【最新理論】ビッグバンのわかりやすい解説【暗黒物質】

ビッグバンは2度あった!? ビッグバン理論の根拠を解説します

 ビッグバン理論は『宇宙の起源は超高温高密度の塊だった』という説です。

 今からほんの100年前、天文学者は『宇宙は絶対的な存在か、それとも膨張や収縮をしているのか?』というテーマで激しい議論を繰り広げていました。

 かの有名なアインシュタインが、有名な一般相対性理論のなかで定常宇宙を実現させようとして宇宙定数を用意したほどです。しかしハッブル宇宙の膨張を発見するなど多くの証拠が見つかったことにより、現在は「現在の宇宙は加速膨張し続けている」というのが定説となっています。

 風船を膨らませているイメージをしてください。風船はすべてが等間隔かつ均等に膨張しますよね。宇宙はまさにそのような感じで膨張しています。逆にいえば時間を巻き戻せばすべてが1点に集約するのではないかと考えることもできます。

 はじめはとんでもなく高温で凝縮された高温の塊だった。ビッグバンとはどういった理論なのでしょうか?

ビッグバン理論の概要や根拠をわかりやすく解説

 宇宙の膨張はよく風船をふくらませるイメージで紹介されます。全体的に均等に風船内の空間が膨らんでいきますが、宇宙は風船とは異なり中心が無いことに注意しましょう。

 どちらかというと『無限に続くゴムを引き伸ばすイメージ』をしたほうがわかりやすいです。すべてが等間隔に、どの場所を中心とすることもなくありとあらゆる時空が引き伸ばされています。

 時間経過とともに膨張しているということは、時間を逆戻りさせたらすべて1点に集まりそうだというのは想像しやすいですね。2015年欧州宇宙機関(ESA)が「宇宙の年齢は138億歳である」という発表をしているように、多くの学説では137~138億歳くらいと予想されています。

 時間を巻き戻したら1点に集約するのはわかりますが、ではなぜその1点から現在のように膨張した宇宙になっているのでしょうか?

ビッグバン理論を証明する証拠

 1900年代、天文学者の間で宇宙は不変か否かが盛んに議論されていました。どちらかといえば不変とする説のほうが隆盛で、天才と呼ばれたアインシュタインも「この世界は定常宇宙だ」という信念から、宇宙が変化する要素をゼロに調節する宇宙定数を設けたことからも、当時は定常宇宙論が優勢だったということがうかがえるでしょう。

 しかし、今では宇宙ははじめ小さな塊で、大爆発によって誕生したというのが当たり前ですよね? もはや学校で習うレベルの常識となっています。なぜなら、これから紹介する以下の要素こそ、ビッグバンの有力な証拠とされているからです。

ハッブル-ルメートルの法則

 アインシュタインは定常宇宙論者でしたが、彼が提唱した一般相対性理論は計算結果により定常宇宙にも膨張や縮小する宇宙にもなり得るものでした。それらをもとに、ソビエト連邦の物理学者『アレクサンダー・フリードマン(Alexander Friedmann)』など少なからず膨張する宇宙モデルを提唱する学者はいました。彼は他の科学者より先駆けて膨張宇宙を提唱したので、ビッグバン宇宙論は別名『フリードマン宇宙論』とも呼ばれています。

 1927年にベルギーの物理学者『ジョルジュ・ルメートル(Georges Lemaître)』。そして1929年に天文学者の『エドウィン・ハッブル(Edwin Hubble)』によって、宇宙の膨張に関する論文が発表されました。それらを要約すると以下のようになります。

・遠い距離にある星ほど速い速度で遠ざかっている
・遠ざかる速さは、その星の距離と比例する

 すべての星がまるでゴムを引き伸ばされたかのように互いに遠ざかっていたのです。その証拠として、彼らは以前から知られていた渦巻星雲(現在の渦巻銀河)赤方偏移を挙げました。

 赤方偏移は『光が引き伸ばされて赤色に変色する現象』ですね。光は波長が長いほど(人にとって)赤色に見えます。これは音に当てはめたドップラー効果でよく説明されていますね。

 これらははじめハッブルの法則と呼ばれてきましたが、2018年の国際天文学連合総会にて『ハッブル-ルメートルの法則』と呼ばれるようになりました。

PANS
 ハッブルが発表した論文に関しては こちら

宇宙マイクロ波背景放射

引用画像:NASA航空宇宙局、ゴダード宇宙飛行センター”https://lambda.gsfc.nasa.gov/product/cobe/”

 時間を遡るとすべての時空が1点に集まる。それはつまり宇宙にある全エネルギーが1点に集約していたことになります。

 ビッグバンは、そのエネルギーが大爆発したことで現在の宇宙になったとする説でしたね。そうすると、爆発したエネルギーは全方向にほぼ均等に広がっている必要があります。ビッグバンの正しさを証明するには、全宇宙にほぼ均等に分布した大爆発の痕跡を見つけることがカギだったのですね。

 その証拠こそが『宇宙マイクロ波背景放射(輻射)』だったのですが、これは偶然により発見されたものでした。

 1964年、アメリカの物理学者『アルノ・ペンジアス(Arno Penzias)』、『ロバート・ウィルソン(Robert Wilson)』両氏は当時ベル研究所に勤務しており、当時アンテナで受信した電波のノイズを除去する仕事をしていました。

 地球上にはラジオ放送、レーダー、無線、太陽などあらゆる電波が走っています。それらをすべて除去していくと、どうしても特定の周波数だけ除去できないことに気づいたのです。

 ありとあらゆる方角から降り注ぐナゾの電波。はじめは機械のバグやアンテナの物理的問題と考え、受信機の巣をつくっていた鳩を追い出したり、フンを片付けたりなどもしていました――が、特定の電波ノイズを除去できません。

 これはもう全宇宙からあらゆる方向に降り注ぐ電波としか考えられませんでした。

 全宇宙に広がる同じ波長の電波。それを説明するには宇宙が大爆発を起こしてイッキに拡大されたこと。この発見により、両氏は1978年ノーベル物理学賞を受賞しました。

ベル研究所
 公式ページは こちら(英語)

ビッグバンの由来と問題点

 1900年代後半まで続いた『宇宙は変化しているのか?』という議論は、これらの証拠によって解決しました。

・ハッブル-ルメートルの法則
・宇宙マイクロ波背景放射(輻射)

 他にもビッグバン理論をもとに計算すると、現在宇宙に存在する元素の割合と一致するなど多くの証拠が揃っています。ただ、ビッグバン理論を提唱する天文学者たちは「これはビッグバン理論です」と言っていたワケではありません。

 では、なぜこれらが大きなバン! 理論と呼ばれるようになったのでしょう?

 1949年、イギリスのラジオ放送BBCラジオにて、イギリスの天文学者『フレッド・ホイル(Fred Hoyle)』が宇宙の始まりに関する理論を紹介する際に放った言葉が語源となります。彼が定常宇宙論を支持していたことから、これは軽蔑的な意味合いで発言したとされていますが、実際そのような意味はなく、彼自身後に否定しています。

 意外なネーミング由来ですが、それらは徐々に浸透していき今日ではあたりまえのように使われていますね。一節では、ソ連生まれアメリカ育ちの物理学者『ジョージ・ガモフ(George Gamow)』がビッグバンという響きを気に入ってよく使ったとされています。

 証拠が見つかり浸透していったビッグバン理論ですが、実はこの理論も完全ではなく、いくつかの疑問や問題点が残されていました。

・なぜ宇宙には多様性があるのか?
・宇宙に果てがあるのか?
・高温高密度のエネルギーが存在するそれ以前はどうなっていた?

 宇宙マイクロ波背景放射はビッグバンの証拠になりますが、その分布には10万分の1度程度の誤差があります。小さいように見えて、宇宙規模で見ると大きな誤差です。本当に均一した大爆発であれば、この宇宙にはどこを見ても同じ比率、同じようなバランスで宇宙に分布していたでしょう。

 わたしたちの宇宙は温度のムラがあったからこそ、あっちに銀河があったりこっちにブラックホールがあったりするのです。なぜムラがあるのか? いろいろな説は生まれているものの、まだ完全に解明されていません。

 さらに、ビッグバンが真実だとすると宇宙には果てがあるということになります。ではその最果てはどうなっているのでしょう? その先に行けない壁があるのでしょうか?

 ビッグバンは高温高密度の塊が爆発したという理論です。しかしなぜそんなモノが存在したのかを説明できていません。この塊が誕生した理由こそ宇宙の原初になりますよね。

 宇宙ってロマンあるし興味あるけど難しい話ばかりで……ちょっと手が出にくい気持ち、ありますよね。けど宇宙に関するいろいろなことを図鑑つきでわかりやすく解説されていたらうれしいですよね?

 本間希樹氏の著書『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑 宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』は図鑑つきでわかりやすく解説されており、子どもにもオトナの方も楽しく安心して読み進められる内容になっています。おもしろすぎて眠れないので気をつけてください。

 著者の本間希樹氏は2018年ニュースになったブラックホール撮影に成功したプロジェクトチームの一員です。カラーでわかりやすく気になるアレをバッチリ解説。子どもから「〇〇ってなぁーに?」と聞かれてもすぐ答えられるってステキですよね。

深すぎてヤバい 宇宙の図鑑 宇宙のふしぎ

東京大学 宇宙理論研究室(UTAP)
 ビッグバンモデルに関しては こちら

ビッグバンは2度あった!?

YouTubeチャンネル、国立天文台:投稿動画より ダークマターについて

 まだまだナゾが多く残っているビッグバン理論ですが、こういった議論は活発に行われており、それらの問題を解決できそうな理論も多く発表されています。さらに、実は「ビッグバンは2度あった!」という説があることをご存知でしょうか?

 アメリカの理論物理学者『キャサリン・フリーズ(Katherine Freese)』、ドイツの素粒子物理学者『マーティン・ウィンクラー(Martin Winkler)』両氏は、宇宙に存在する暗黒物質に関する新しい理論を発表しました。

 それが『ダーク・ビッグバン(Dark Big Bang)』です。

 わたしたちの世界は目に見えている通常の物質のほか、目に見えない暗黒の物質でできています。目に見えないけど「そこに何かがある」と仮定して計算した結果辻褄が合う。宇宙にあるそういった物質は暗黒物質(ダークマター)と呼ばれています。

 通常の理論では、ダークマターもビッグバンによって誕生しています。しかし、両氏の考えでは、ダークマターはビッグバンとは別のビッグバンによって誕生したと主張するのです。

 彼らは、従来のビッグバンを『熱いビッグバン = Hot Big Bang』、ダークマターに関するビッグバンを『暗黒ビッグバン = Dark Big Bang』と呼んでいます。

ダークビッグバンのわかりやすい解説

 両氏はダークマターがもつ重力だけ相互作用する(ように見える)性質に目をつけました。ダークマターが本当にビッグバンで誕生したなら、もっと多くの相互作用と関係しているはずだと考えたのです。

 しかし、ダークマターは重力しか媒介しない。それはつまりダークマターがビッグバンで誕生しなかった可能性があると考えることもできますね。

 彼らはダークマターのビッグバンの流れを以下のように考えました。

① ビッグバンの初期に
  ダークマターの”“が生まれた
② 時間経過によりダークマターの場が崩壊して
  第2のビッグバンが起こった

 物質が相互作用するにはが必要です。わたしたちは時空という場があるからこそ存在できて、光を見ることができます。

 ダークマターに関しては、ビッグバンによりダークマター同士が相互作用するための場が誕生したとされています。ただし、こういった場は低く安定したエネルギー状態になりたい性質があるため、時間経過とともに崩壊し状態が変化。エネルギーを放出しそれが暗黒ビッグバンとなりました。

 彼らの発表によれば、暗黒ビッグバンは、従来のビッグバンから最長1ヶ月後に起こった可能性があります。宇宙が誕生してから現代までを考えれば一瞬にも満たない時間ですが、ビッグバンはわずか0コンマ数秒でドンと大きくなったり、様々な物質が誕生したりと多くのイベントがありました。

 そのなかでの1ヶ月後を考えると、まるで無限のような時間に思えるのではないでしょうか?

ダークマターを観測できるかもしれない

 もしダークマターのビッグバンが起こっていた場合、従来のビッグバンと同じような痕跡が残っているはずです。つまり宇宙マイクロ波背景放射のダークマター版があるかもしれないということです。

 ダークマターは重力のみ相互作用するので、その背景放射は重力波によるものですね。これが観測できた場合、重力に関するナゾが次々と明かされていくかもしれません。

 現在、わたしたちは間接的に重力波を観測できる技術力をもっています。今後の研究が進めば、もしかしたら宇宙全体に広がる重力波が観測されるかもしれませんね。

 ビッグバン理論は初期宇宙を説明できますが宇宙のはじまりを説明できる理論にはなれません。

 宇宙がどうやって誕生したのか? その有力な説として『インフレーション理論』がありますね。インフレーションはその後スムーズにビッグバンに繋げられるため、現在では「インフレーションによって宇宙がはじまり、ビッグバンによって爆発的に広がっていった」というのが常識となっています。

 ビッグバンを裏付ける証拠、それを覆す可能性を秘めた説など、科学者たちは今後も多くの理論を構築していくことでしょう。実際の観測で新しい事実がわかれば、そこからさらに真実へと近づいていくはずです。

 研究者の今後の活躍に期待ですね。

arXiv
 ダークビッグバンの論文概要は こちら(英語)
 ダークビッグバンの論文本分は こちら(英語)
内部リンク
 日本人が世界で初めて提唱した”宇宙のインフレーション理論”に関しては こちら

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