【乗り心地は?】宇都宮ライトレールに乗ってきた感想

YouTubeチャンネル、久住由良:投稿動画より

 アナタは『宇都宮』というワードに何をイメージするでしょう? ――やっぱりギョーザですよね。日光市民であるわたしも「宇都宮と言えばギョーザだろ」ってなります。宇都宮市民はどんな気持ちになるでしょうか?

 ちなみに、宇都宮はジャズの街でありカクテルの街であり、実は百人一首の街でもあります。さらに世界的な自転車レースが行われる街でもあるので、宇都宮ってけっこー魅力的な場所だったりするのです。

 そんな宇都宮に新たなシンボル『宇都宮ライトレール(LRT)』が誕生しました。都合よく一日ヒマな日があったので、わたしは某観光CMのごとく「そうだ、宇都宮に行こう」と一念発起。開通したばかりの路面電車目指し日光市を飛び立ちました。

 っということで、今回は宇都宮ライトレールに乗車した感想や、宇都宮の交通事情やライトレールに関する情報をわかりやすく解説していきたいと思います。

芳賀・宇都宮LRT
 公式ページは こちら
宇都宮ライトレール 株式会社
 公式ページは こちら

路面電車年鑑2022 (イカロス・ムック)

宇都宮の新たなシンボル”ライトレール”乗車体験 乗り心地は? 宇都宮の交通事情も解説!

 GoogleMapより、宇都宮ライトレールの延伸予定区間

 宇都宮ライトレールを体験した日は8月29日です。わたしは日光市在住で宇都宮市とは隣同士ですが、それぞれの中心部はけっこう離れてるので車で1時間くらいかかります。今回は宇都宮への行程含めオール徒歩で体験しようと思ったのでJRの『今市駅』から『宇都宮駅』へ電車移動。ターミナル東口からそのままライトレールに乗車する予定をたてました。

<strong>犬物語</strong>
犬物語

さいきんの電車は手動で開閉できるんだなぁ~

 移動手段といえばなわたし。なにせウン十年ぶりの電車体験で何もかもが当時と違った新体験でした。宇都宮にはJR東武がありますがライトレールがあるのはJRのほうです。間違えるとオリオン通りから長く歩くハメになるのでご注意ください。

 ちなみに、宇都宮市は『駒生一丁目付近までは整備区間』としており、近い将来駅西側にもライトレールを延伸する予定です。駒生一丁目は栃木県護国神社の先『栃木県教育会館』周辺で上記画像をご参照ください。これは楽しみですね!

宇都宮市
 ライトレールの延伸計画については こちら

券売機はどこ? 宇都宮は暑かった

 地元民なので体感できたことは日光より宇都宮のほうが3度くらい高いってことですね。日光が「暑い……」だとすると宇都宮は「あぢい”い”ぃぃぃぃ」となるレベル。地元のありがたみを実感しつつ、まだ午前9時ごろだというのにターミナルが暑すぎてギブアップ。近くのショッピングモールへ逃げ込みました。

 宇都宮ライトレールは乗車チケットによる現金払い、もしくは定期券などのICカードによる支払いを選択できます。それぞれのメリット・デメリットを確認しましょう。

現金
  路面電車が停車するホーム内部で乗車券入手
  降車する際運転者がいる側の出入り口
   料金と乗車券をボックス内部に精算する
  釣りは出ません
ICカード
  路面電車それぞれの出入り口にあるセンサーへタッチ

   どのドアからも支払いOK
  路面電車内部でチャージも可能
  カード内残金が足らなくとも
   残額を現金で支払うことができる

 現金はバス運賃の支払い方法と同じですね。乗車券は路面電車ホームにあり、ボタンを押すことで発券してくれます

 ICカードは複数あり、詳しくは運営会社のホームページをご参照ください。2023年9月2日時点では以下11種類のICカードを使用可能です。なお定期券はtotraのみとなっています。

totra (公式がもっとも推しています)
  定期券購入など、一部はtotraのみ対応
・Suica
・PASMO
・Kitaca
・manaca
・TOICA
・PiTaPa
・ICOCA
・はやかけん
・Nimoca
・SUGOCA

宇都宮ライトレール 株式会社
 支払い方法、利用可能ICカードについては こちら
 定期券売り場については こちら

路面電車と何がちがうの?

 JR宇都宮駅ホームからPASEO方面へ、突き当りを右折し宇都宮テラス方面へ。広場手前、右側のエスカレーターを降りると宇都宮ライトレールホームへ到着します。

 路面電車とライトレール。ほぼ同じ意味ですが使い方がちょっと異なり、ハッキリした定義はなく曖昧ですがこういった点によって差別化されてるようです。

路面電車
  一般車が軌道内を走行可能
  乗車口と降車口が別
  スピードがやや遅めで渋滞の可能性も
ライトレール
  一部、一般車が走行不可の専用軌道がある
  どのドアからも昇降可能
  スピードが速く、専用軌道を走るためスムーズ

 路面電車は軌道内は原則走行禁止ですが、緊急回避などで侵入可能な場合があり、さらに軌道内侵入可能の標識もあります。

 日本の路面電車は古くから活躍していましたが、車社会になるにつれ逆に渋滞を引き起こす原因となる場合もありました。現状路面電車を活躍させるには、はじめから専用軌道を設けどの昇降口からも乗り降りできるようにされた車両であることが求められます。

 総合的に書くと路面電車はややバス寄り、ライトレールは電車寄りなイメージと言えそうですね。

 宇都宮ライトレールは新たに建設されたライトレールなので、どの駅も新規に建造したバリアフリー性能も格段に高いスーパーライトレールとなっています。さらにどの駅も車椅子で昇降可能で、どの入口も広く余裕があります。すべての乗車口にICカード読み取り機があるので乗り降りがスムーズなことがさらなる時短を可能にしていますね。

 路面電車の制限速度が40km/hなのに対し、宇都宮ライトレールはそれ以上の速度で走行するようです。さらにバイオマス発電による走行ということで、新たなエネルギーがどう影響するのかも注目されていますね。

LRT-次世代型路面電車とまちづくり-

ライトレールの外装や内観は? 乗り心地はどうだった?

YouTubeチャンネル、n-SEAmo えぬシーモ:投稿動画

 わたしが乗車したのは『9:57:宇都宮発』のライトレール。到着した車両から乗車客降りていくと、必要な手続きなのか、次の客を乗せずドアが閉められました。少し経つとまた開いて駅員さんの「どうぞお乗りください」との声。わたしは切符を片手に乗り込みました。

 外観はと雷をイメージした黄色でまるみを帯びた近未来感ただよう様相。乗車する際の段差がなく、低い床は地面と連なっていて、入り口も広いので車椅子やお年寄りの方でもスムーズに乗車できそうだなと感じました。

 入り口付近はひろびろ、入ってすぐ車椅子や優先席スペースがあり、内装はシックなを基調にベージュが縦ラインで彩る落ち着いたスペース。つり革が多くつけられており、急な振動でも倒れなくて済みそうです。

 オープンしたてとはいえ、わたしが訪れたのは平日の朝。通勤通学ラッシュもなく、地元の高齢者や撮り鉄、乗り鉄が主な客層でした。

 座席はモケットのような毛織物と革製。やはり黄色のカラーリングで、2×2で向かい合うボックスタイプのようなスタイルでした。わたしがちょっとガッチリした体型だったためか、座ってみたら「ちょっと狭いなぁ」と思うような感じ。冬場に使うであろう足元のヒーターによくぶつかってしまいましたね。空間自体は広々としていたので余計気になってしまいましたね。

ライトレールに揺られながらの風景

 大きな窓は宇都宮の景色を楽しめて、とくに『飛山城跡』周辺が絶景でした。運転席は先頭車両中央に設置され、出発前に運転手さんが「右よし、左よし、前方よし」と電車の駅員的な号令。手元にはA5くらいの用紙があり、なにかを逐一チェックしてる姿が印象的でした。

 途中の『平石』で運転手が交代してたのですが、その折「(運転席に最も近かった)入り口のドアの開閉がちょっとおかしいです」と伝えていたので、おそらく初期不良がないかチェックしてたのだと思います。試運転中に脱線事故があったので気にしてるのかもしれませんね。

 ちなみに、ライトレールの運転席は客側から見てオープンなつくりになってるので、マニアな方はどうぞ写真撮影しまくってください。実際そうしてる方もいました。

学校や工業団地を抜け終点へ いざ観光! っと思いきや予想外の結末が

 馬力が違うのか出発時の揺れはバスや電車のそれより大きく感じました。ただしガタガタ! っていう揺れじゃなく、横にスィ~っと波のように流れていくタイプの揺れ。加速が良くすぐトップスピードになっていくのでこの加速感は気持ち良かったです。

 宇都宮ライトレールは市内交通渋滞緩和が目的で設計されました。なので、基本は車通勤者の多い工業団地に向かう軌道です。道中は学校も多く、あの宇都宮清陵高校作新学院大学の目の前を通ります。作新大学生たちが野球の練習をしてる姿を眺めたり、ベッドタウンを抜け豊かな自然や工業団地の風景を楽しんだ後、終点の『芳賀・高根沢工業団地』へ到着しました。時間にしておおよそ50分といったところ。

<strong>犬物語</strong>
犬物語

終点に来たし観光しますか!! ――あれ?

 ――何もありませんでした。

 いやホントに何もなかったです。商店もみやげ屋もトイレさえもない。あるものと言えばホンダに本田にHONDA、工業団地にまた別の工業団地。あと緑。

 宇都宮ライトレールが(渋滞の大きな原因になる)工業団地通勤者のため作られた、ということをまじまじと実感させられた感じです。いちおうというか、近くに皇室御用達の『宮内庁 御料牧場』があり年に一度見学会を実施していますが……GoogleMapで検索したら徒歩42分と出ましたし、見学希望の方はJR宝積寺駅に送迎バスが来るのでライトレールを使う意味はありませんね。興味ある方はチェックしてみてください。

 なお、出発から終点までの運賃は現金ICカード共に『400円』でお子さまは半額となっております。くわしい料金設定は公式ページでご確認ください。

宇都宮ライトレール 株式会社
 宇都宮駅東口からの料金設定は こちら
 区分・各種割引制度に関しては こちら
宮内庁
 御料牧場見学会については こちら

ライトレールに乗った感想 宇都宮の新たなシンボルとして期待

YouTubeチャンネル、kiroha28105:投稿動画より

 すでに地元の人々も活用しており、とくに『ゆいの杜』在住の方は積極的に活用してるようです。わたしが乗車した車両でもゆいの杜周辺で頻繁に人が動いていました。ライトレールを利用すれば周辺施設だけでなく、車だとちょっと遠い商業施設ベルモールまですぐなので利便性が増したわけですね。そこから先は工業団地が広がるので、利用者数は宇都宮に近いほど人が多く、終点に近いほど人が少ないような感じがしました。

 わたし自身の体験で得た感想は『出勤通学用の路面電車』です。今は観光客や撮り鉄で賑わうライトレールですが、賑わいが落ち着けば宇都宮市民の新たな移動手段として定着するでしょう。ただちょっとだけ気になった点がいくつかあります。

 たとえば駅名に関して。学校名のついた『宇都宮大学陽東キャンパス駅』がありますが、本来ならその手前にベルモールがあるので『ベルモール前』にしたほうが自然だと思いました。まあ、これは宇都宮ライトレールが渋滞緩和や市民の足になるためを考えたら理解できるような気がしますが、個人的にはちょっと違和感を覚えました。

 路面電車としての宿命というか、ライトレールを開通したことで、どうしても車線や車幅が変化した道路があるようです。ライトレールは電車やバスなどその他の交通手段との連携を重要視していますが、わたし自身宇都宮の渋滞のヤバさは知ってるので「このくらいで渋滞緩和できるのかな?」と感じてしまいました。

 運営会社が設けた通勤・通学割引料金がありますが、ホンキで宇都宮の交通事情を改善したいなら企業が宇都宮LRT利用者に補助金を出したり、通勤ラッシュ時には東京の電車のように5分に1度レベルで運行する必要がありそうです。

 運用開始から波乱続きではありますが、宇都宮ライトレールはかなり好調な滑り出しだったと思います。将来的には車両連結数や運行数を増やすなどの拡張が計画されており、宇都宮市の渋滞緩和がさらに期待できますね。

宇都宮ライトレール 株式会社
 宇都宮駅東口からの料金設定は こちら
 定期券の購入方法・場所は こちら

鉄道コレクション 鉄コレ 宇都宮ライトレール 運転セット

なんで宇都宮市にライトレールができたの? 今後の課題は?

 GoogleMapより、宇都宮環状線

 宇都宮市は車がよく渋滞します。地元で環状線と呼ばれる道路(国道4号,119号,121号線、県道3号線)が中心地を囲んでいるのですが、これが出退勤時間になるととても混むようになりまあ大変です。10分で到着するはずが30分かかったなんてしょっちゅうです(体験談)

 宇都宮市はこれらの交通事情に頭を悩ませてきました。ライトレールは路面電車のデメリットをなくし、コストも抑え、これから増えるであろう免許返納者の移動手段を確保できる最上の策とも言えます。こういった事情から、宇都宮市は市をあげてライトレールの開業に着手しました。

 2023年9月2日現在、運営会社『宇都宮ライトレール 株式会社』を第三セクターとして、宇都宮市は当企業の株40.8%を保有しています(他は芳賀町、銀行、商工会、鉄道会社など)

 宇都宮市はさらに、ライトレールとバスや電車などの乗り換えをスムーズにできる『トランジットセンター』を設置。宇都宮市の渋滞をなくそうというホンキの気持ちが見えるようですね。

宇都宮市
 LRTの必要性については こちら
 交通事情については こちら

ライトレールの効果

YouTubeチャンネル、Robert Bo:投稿動画 フランス、ストラスブールのトラム

 路面電車は欧米で『トラム(Tram)』と呼ばれています。イギリスで始まった馬による路面電車からはじまり、車社会になるとやがて衰退しましたが、ここ数十年でトラムの再開発が進み、トラム先進国のフランスでは29の地域で路面電車が活躍しています(日本は19地域)

 フランスの都市ストラスブール(Strasbourg)では、その地域だけで6つの路面電車が走っています。既存の交通網を整備したあと、トラムを大動脈として中央地や観光地に配線。さらに路線バスなどで細部までカバーするよう設計されました。この計画は見事成功し、これをキッカケにフランスでは瞬く間にトラムが広がっていきました。

 宇都宮市も、おそらくストラスブールの成功例に倣ったのかもしれません。

 重要なのはトラム自体に大きな利益がないそうなのです。が、街全体の活性化や車社会の脱却など都市に与えた影響は大きく俯瞰的に見れば大きな成果があると言えるのかもしれません。

 トラムは移動手段ですから、求められるのは手軽に行きたいところへ行けるというで、あとは人々が行く先々で消費が発生してくれるということなのですね。宇都宮ライトレールも、その軌道上にベルモールという強力な商業施設があります。ライトレール自体の売上だけでなく、宇都宮が盛り上がる起爆剤になるかどうかも注目ですね。

 ちなみに、ストラスブールのトラムは条件付きで犬も乗れます

國學院大學メディア
 フランスのライトレールについては こちら
日本交通計画協会
 フランスのトラムについては こちら
ストラスブール
 公式ページは こちら(英語)
 犬を同乗させる条件は こちら(フランス語)

 宇都宮ライトレールはとても楽しい体験ができました! 各交通手段と連携のとれたシステム、低床で高齢者や障害者も利用しやすい環境、オシャレな内装に大自然を満喫できるビューなど魅力満点の旅が楽しめました。盲導犬も同乗できるので目の不自由な方も楽しめると思います。撮り鉄さんは管理棟のある『平石』周辺か、もしくは鬼怒川を渡る情景が撮影できる『飛山城跡』がおすすめですかね。

 実は世界的な自転車競技『ジャパンカップ・サイクルロードレース』が開催される場所でもある宇都宮、これから日光市といっしょに盛り上がってくれればいいですね。今回は宇都宮の路面電車『宇都宮ライトレール』を体験したレポートをご紹介しました。機会があればまた乗車したいので、今からライトレールについて本で学んでおきたいですね。

路面電車年鑑2023 (イカロスMOOK)

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