【心理学】黙読と音読ってどっちがいいの?【わかりやすい解説】

オトナの音読は効果がない!? 子どもにおすすめの読書法などをわかりやすく解説

 黙読と音読どちらのほうが優れているのか? これは多くの心理学者によって研究されておりすでに一定の結論が出ています

 アナタが本を読むとき、その本に書かれてる分野についてある程度理解がある。アナタ自身に読解力がある場合音読をする必要はありません。逆にまったく初めての分野や、読解力に不安がある場合は音読をしたほうがより記憶しやすくなります

 小学生のころ、わたしたちは国語の教科書をこれでもかというくらい音読させられましたよね……音読の順番が周ってくるのが苦手だった人も多いと思います。しかし言語情報が発展途上である子どもの場合、音読は言葉を話す、文字を声に出し耳で聞く、文字を順番に追うなどの点からとても有効的です。

 大人になるにつれ、細かく説明されなくとも文章を理解できるようになり、黙読によって理解できる箇所はサッと読み飛ばし、読み込みたいところや反芻したい部分だけ読み返せるようになれば、そのほうが時短になるため黙読のほうが効率が良くなります。

 黙読と音読にはそれぞれのメリットがあるのですね。いったいどういうことでしょう?

黙読と音読はどう使い分ければいい? それぞれのメリットと研究論文を紹介

 黙読と音読、いったいどっちのほうが効果が高いのでしょう?

 アナタは、音読は読解力を高めるとかワーキングメモリを鍛えるなんて言葉を耳にしたことがあると思います。事実、多くの研究で音読の効果が確認されており、とくに『子どもは音読をした方が良い』というエビデンスが揃っています。

 では黙読にはなんのメリットも無いのでしょうか? ――実は、わたしたちは大人になればなるほど黙読の必要性がないことを示唆する研究が多くあります。黙読と音読それぞれのメリットはなんでしょう?

黙読と音読 それぞれのメリットとデメリット

 両者を比較する前に、黙読と音読のちがいを確認しておきましょう。

黙読
  心の中で読む
音読
  に出して読む

 黙読はただ目で文字を追っていく作業です。それに対し、音読は文字を声に出して読み込んでいく作業が追加されます。たったそれだけでも両者の間では大きな差が生まれます。

 黙読はなんと言っても『時短』という要素が大きいでしょう。文章をいちいち声に出して読むと時間がかかり、ただ目で追って読み上げた方が断然読むペースが変わってきます。

 音読は文字をひとつひとつ『集中』して読み進めることができます。なので文章中の細かいニュアンスや著者の意図にまで思いを馳せることができるようになりますね。ほか、それぞれのメリット・デメリットをまとめてみましょう。

黙読のメリット
  時短になる
  音を出せない空間(図書館など)で読める
  読み返しや飛ばし読みんど汎用性が高い
黙読のデメリット
  文章を細かく読まなくなる
  理解しきれない部分が生まれやすい
音読のメリット
  内容を順を追って精読できる

  ワーキングメモリを活用できる
  読解力が向上しやすい
音読のデメリット
  時間がかかる
  音を出せない空間で読めない

 こう見ると、あまり黙読と音読の差は感じられないような気がしますね。しかし、音読にはひとつ重要な点があります。

 多くの研究で、音読は子どもの読解力向上に役立つという結果が報告されています。いったいどういうことでしょうか?

J-STAGE、高橋麻衣子氏
 読書に関するエビデンスは こちら

子どもに身に付けさせたい音読の効果

 黙読は読み飛ばしなどで速く読み進められますが、それが仇となり意味の理解が曖昧なまま過ごしてしまう場合があります。それに対し、音読は自分で声をだし、耳で確認できるため日本語を話す練習にもなり、耳で聞くことで複数の刺激を脳に与えることができ、より精密なイメージをつくることができます。

 この差はワーキングメモリ(作業記憶)が深く関わってきます。

 ワーキングメモリとは『情報を一時的に保存しておき、それらを利用して処理する能力』です。たとえばこういう課題はワーキングメモリが活用されます。

・3 × 12 の計算
  多くの人が『30 + 3 × 2』と暗算する
  → 3 × 10 を先にやり、メモリにその計算結果を保存する
・国境の長いトンネルを抜けると雪国であった ――の文章理解
  メモリにこれらの単語をつなぎ合わせることで
   ひとつのイメージを作り出せる

 音読はこういったイメージをほぼ強制的に作り出すことができます。対して黙読はこころの中で読むという行為でワーキングメモリをつくるため、音読よりもその力が弱く、他の雑音などが耳に入ってきた場合ごちゃごちゃしてしまうのです。

 アナタは音読のほうが場面がイメージしやすかったという経験ありませんか? それは音読によって様々な情報が頭に蓄えられ、より精密なワーキングメモリを形作ることができるからです。

黙読は音読より効果が低い?

 以下の文章を読み比べてイメージしてみてください。

① 犬が人に跳びついた
② 犬に人が跳びついた

 両者を比べると意味もシチュエーションも異なりますね。こういった文法の理解力は黙読より音読のほうが優れています。

 上記で解説したように、黙読は刺激が少ないので文章の処理が難しくなるのですね。これらの結果を見ると黙読より音読のほうが効果が高いように見えますが、実は読む人が充分な読解力をもっている場合は、黙読と音読の効果に差が無いことが明らかになっています。

 音読の効果は何でしたっけ? ――複数の刺激によって読解力が向上するのでしたね。ではもともと読解力が優れている方が読書をしたらどうなるでしょう? 実は、その場合黙読と音読の効果に差異は見られません。これらを踏まえると、黙読と音読どちらが良いか? に関して次のことが言えます。

・子どもや読解力が低い人は音読がおすすめ
・大人や読解力のある方は黙読がおすすめ

 アナタが得意なジャンルの場合、音読をする必要性は高くありません。既知の内容をわざわざ音読するよりも、アナタが始めて出会う単語や用語にスポットを当て、それに関して集中的に読み込むほうがはるかに時間効率が高くなります。

 逆に初めて読むジャンルの本、未知の本、自分にとって敷居が高い本などはしっかり音読して、ひとつひとつの意味を理解していった方が結果的に理解までの時間が短縮できます。

 音読は確かに優れた読書法ですが、どんな場合でも絶対に音読をしたほうが良いというワケではないのですね。

どんな時音読したほうがいい?

YouTubeチャンネル、佐藤ママチャンネル:投稿動画より

 人は読むより聞く、聞くより見る方が記憶に残りやすい傾向があり、これを『モダリティ効果』と呼びます。昨今はYouTubeなどの映像媒体の登場により、どんなモノでもわかりやすく解説してくれる世の中になっていますね。

 映像媒体は素晴らしい教材ですが、アナタがもし「コレを見ればいつでも思い出せる」という認識をもっていると脳が「覚えなくていいや」モードになってしまい、逆に脳へのインプットが薄れてしまうことがあるのでご注意ください(グーグル効果)

 動画ははじめの一歩をサクッと学ぶために有効ですが、より深く、じっくり綿密に理解するためには音読がとても有効的です。つまりしっかり理解したい時に音読がとてもおすすめです。

 逆に内容についてある程度知っている場合は黙読をおすすめします。新しい用語に出会ったとき、黙読は読み戻しや精読を重ねるなど汎用性の高い読み方ができるでしょう。おすすめの読書法をまとめると以下のような形になります。

音読
  内容をしっかり理解したい時
  初めて触れる分野にチャレンジする時
黙読
  内容をある程度理解している時
  アナタ自身にその分野の読解力がある時

 子どもは日本語を覚える最中なので、しっかり音読させて『日本語を話す』こと、『日本語を耳で聞く』こと、そして『日本語を頭で理解する』ことを学ぶ必要があります。それらを同時に行えるのが音読なので、子どもはまず音読をさせ日本語力の基盤をつくってあげるようにしましょう。

 大人になっても「音読は大切だ」と言われますよね。イスラム教の聖典コーラン、仏教で唱えるお経も音読が主に採用され、人間は大昔から音読の有効性を肌で感じていたのでしょう。わたしたちは言葉を文章にし、それらを読むことで知識を得ることができます。

 音読はこれらの他さまざまな効果が期待できます。アナタがもし疲れていたり、日常を忘れられるようなツールを求めているなら、ぜひ音読を生活のなかに取り入れて、心身の調子を整えてほしいと思います。

J-STAGE、安山秀盛氏
 読書に関するエビデンスは こちら

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