ラーニング・ピラミッドは “ウソ” ?

科学的根拠のない”ラーニング・ピラミッド” なぜ頻繁に引用されるのか?

 ラーニング・ピラミッド学習定着率とは『記憶が定着しやすい学習法をピラミッド形式でまとめた図表』です。初出は1960年代、アメリカの『国立訓練研究所National Training Laboratories』がある著書を参考に発表したモデルですが、これには確固たるエビデンスが存在せず、現在多くの批判にさらされています。大きな理由としては以下のようなものが挙げられます。

・研究内容自体が失われている
・どうやってこの数値を導き出したのか不明
  そもそも論文すら存在しない

 ラーニング・ピラミッドは現在でもたびたび引用されることがあるため、一部ではゾンビ理論などと揶揄されることがあるようですが、様々な批判に晒されつつ引用もされ続けているという事実は驚きですね。こういった扱いを見ると、ラーニング・ピラミッドはエビデンスは無くともどこか信頼できるような要素があるのではないか? とさえ思えてきます。

 今回はこの『ラーニング・ピラミッド』に関する話を書いていこうと思います。

ラーニング・ピラミッドをはじめて発表した
 国立訓練研究所(NTL):公式サイトは こちら(注:英語)

デタラメでありながら引用され続ける”ラーニング。ピラミッド”の魅力

 ラーニング・ピラミッドは上画像に記された順番、パーセンテージで学習効率が良くなるとされています。内容的には『2週間後にどれだけ覚えていたか?』というデータのようですが、その根拠とされる論文などは調べても見つかりませんでした。そもそもパーセンテージが5%や10%刻みという時点で、信憑性が疑われるのは明らかでしょう。各要素について以下に補足します。

講義(5%)
  通常の講義を聞いた時の学習定着率
読む(10%)
  読書をした時の学習定着率
視聴覚教材(20%)
  動画を見た時の学習定着率
実験教材(30%)
  実験を行った時の学習定着率
グループ討論(50%)
  他者と討論を行った時の学習定着率
体験を通じた学習(75%)
  臨海学習、学校外学習など
   なんらかの体験を通した時の学習定着率
他の人に教える(90%)
  勉強した内容を他者に教えた時の学習定着率

 これらの解説、よく見ていただくとわかりやすいのですが、実は学習定着率の低い順番は『聞く読む見る』などの受動的な学習法になります。そして次の段階ではそれらの組み合わせの上『実践』が組み込まれ、人に教えることは『多くの手段を用いて相手に伝える』という非常に能動的な行動をとることになります。能動的に学習する。これどこかで聞いたことがありませんか?

 『⑤~⑦』の要素はアクティブ・ラーニングです。能動的学習について、多くの研究でたびたび肯定的な報告がされており、文部科学省ではアクティブ・ラーニングを用いた学習指導が真剣に推し進められているところです。

文部科学省:アクティブ・ラーニングと教育の取り組みについては こちら

 ただ受動的に知識を吸収するだけでなく、能動的に学習することでより知識の定着が増す。その概念を図にしたものがラーニング・ピラミッドと考えると、エビデンスが無くとも頻繁に引用される理由がよくわかるような気がしてきますね。

 とはいえ、わたしは読書好きとして「読書が5パーセント? ちょっと低い気がする……」という思いを頭の隅っこで感じていました。この知識も読書で得たモノですし、このブログでは読書で得た知識を紹介している事情があるだけに、この違和感はずっと残り続けています。では、果たして「ラーニング・ピラミッドは使えない理論だ」と言えるかどうか? ――これは上記の理由もあり、必ずしも信じられないということは無いような気がします。もう少しラーニング・ピラミッドについて深堀りしていきましょう。

他者に教えるつもりで勉強しよう

 この中で最も学習効率が高いとされる『他の人に教える』という項目。これに関してひとつ興味深い実験があります。アメリカ、ワシントン大学の『ジョン・ネストイコ』博士は2グループの被験者に以下のような内容を伝えました。

:パターンA:

<strong>ネストイコ博士</strong>
ネストイコ博士

後で、内容を覚えているかテストします

:パターンB:

<strong>ネストイコ博士</strong>
ネストイコ博士

後で、内容を覚えた内容を別の人に教えてもらいます

 ――実際は他者に教えることはなく両グループ同じテスト行いました。つまり、両グループの間には『テストをする他人に教える』という心理的な違いしかありません。そして、実際にテストを行ったところ、Bグループのほうが好成績を納める結果を得られたのです。

スプリンガー:ワシントン大学の研究については こちら(英語)

 ちなみに、原盤のラーニング・ピラミッドでは『他の人に教えるTeach someone else』に併せて『すぐに使うuse immediately』とも記されています。活用することは脳に『必要な情報だ』と印象づけさせることができ、より効率的に学習することができるのですね。とにかく能動的にアウトプットをして、より学習効率を上げていきましょう。

 わたしは、アクティブ・ラーニングと上記実験内容などを踏まえて『犬に読書で得た知識をすぐ教える』という学習法を実践しています。いや、これが意外と効率が良いんですよ、本当に。たとえば壁に向かって話しかけることでも良いようですが、やっぱり話し相手がいたほうがより心持ちが違うので、ええ――。

結局ラーニング・ピラミッドは良いの? 悪いの?

 ラーニング・ピラミッドには確固たるエビデンスはなく、どちらかと言えば批判の方が多い研究データです。日本中のあらゆる図書館をレファレンスとして検索できる『レファレンス協同データベース』に記された情報によると、ラーニング・ピラミッドの学習定着率に関する科学的根拠になる論文はヒットしないようですね。

 とはいえ、やはりラーニング・ピラミッドが未だに多く引用されている事実はこの理論が決して的外れではないことを現しているような気がします。

レファレンス協同データベース:ラーニング・ピラミッドに関する質問については こちら
カレントアウェアネス・ポータル:ラーニング・ピラミッドに関する批判の解説は こちら

 重要なのは『自分にとってどの学習法が最も学習効率が良いか?』を知ることではないでしょうか? 現代社会は科学の進歩が著しいためエビデンスが重要視される時代になりつつあります。ですが、だからといってそれがエビデンスのない理論をすべて否定する理由にはなりません。ラーニング・ピラミッドを鵜呑みにせず、だからと言ってすべてを否定しない、良いバランスの中で学習していきたいですね。

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