagarin)』の言葉「地球は青かった」は有名ですね。ちなみに、実はこの言葉が知られているのは日本だけで、世界的には彼が宇宙に飛び立つ際発した「さあ行こう!(Поехали!)」のほうが有名です。

 この後も宇宙開発をリードしたソビエト連邦ですが、1969年に世界が震撼するニュースが飛び交いました。

 アメリカの宇宙船『アポロ11号』の乗員が月に降り立ったのです。初めて月面に足を乗せた『ニール・アームストロング(Neil Armstrong)』の名言は有名ですね。今でもアメリカ航空宇宙局(NASA)のサイトで確認できます。

アメリカ航空宇宙局(NASA)
 月面着陸時の通信記録(音声データあり)は こちら(英語)
 ※ 名言は[ 109:24:23 ]時間のもの

 その後、アメリカは世界唯一となる12名の宇宙飛行士を月に送り込みました。以下が月に降り立った12人の乗員リストです。

アポロ11号(1969年7月20日 ~ 21日)
 ニール・アームストロング(Neil Armstrong)
 バズ・オルドロリン(Buzz Aldrin)
アポロ12号(1969年11月19日 ~ 20日)
 ピート・コンラッド(Pete Conrad)
 アラン・ビーン(Alan Bean)
アポロ14号(1971年2月5日 ~ 6日)
 アラン・シェパード(Alan Shepard)
  最年長記録保持者(47歳80日)
 エドガー・ミッチェル(Edgar Mitchell)
アポロ15号(1971年7月30日 ~ 8月2日)
 デビッド・スコット(David Scott)
 ジェームズ・アーウィン(James Irwin)
アポロ16号(1972年4月21日 ~ 24日)
 ジョン・ヤング(John Young)
 チャールズ・デューク(Charles Duke)
  最年少記録保持者(36歳201日)
アポロ17号(1972年12月11日 ~ 14日)
 ジーン・サーナン(Gene Cernan)
 ハリソン・シュミット(Harrison Schmitt)

技術が進歩した今、なぜ月面着陸をしないの?

 彼らが月に降り立ったのは1970年代のことです。そして今は2023年。だれもがスマホを片手に世界中と交流できる時代です。ロケットの素材だってパワーアップしてるのに、なぜ半世紀もの間月面着陸を試みる国がないのでしょうか?

 最も大きな理由は単純に『コスパがわるすぎるから』です。アポロ計画の費用は254億ドルとされ、これは2021年時点のドル換算にすると1,640億ドル。日本円で2兆円を超える(2,097,314,000,000円)お金が注ぎ込まれたことになります。今の時代「ほかの事はぜんぶほっといて月だけに力を注ぎます」なんてできませんよね? ――冷戦時代は月面着地の意義が大きかったからこそあそこまで心血を注ぎ込むことができたのです。

 国家予算レベルのお金が開発資金に当てられていましたが、現在は後述の理由もあり月面着陸だけのためにこれだけのお金を使うことはできないでしょう。

HATHITRUST(学術、研究図書館関係の非営利団体)
 当該データは こちら(英語)

 次に大きな理由は『他にやることがあるから』です。宇宙にはまた多くの謎があり、観測されていない多くの天体があります。それらをすべて投げ捨てすべての費用を月だけに注ぎ込むなんてもったいなと思いませんか?

 火星や太陽などの探査機、国際宇宙ステーションの開発、ブラックホールなど未知の天体の研究――国際協力が重要になる時代、月だけにかまってられないのです。

 ケネディ大統領の「月に行くことを選択した」発言で燃えに燃えたアメリカでしたが、目標を達成しもはや政治的意義が薄まった瞬間、それらの熱は消え失せました。予算的な問題に加え、1970年代の技術も今は使われなくなり、2023年現在の技術を月面着陸に応用するノウハウもいちから築き上げる必要が出てきます

 こうして下火になった月への旅ですが、近年は国際的にふたたび月が注目されています。月面着陸どころか人間が住める月面基地を設置しようという計画まで立ち上がっているのです。

月面探査の今

YouTubeチャンネル、JAXA | 宇宙航空研究開発機構:投稿動画より

 月面着陸の夢は冷戦の産物でした。しかし現在はアジア諸国、インド、イスラエル、ヨーロッパ圏など多くの国が宇宙開発に参入し、民間企業も宇宙開発に着手しており激しい競争が始まっています。

 アポロ計画から50年経った2019年は激動の年になりました。まずは中国が『嫦娥(じょうが)4号』の月面着陸へ成功。これは月の裏側への着陸を成功させた史上初の月面探査機です。続けてイスラエルが『ベレシート』、インドが『チャンドラヤーン2号』をそれぞれ月に発射。これらの計画は成功に至らなかったものの両国の技術力の高さを伺わせるものでした

 2020年には中国が『嫦娥5号』を打ち上げ月面に着陸。サンプルを地球に持ち帰ることに成功します。また、国際宇宙探査協働グループ(ISECG)の働きかけで世界では持続可能な月探索が推進されており、アメリカは新たな月探査プログラムとして『アルテミス計画』を発表。有人探査と月面基地、将来的に有人火星探査も視野に入れ各国と共同進行しています。

 日本もアルテミス計画に参加していますが、日本独自ではどのような活動をしているのでしょう?

JAXA.exploration
 国際宇宙探査センターに関する情報は こちら
 月面探査ロードマップは こちら

日本の月面探査機

YouTubeチャンネル、JAXA | 宇宙航空研究開発機構:投稿動画より

 日本の宇宙開発は『宇宙航空研究開発機構(JAXA)』が担っています。そのJAXAが開発した月面探査機『かぐや』は2007年から2009年にかけて数多くの情報をもたらしてくれました。

 日本の計画では、2010年時点で『2020年に精密な観測機器を搭載した探査機の月面着陸』を計画。その実証実験として2015年無人探査機を月面着陸させる計画を立てました。その結果生まれたのが技術実証用の探査機『OMOTENASHI』と『SLIM』です。

国立国会図書館
 世界、日本の月面探査については こちら

OMOTENASHI と SLIM

 それぞれの正式名称は以下の通りです。日本語訳はわたしが勝手に名付けた(直訳)もので正式名称ではありません

Outstanding MOon exploration TEchnologies demonstrated by NAno Semi-Hard Impactor
 → ナノセミハードインパクターを実証するためのスゴい月面探査機
Smart Lander for Investigating Moon
 → 月探査用スマートランダー

 インパクターランダーも『天体表面に着陸するための着陸船』を指します。ただしインパクターは着地というより衝突的な意味を含めています。つまり、両方とも実証用に作られた月面着地用の探査機ということですね。

 OMOTENASHIはハードインパクター。つまりとんでもないレベルの衝突を緩衝材で吸収する技術の実験も予定されていました。

OMOTENASHI

 2022年11月16日アメリカ航空宇宙局(NASA)開発のスペースシャトルに相乗りし、JAXAが開発したOMOTENASHIが地上を飛び立ちました。が、打ち上げ直後から通信できないというトラブルに遭遇。その後回復することができず月面着陸は断念。しかし充電できる可能性があるということで運用自体は続けられています

 なぜOMOTENASHIの通信が途絶えたのか、なぜ月面着陸を果たせなかったのかなど、原因究明についてはJAXAの公式YouTubeチャンネルで細かく語られています。

JAXA
 OMOTENASHI公式ページは こちら
 公式YouTubeチャンネルは こちら

SLIM

 小型探査機であるSLIMは、月クレーター『神酒の海』近くを着陸目標として計画が進行しています。SLIMが掲げるテーマは以下の通りです。

・小型探査機による月への高精度着陸技術の実証
・軽量月惑星探査機システムの実現による高頻度化

 2015年時の計画では2018年中に打ち上げを予定していたのですが、度重なる延長で2023年1月現在も打ち上げられていません。

文部科学省
 当該資料は こちら

https://amzn.to/3XHBpRH

SLIMに搭載された最新技術

YouTubeチャンネル、JAXA | 宇宙航空研究開発機構:投稿動画より

 日本初の月面探査ミッションということで、SLIMには日本が誇る最新技術が詰め込まれています。

 顔認証システムを応用し月面の凹凸を認識。かぐやが収集したデータをもとに現在位置を判断できます。月の画像を撮影しその都度位置を修正。こうすることでより良い着地点を確保できますね。もちろん、落下中の障害物検知技術も用意してます。

 無事着陸しても、月表面はゴツゴツした岩場ながらとても柔らかい玄武岩でできています。そこで、SLIMは様々な企業の協力のもと、月面移動用の探査車ローバを開発、搭載しています。

かぐやが発見した穴へ

 度重なる延長がされたSLIMですが、現在神酒の海を目指し開発が進んでいます。その近くにはかぐやが発見しニュースにもなったマリウス丘の穴『マリウスヒルズ・ホール』があるので、もしかしたら内部のより精密な研究が行われるかもしれません。

 月はジャイアント・インパクトで生まれた説が有力ですね。月のクレーターにある岩石の成分を調べれば新たな発見が生まれ、この説が正しいのか判断する材料になるでしょう。どんなサンプルが採取されるか楽しみですね!

JAXA
 SLIM公式ページは こちら
 月面ローバに関する情報は こちら
JAXAキッズサイト、ウチュ~ンズ
 月面探査の歴史については こちら

民間企業の宇宙進出

 2022年12月11日。日本の航空宇宙企業『ispace』のチームが開発した『HAKUTO-R』が月へ旅立ちました。2023年1月時点で順調に計画が進んでおり、現在月面着陸に向けて進行中です。2024年月面探査用に打ち上げる予定も組み込まれています。日本にはまだまだ宇宙進出を目指す企業がたくさんあるので今後が楽しみですね!

 夜空には様々な星が輝いていますが、それだけでは暗い夜を照らすことはできません。月が太陽の光を反射すると、満月時は懐中電灯すらいらないほど明るくなります。

ispace
 HAKUTO-Rに関しては こちら

 民間企業にとって宇宙開発はビジネスチャンスでもあります。たとえば上記企業ispaceは民間保険企業と協力し月保険なる事業さえ計画しており、実際にHAKUTO-Rにも月保険がかけられています。こういった宇宙ビジネスは技術の進化とともに生まれ続けていくでしょう。アナタもぜひ月の土地権利書を購入してみてはいかがでしょうか?

https://amzn.to/3D0G3CB

コメント

タイトルとURLをコピーしました