太陽光を地磁気が遮断するから地球はまもられる
方位磁石が常に南北を示す理由は『地球が一種の“磁石“の性質を持ち、北と南をそれぞれ“極“としているから』です。この地磁気により地球は太陽からくる強力な電磁波である『太陽風』の被害を受けずに済み、またオーロラのような美しい天体現象を見ることもできます。
今回は地球がもつ『地磁気』とはなにか? 意味や地磁気をもつ理由などをわかりやすく解説していきましょう。
地磁気とはなにか? 用語や存在する理由などを解説
地球は一種の磁石のような性質を持っており、現在北極近くが『S極(South)』、南極近くが『N極(North)』となっています。少しややこしいですが、磁極の命名は『引き寄せられる極』となるため地球を磁石として見た時は北がS極になります。どうしてこのような地磁気が発生するのでしょうか?
地磁気が生まれる理由
地球の中心では、約5000度以上もある『核』が存在するとされます。地球の核は主に鉄を主成分とした金属であり、中心は高温ながら強い重力に押しつぶされ個体となった『内核』。その外側に重力の影響が少なく液体化した『外核』があります。
この外核は液体として流動しており、外核から内核側へ、内核から外核側へ金属の対流運動が電流を生み出し地磁気を生み出すのです。これは『ダイナモ理論』と呼ばれています。
内部リンク
地球の核、ほか太陽系天体については こちら
地磁気が逆転する
対流とは『密度の重さを比較し、軽いものが上に、重いものが下にいく流れ』のことですので、地球の中心では絶えずそのような流れが繰り返されています。しかし、これらは機械のように決まった動きをするわけではありません。様々な流れによって地球の地磁気は絶えず変化います。
国土交通省
国土地理院による地磁気の予測は こちら
地磁気の逆転は地球の歴史上何度も発生しています。最近の逆転は約78万年前に起こり、逆転にかかる時間はおよそ数千年。その後数万 ~ 100万年ほどは同じ向きを保つと考えられています。
ほか、対流によって地磁気が変化するのですから、たとえば『地球のあちこちにS極とN極が乱立する』という状況も考えられます。今この瞬間も逆転に向けて動き出しているのかもしれませんね。
地磁気の関連用語と役割
※画像は気象庁:地磁気観測所当該ページより
地磁気は宇宙空間のなかに大きく広がっています。その地磁気が及ぶ範囲を『地球磁気圏』と呼びます。地磁気は『電荷』をもつ物質を動かす力をもっているため、太陽から降り注ぐ大量の高エネルギー粒子である『太陽風』が地球に突入することを防いでいます。
太陽風が地球磁気圏とぶつかると、そこに『衝撃波面』が生まれます。急速に減速するため衝撃波が広がることによって生まれる面です。そのまま磁力線に沿いつつ進み、地球を取り囲むように広がる磁力線の領域『バンアレン帯』にはたくさんの太陽風粒子が存在します。多くは磁力線に沿って進み地球を避けるのですが、わずかな量が北極や南極で『オーロラ』となって表れます。
太陽風の影響によって地磁気は大きく乱されています。太陽側の地磁気は潰されたような形になり、裏側は逆に長く引き伸ばされています。
地磁気がない地球の未来
もし、この地磁気がなかった場合、地球は『火星』のような星になっていたと考えられます。地磁気がほとんど無い火星では、太陽風が火星の大気を剥ぎ取っていく現象が観測されるのです。
地磁気があるからこそ、地球は潤沢な大気をもつことができ、紫外線を緩和することでたくさんの生命を育む蒼き星となりました。これらは講談社が出版するDVD付録の『動く図鑑 MOVE』シリーズでわかりやすく解説されています。とくに『科学のふしぎ』では今回紹介したような地磁気に関することから、気象、生物、恐竜、電気、物理、宇宙など幅広い分野をフルカラーの図で解説されており、子どもだけでなく大人の方にもおすすめできる1冊です。すべての分野にて博士号をもつ方など、その道のプロが監修しているので詳しいことまでちゃんと書かれています。
地磁気によってあらわれる現象
地磁気によって表れる現象で最も有名なのは『オーロラ』でしょう。カナダや北欧、北極に南極など極地近くで観測される神秘的な『光のカーテン』です。稀にですが北海道でも観測できるようですね。ちなみに土星や木星でも観測される現象です。
オーロラは、太陽風に含まれる電気を帯びた粒子が、地球の大気に衝突することで発生します。地球磁場の磁力線に誘導されることで発生するので、磁力線が大気と空間を共有できる北極や南極付近でみられるわけです。
オーロラは、地球から伸びるカーテンのように、宇宙空間から見るとまるいドーナッツ状に発生します。これは『オーロラ帯』と呼ばれ、地球の磁力線を目視で確認できる貴重な現象とも言えるでしょう。
オーロラの色
オーロラ発生の理由を深堀りしていきましょう。太陽風の素粒子である『電子』が『酸素原子』とぶつかることで酸素原子のエネルギーが高くなります。しかし、酸素原子はそのエネルギーをホールドできる力はないので短時間でエネルギーを放出します。
放出するエネルギーとはすなわち『光』のことですが、光は色(周波数)によってエネルギーが異なるので、エネルギーが弱ければ『赤』、強ければ『紫』というように色の変化でエネルギーの量を知ることができるのです。
ほか、電子が何にぶつかるか、どの高さでぶつかるかによっても色が変わります。以下にまとめてみましょう。
・赤
衝突スピードが遅く、エネルギーが低い電子
主に上空 250~500km の高度
酸素濃度が低い場所で電子と酸素原子が衝突
・緑
衝突スピードが早く、エネルギーが高い電子
主に上空 100~250km の高度
酸素濃度が高い電子と酸素原子が衝突
・青
酸素ではなく窒素原子との衝突が主
主に上空 90~100km の高度
赤の光もまじり、人にはピンクや赤紫が混ざって見える
眼前に広がるオーロラを見た時は「すごいキレイ!」と叫びたいところですが、低い高度で見られるオーロラは高エネルギーであるため長居しないほうが良いかもしれません。
オーロラはローマ神話に登場する女神の名前で、17世紀の天文学者『ガリレオ・ガリレイ』が名付けたとされます。夜空を彩る鮮やかなオーロラの世界。一度でもこの目で見てみたいものですね。
“ToDo”チャレンジ
①天体観測をしよう
動画、プラネタリウムで体験も楽しいですよ
②地球の磁場について勉強しよう
自由研究の題材にもなりますね
③オーロラを見に行こう
極地に近い国への旅行はいかがですか?
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