【心理学】うしろ向きな思考を変えたいアナタへ【認知行動療法】

マイナス思考な自分を変えたい! 認知再構成法のわかりやすい解説

 やめたほうがいいと言われてもついついマイナス思考しちゃいますよね。アナタもふとした瞬間、こんなことを思ってしまうのではないでしょうか?

<strong>Aさん</strong>
Aさん

またヤッちゃった。ボクはいつも失敗ばかりするなぁ……

<strong>Bさん</strong>
Bさん

私はみんなから評価されてないに決まってる

<strong>Cさん</strong>
Cさん

どうせまたうまく行かないよ

 いわゆるネガティブ思考ですね。これ自体悪いことではなく、ビジネス界隈ではリスクマネジメントで重要な考え方だったりします。しかしこういった思考がクセになると行動まで後ろ向きになり、アナタ自身にとってもよろしくない方向に導かれてしまいますね。

 それは良くないですよね? 世の中にはいろいろな『ネガティブ思考脱却テクニック』がありますが、それらは個人の経験に基づいた感想や根拠ない主張もあったりします。人それぞれの手法ですからアナタにマッチするかどうかは……ちょっとした賭けになりそうで不安ですね。

 ここでは科学的根拠に基づいた、臨床心理の世界でよく活用されるテクニック『認知再構成法』について紹介していきます。

認知再構成法と認知行動療法

YouTubeチャンネル、こころ診療所チャンネル【精神科医が心療内科・精神科を解説】:投稿動画より

 認知再構成法とは『認知行動療法の基本的なテクニックのひとつ』です。

<strong>Dさん</strong>
Dさん

さいこうせい……こうどうりょうほう? いったい何がなんなんだ?

 ちょっとむずかしい漢字が並んでいますね。ですがむずかしく考える必要はありません。まずは認知行動療法に関してわかりやすく解説していきましょう。

認知
 → ものごとの受け止め方
行動
 → 自分を変えていくための具体的な行動

 認知行動療法は『行動を通して自分の認知を変えていこう』という療法です。具体的な行動をすることで、自分の中にある”うしろ向きなこころ”を少しずつ修正していくのが認知行動療法の肝です。

認知と行動

 アナタの目の前に『りんご』があった場合、アナタは瞬間的に何を考えますか?

① 赤くて丸いなぁ。青森産かな?
② おいしそうだな、ちょっとかじってみたい
③ りんごすら必死に生きてるのにオレってやつは……

 多くの方が『』などと考えるでしょう。まず『』のような思考をする人はいないと思います。が、心にダメージを負っている方の中にはそういう思考をしてしまう方がいるのも事実です。

 人が『りんごを見る』のような事実を認知した時「おいしそう」などのように勝手に流れる思考は『自動思考』と呼ばれます。たとえば皿を落として割ってしまったとき「あっ、やっべー怒られる!」や「掃除メンドウだなぁ」と反射的に思ってしまいますよね?

 その中で、上記の例『』のようになぜか後ろ向きで合理性のない思考ばかりが勝手に走り出してしまうことがある。これを『認知の歪み』と呼びます。

自動思考
 → あるイベントに遭遇したとき勝手に流れる思考
  例)りんごを見る → おいしそう、食べたい!
認知の歪み
 → 自動思考のなかでも不合理な思考
  例)りんごを見る → ぼくはダメなやつなんだ

 認知行動療法はそういった認知の歪みを発見し、それを具体的な行動によって少しずつ修正していくための手法です。認知行動療法は1950年代に確立され現在多くの手法が存在しますが、今回はそのなかでも世界的に浸透している『認知再構成法』について解説していきましょう。

認知再構成法とは?

 認知再構成法は『自分の自動思考を書き出すことで認知自覚し、認知の歪みを修正していく療法』です。ネガティブ思考な方は、得てして自分自身のネガティブ加減を自覚していません。そこで、認知再構成法では患者(臨床心理学用語ではクライエントと呼びます)に自分自身の認知の歪みを自覚してもらい、それに対し合理的な修正を図っていくよう促していきます。

 ネガティブ思考、それもカウンセリングを受ける必要があるレベルの方だと自分自身が認知の歪みを起こしている自覚がありません。なので、まずはクライエントがどのような認知の歪みをもっているか知る必要があります。そのために使われるのが『非機能的思考記録表(DTR)』です。

 上記画像はわたし(犬物語)が作成したもので画像をそのまま印刷して使えます。ほか厚生労働省や精神医学、カウンセリング関連サイトにサンプル画像が掲載されているのでそれらもチェックしてみると良いでしょう。

厚生労働省
 → 非機能的思考記録表サンプルは こちら

 これは別名『自動思考記録表』、『認知再構成シート』、『コラム表』など複数の呼び方が混同していますがシート内書かれている内容はほぼおなじです。具体的な使い方を解説していきましょう。

日にちと場所
  いつ、どこで発生したのか?
  例)○月□日、職場で
状況
  自動思考が浮かんだ状況
  例)仕事中体調不良で帰宅し、
    自分はなんてダメなヤツなんだと思った
感情
  自動思考が浮かんだ時おぼえた感情
  例)相手への申し訳なさ90%
    情けなさ80%
    自分への苛立ち70%
自動思考
  その時浮かんだ自動思考の内容
  例)また仲間に迷惑をかけてしまった
    自分は仕事をサボった。こんな事じゃみんなに迷惑をかけてしまう
    自分はなんて弱い人間なんだ
自動思考の根拠
  なぜ自動思考を感じたのか?
  例)仕事中休むなんておかしい
    他人に教えてもらってばかりだ
    学生時代皆勤だったからできるはずだ
自動思考の反証
  自動思考の根拠に対する”再検討
  例)仕事を休む人は0ではない
    自分はまだ新人で学ぶことが多いのだから聞いてばかりなのも無理はない
    学生時代皆勤だからといって仕事を休めない理由にはならない
代理、適応的な思考
  上記反証を踏まえて達する結論
  例)会社を休む = ダメな人間というわけじゃない
    最近仕事に打ち込み過ぎて私生活がメチャクチャになっていたかもしれない
    病気対策として、今後は体調管理に気をつけていこう
現在の感情
  上記を書いた上で”“の自分が感じている感情
  例)相手への申し訳無さはまだ50%くらいあるものの、
    情けなさや自分への苛立ちは20%くらいになった

“どこに目をつけるか” を変える

YouTubeチャンネル、Freeride Adventure / Yu’s スキーチャンネル:投稿動画より 木に意識を向けると木に当たる

 ツリーランをご存知ですか? 木の間を滑り抜けていくスキーのことですが、彼らは『木の間滑る道筋』に対し意識を向けています。たとえぶつからないようにしても意識が木に向いてしまうだけで身体がそちらへ向いてしまうのです。これは車の運転をしてる方なら心当たりあるのではないでしょうか?

 リラックスしたい時もこの『どこに意識が向いているか?』が大事です。ふと心臓の鼓動音が気になってしまうとどんどん鼓動が激しくなりどうしようもなくなった、なんて経験をしたことがありませんか? ほんのすこし『気になった』だけで心は大きく乱されてしまいます。

 その対策としてマインドフルネス瞑想がオススメですが、これは心に浮かんでくるいろいろな思いを『ただ観察する』というテクニックです。勝手に浮かんでくる思いを消そうとせず、それに対して評価しようとせず、ただ浮かんでくる思いをぼーっと眺めているだけで良いのです。そうすると、そのうちどんな考えも浮かんでこないリラックスした状態に導くことができます。

 マインドフルネス瞑想といえばマサチューセッツ大学医学大学院教授『ジョン・カバット・ジン(Jon Kabat-Zinn)』氏が有名ですね。彼の著書『マインドフルネスストレス低減法』は第3世代の認知行動療法とまで言われるマインドフルネスの実践法を網羅しています。

 アナタがアナタ自身の『自動思考』について気になるところがある場合、ぜひとも非機能的思考記録表と共に上記テクニックを試してみてください。

マインドフルネスストレス低減法
マインドフルネスストレス低減法

 物事を心、理性、行動という3面から観察すると、新しい自分を再発見したり、自分の思考について気づくこともできます。自分がどのような考え方をするのか、その考え方は理屈が通っているのか? ――これからの時代、論理的な思考力を養っておきたいですね。

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