【わかりやすい解説】うるち米ともち米って何がちがうの?【水稲農林1号】

そもそも”米”ってなに? なんでもち米のほうがモッチリしてるの? 日本を救った”水稲農林1号”とは?

 アナタはお米、好きですか?

 わたしは好きです。野球小僧のころは毎日のごはんが欠かせませんでした。お米は日本人の主食といっても過言ではなく、都道府県ごとに地元名産のお米があったりしますよね。

 わたしの地元栃木県は収穫量全国9位の米処で、那須高原の字を借りた『なすひかり』、皇位継承の儀式大嘗祭で献上米に指名された『とちぎの星』が有名ですね。アナタの地元はどんなお米がありますか?

 ブランド米とは別に、米の種類として『うるち米もち米』がありますね。もち米は「もち用の米なんだな」とイメージできますが、ではうるち米はなんでしょう? どういった意味があるのでしょうか?

農林水産省
 農作物の作況に関しては こちら

北陸の米はマズかった!? 日本米の品種や戦後の米事情を救った偉人もわかりやすく解説

 うるち米ともち米、どちらもおなじ水稲(すいとう)”であることに違いはありません。植物学的にも大きな差はありませんが、日本の米に関する制度『玄米及び精米品質表示基準』では以下のように定義されています。

もち精米
  精米のうちでん粉にアミロース成分を含まない精米をいう。
うるち精米
  もち精米以外の精米をいう。

 つまり、呼び方の違いは『アミロースが含まれているか否か』の差だけです。うるち米は半透明でやや長細く、もち米は白くて丸みを帯びているのが特徴です。ちなみに精米は『玄米のぬか部分を取り除き精白した米』ですね。

お酒にもなるうるち米 お赤飯にもなるもち米

 うるち米は食卓にならぶごはんの他、日本酒の原料として使われています。もち米だけのイメージですが、実はお赤飯おこわちまきなどにも利用されています。

 これらを粉にした『米粉』も多種多様で、それぞれ以下のような種類がありますね。

うるち米
  新粉(並新粉・上新粉・上用粉)
  乳児粉
もち米
  もち粉
  白玉粉
  寒梅粉
どちらも可、もしくは配合する場合がある粉
  だんご粉
  みじん粉

 きめ細やかな米粉は、昔から和菓子の材料として幅広く活躍していました。また、米粉は日本酒などの原材料になり、現在ではパン、ケーキなどの洋菓子麺類、さらに石鹸化粧製品など幅広い活躍を見せています。

 通常、小麦でつくるパンにはグルテンが含まれていますが、米粉でつくるパンはグルテンフリーなので健康志向の方に注目され、とくにヨーロッパで人気が高まっています。米粉を用いたグルテンフリーのパンはしっかりとした噛みごたえがありとてもおすすめです。

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 ちなみに玄米粉も販売されています。

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消費者庁
 玄米及び精米品質表示基準に関しては こちら
農林水産省、東海農政局
 米粉一覧に関しては こちら

そもそも米ってなに?

 米は『稲の果実』です。イネ科の植物で、同じイネ科の仲間として小麦サトウキビなどがありますね。そのほか雑草として有名なエノコログサ(別名ねこじゃらし)など自然界に多く存在する植物です。

 日本人の主食といえばですよね。世界でも有数の米生産国として知られる日本では寒さや病気に強い『ジャポニカ米』が栽培されています。対して熱帯地域では長細い形状をした香ばしい『インディカ米(タイ米)』が広く流通しています。

 稲の果実は『(もみ)』と呼ばれますが、通常この状態から殻(籾殻)を取る作業を行って『玄米』にしたものから食用になります。

 籾殻は食物繊維が豊富なので食べられないこともないのですが――このままだ固くて食べにくいしおいしくないので食用にされるのはごくわずかです。たまに粉末状にしたスープがあるくらいですかね。

 玄米を精白する、つまり糠を取り除いた状態にしたものが『白米』と呼ばれるようになります。

稲の果実
 =
籾の殻を取り除く
 → 玄米
玄米を精米する
 →

米の品種

 稲にはたくさんの種類があり、田んぼのように水を必要とする水稲(すいとう)と水が少ない環境に強い陸稲(りくとう)に分けられていますが植物学的にはとくに差別化されていません

 日本では田んぼでつくる水稲の開発が盛んに行われ、現在では多くの都道府県でブランド米が開発されています。

北海道
  ななつぼし
新潟県
  わたぼうし
栃木県
  とちぎの星
愛知県
  あいちのおかげ
岡山県
  吉備の華

 これらは普段主食として登場するうるち米ですが、もちろんもち米の品種も全国各地で開発されています。

北海道
  風の子もち
宮城県
  もちむすめ
群馬県
  まんぷくもち
福井県
  恵糯
鹿児島県
  さつま絹もち

 うるち米の歴史上『コシヒカリ』が多くの品種に関連するため、ここで紹介した以外の多くは『〇〇ヒカリ』というネーミングのようです。また、もち米は『〇〇もち』と名付けられることが多いようですね。

 いずれにしても日本の米処北海道の強さが目立ちます。米はもともと熱帯地域の作物ですが、品種改良によって東北でものすごい量の収穫が可能になったので、今では日本の米処といえば北海道か東北になっているのです。

農林水産省
 米の品種(農産物規格規程)一覧に関しては こちら

もち米のほうがモッチリしてる理由

 うるち米ともち米の違いは『アミロースが含まれているか否か』でしたね。アミロースはデンプンの一種で、甘さの原因となるグルコース(ぶどう糖)同士が合体した化合物を指します。合体の仕方により名称が代わります。

アミロース
  グルコースが直鎖状に繋がっている
アミロペクチン
  グルコースが不規則的に繋がっている

 米はアミロペクチンの割合が多いほど粘りと柔らかさが増します。それぞれの含有量を比較してみましょう。

うるち米デンプン
  アミロース 約20%
  アミロペクチン 約80%
もち米デンプン
  アミロペクチン ほぼ100%

 もち米のデンプンはほぼ100%アミロペクチンなので粘り気が強く、だからこそ餅用のお米として使われるのですね。ちなみにうるち米のうるち()の由来は諸説ありますが、一節にはサンスクリット語で米を表す『ウリヒ(vrihih)』から変遷を経たとされています。

 もち米は水分をよく吸収するのでもち米を炊く際は水量を少なめにしましょう。炊飯器のなかにはもち米用の水量を示してくれるタイプがあるのでそれを購入するのがおすすめです。

東京農業大学
 うるち米ともち米それぞれのデンプン量に関しては こちら
農林水産省、アグリナレッジ
 うるちの呼称についての歴史的考察に関しては こちら

日本の米は”水稲農林1号”から始まった

YouTubeチャンネル、UNEHAUS:投稿動画より

 古来から日本の代表的食糧として親しまれている『』ですが、実は国から品種として認められた『水稲農林1号』が誕生したのは1931年。つまり昭和6年と思っている以上に古くないのです。

 水稲は水場で育つ稲。農林1号は『農林()主導の開発で誕生した品種の1号』を示し、新潟県にて誕生しました。

<strong>Aさん</strong>
Aさん

新潟県! やっぱ昔から新潟県は米処だったんだな

 ――っと思われガチですが、実は昭和初頭の北陸米は『()またぎ米』と呼ばれるほどまずかったとされます。あまりの不味さに鳥や猫すら食わずにまたいで通る、という意味ですね。

 稲は熱帯地域の植物なので元来寒さに弱い品種です。東北地方の環境に耐えるには寒さに強い品種であることが求められます。この状況を打破するため農林水産省(当時:農水省)の『並河成資鉢蝋清香』両氏の尽力によって水稲農林1号が誕生しました。

水稲農林1号の特徴
  寒さに強い
  収穫量が多い
  育ちが早い
  品質が高い

 これらの特徴を兼ね備えた農林1号は北陸各地で広がっていき、1939(昭和14)年の収穫年には16万ヘクタール以上もの作付面積を誇っていました。まだ登場して8年時点で当時2位の成績をおさめるのはすごいことですよね。

農研機構
 水稲農林1号に関する情報は こちら
農林水産・食品産業技術振興協会
 水稲農林1号と並河成資に関しては こちら

食料危機を救い多くの稲の父となる

 水稲農林1号はその収穫量から、1934(昭和9)年に起こった東北地方の大凶作を耐え忍び、戦後の食料危機のなかでも希望の品種として存在し続けました。

 農林1号はその後も品種改良や交配をくりかえし多くの成果を挙げ、あの有名な『コシヒカリ』の父にもなっています。

 戦後初期の食糧難を支えた農林1号は、それ以降『コシヒカリササニシキ』などの耐寒と食味を両立させた品種が開発されたことで少しず作られなくなっていきます。しかし、農林1号があったからこそ北陸、東北地方は日本有数の米処となり、現在ではコシヒカリが全国各地で作付けされていますね。

農林水産省
 米に関するトピックは こちら
北海道立総合研究機構(道総研)
 米に関するQ&Aに関しては こちら

 メインディッシュのみならず玄米茶、お酒、和菓子など幅広い活躍をする日本の主食『』。海外では寿司ブームなど日本食が人気であり、今後日本のお米はますますワールドワイドになっていくでしょう。

 日本の米に対する情熱はすごいですね。今後もお米は日本のソウルフードとして長く生産されていくでしょう。お米は良いエネルギー源にもなるのでどんな方にもおすすめできます。

 勉強、仕事に日々がんばるアナタの食卓に1杯のごはん。まいにちおいしく食べていきたいですね。

Amazon.co.jp
ニッポンのうまい米

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