心を守るための”防衛機制”とは? ストレスに強くなる防衛機制の活用術
防衛機制とは『様々なストレスから心を守るための“機能“』です。人間は社会を形成する生き物です。それ故に個人の意志を通せない場面があり、自分を抑圧する機会重なれば当然ストレスを感じるでしょう。それだけでなく、人間は大小さまざまなストレスを感じて生きています。
自我に生じた様々な葛藤は、不安や怒りなどネガティブな感情を起こします。そういった不快な感情を解消し自我を保つために、人間の心は『防衛機制』という心理的作用によって葛藤を乗り越え(あるいは逃れて)ています。今日は、そんな心の防衛機制について書いていきましょう。
心の防衛機制とは?
精神分析学者の『ジークムント・フロイト』は、人間には自我に生じた葛藤により心が崩壊しないために、無意識のうちに様々な心理的作用が生じるのではないかと考えました。当時は『防衛』という言葉で用いられていましたが、後に彼の娘である『アンナ・フロイト』が『防衛機制』という言葉を用いて、具体的に様々な手法を整理して体系化しています。
また『アルフレッド・アドラー』も防衛機制について言及しています。彼が掲げる『個人心理学』は、とくに自らが抱える”劣等感”とどう向き合うか? という重要なテーマがあるので、この防衛機制については重要視されます。アドラー心理学ではとくに『補償』に関してどうエネルギーを注ぐかが鍵となっていきます。
フロイトの説もアドラーの説も『心にのしかかる“ストレス“に対抗するための心の策略である』という流れに沿っており、とくに大きな意味の違いはありません。これらに関してはコンパクトなサイズで心理学用語を網羅した『心理学専門校ファイブアカデミー』著作『心理学 キーワード&キーパーソン事典』に詳しく記されていますが、そのなかでもとくに重要だと思うものを厳選してご紹介します。
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抑圧
抑圧は、『不愉快な体験や記憶を無意識の領域に押し込み忘れよう』とする心の働きです。ある時期の記憶がない方は、もしかしたらその時期とても辛いことがあったのかもしれません。フロイトが提唱する防衛機制のなかでは最も基本とされるもので、だれでも多かれ少なかれ抑圧によって忘れている過去があるようです。
忘れてしまったことに対して何をアプローチするでもありませんし、そもそも忘れているのだから存在すら知りようがありませんのでアプローチできませんね。フロイトの説をもとに考えるならば無意識の欲求は夢などに表れるので、自分が見た夢を分析することによって隠された欲求に気づくかもしれません。
合理化
合理化は『自分の満たされない感情、思考、行動などに対しそれっぽい理由をつけ説明する行為』を指します。自分が欲求を満たされない理由を正当化するのが目的ですが、だいたい正当化できていないのが特徴です。イソップ物語にある『すっぱいブドウ』の逸話がまさにこの良い例です。合理化という名前に惑わされがちですがこれ、ほんとうにまったく合理化できていないのでご注意ください。
論理的思考ができなくなった状態なのでよくありません。こういった思考に陥らないよう普段から気をつけておくべきでしょう。対策としてはバッサリ諦めるとか、代替できる別の手段を用いるなどがあります。
注:すっぱいぶどうは社会心理学の『認知的不協和』の例にもなりえます
同一化・同一視
同一化・同一視は『あこがれや重要だと感じる人を模倣し、自分の不安や欲動を解消しようとする』行動を指します。うまく利用すれば自分のエネルギーとすることもできる良い防衛機制で、フロイトの説では、男子の子どもが父親に対するあこがれや対抗心が同一化・同一視を引き起こし、父親に追いつき追い越そうと努力する力になるとあります。
スポーツなどにおいても、プロ選手の動きを見て学ぶことは貴重な経験です。みなさんもあこがれの人(メンター)を見つけだして、その人のどこに魅力を感じたのか? どんな要素に凄さを見出したのか? などを研究し、マネをすることで自身のパワーアップに努めてみましょう。
逃避
逃避とは『葛藤を引き起こすような状況から逃げようとする行為』です。嫌な上司と顔を合わせないようにしたり、報告を怠ったり、仕事を辞めてしまったり――昨今、ブラック企業などの問題が取り沙汰されており、そういった企業からはさっさと逃げ出したほうが吉なのでしょうが、冷静さを欠いた状態での逃避は逆に窮地へ立たされることもあります。転職に限らず、重要な場面では闇雲に逃避を選択せず、一度慎重に考え準備を整えてから対応策を練りましょう。
昇華
昇華とは『自分がもつ社会的に受け入れがたい感情や観念を、社会的に受け入れられる形に変換する』行為です。活発的な性格であればそれをスポーツやゲームによって発散させたり、性的欲求やなにかしらの衝動を創作活動により発散することで昇華させることもできます。
昇華は抑圧することなく欲求を満たし、なおかつ葛藤を解決できるために『成功(適応)的防衛』と呼ばれることもあります。個人的にテクニックとしてオススメできる防衛機制で、日記を書く、絵画を描く、思い切り歌をうたうなどなんらかのアウトプットはストレス解消としても非常に有効的です。はたまたそれを動画投稿して他者と喜びや情熱を共有するのもアリかもしれません――ストレスをエネルギッシュな創作活動の糧として逆に利用してみましょう。
補償
補償とは『自らの“弱点“を何らかの形で補い劣等感を克服しようとする』ことを指します。これは『アルフレッド・アドラー』によって提唱された概念で、ある劣等な器官を他のものによって代用させたり、劣等な器官を鍛錬によって克服したり、劣等であることで逆に価値を見出すなど、劣る部分を何らかの形で補うことで、自分がもつ劣等感を克服するように努めます。
ひとつ注意が必要なことがありまして、ここでの劣等とは『主観的』なものでしかありません。つまり、劣等感とはその人自身が(自分は劣っている)と感じている心自体を表しています。アドラー心理学では『究極的な意味で“劣等“なものは存在しない』と考えます。たとえば『身長が低い = 人として劣っている』なんてころはありませんよね? ――劣等感はあくまでも“感“です。人は優越性を追求しようとしますが、本来は上下で争うのではなく、それぞれがそれぞれの道を前に歩み続けるだけのこと。アナタはアナタ、自分が進むべき道をただ歩んでゆけば良いのです。
欲求不満によるストレスは多かれ少なかれだれにでもあるものです。それらと向き合い、うまくコントロールしてあげることは、アナタの心をより健全な状態へ導いてくれるでしょう。同一視、昇華、補償――もしかしたら、アナタ自身も気づかぬうちに使いこなしているかもしれませんよ?
“ToDo”チャレンジ
①ストレスを解消しよう
人生を前向きに生きるため必要な心理状態があります
②悔しさを昇華させよう
ストレスをバネにすれば急成長できます
③心身をリラックスさせる時間をつくろう
休日はゆっくり心身を休ませましょう
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