
プロ野球の頂点を争うワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で3度の優勝、2021年開催された東京オリンピックにおいても金メダルなど国際大会で華々しい成績をおさめ、日本野球は国技として世界最高レベルの競技力を誇っていますね。
日本では大人になっても草野球を楽しむ方が多いと思います。そんな野球大国ですから野球[ Baseball ]の発祥がアメリカであること、ストレートを英語ではファストボール[ Fast ball ]と呼ぶことをご存知の方も多いでしょう。
ではスピードが遅い変化球をブレーキングボール[ breaking ball ]と呼ぶのは知っていましたか? ほか、日本と英語でたくさんの用語があることをご存知ですか? 日本とアメリカの野球は100年以上の歴史があり、その間にそれぞれ独自の用語や俗語が誕生しました。ここではそれらのいくつかをわかりやすく解説していきます。
2023年はWBC開幕もあり野球熱が燃え上がりますね。わたし自身2009年のWBCが印象に残っていて、とくにイチロー選手が韓国から放った決勝タイムリーが強く焼き付いています。それまで不審にあえいでいたイチロー選手の完全復活を遂げた一打を見てすごく身体が震えました! 今年開催されたWBC2023の決勝では大谷翔平選手とマイク・トラウト選手の直接対決が実現するなど、記憶に残ったシーンを挙げればキリがないほどの盛り上がりでしたね。アナタもすでに次のWBCに向けて旨を熱くしているのではないでしょうか?
ところで、日本代表の準決勝戦。それまで不調だった村上宗隆選手がサヨナラホームランを放って勝利を収めましたが――この『サヨナラホームラン』って英語でなんて言うか知ってますか?
日本とアメリカの”野球用語・俗語”の違い

野球は世界に浸透していますが、英語圏で最も盛んに行われているのはアメリカ合衆国です。ここでは英語圏で用いられる野球用語を解説していますが実質アメリカの野球用語・俗語の解説になります。
世界でもっと野球が広まってくれるとうれしいですね。日本とアメリカそれぞれ文化の違いなどもあり、独自の野球用語が誕生しています。そのいくつかをわかりやすく解説していきましょう。
フォアボール
英語圏で使われていそうな用語ですが、これは日本だけで通じる和製英語です。日本の野球ルールブック『公認野球規則』でもフォアボールが使われていますが、それとは別に正式名称である[ Base on balls ]が巻末の用語集に書かれています。また英語圏では[ Walk ]もフォアボールを指す言葉になります。
・Base on balls(BB)
ベースを得るボールカウントが揃った
→ 4ボールになった
・Walk
歩く
→ バッターが安全に1塁へ歩いていける状態
デッドボール
日本野球ではピッチャーの投球がバッターに当たることを指しますが、英語でデッドボールは主に『ホームランが少なかった1900 ~ 1919年までの時代』を指すか、もしくは『タイム状態に入ること』と解釈される場合があります。投球が打者に当たることを英語では[ Hit by Pitch ]と呼びます。
・Hit by Pitch
投げて当たる
→ ピッチャーの投球が打者に当たったこと
ちなみに日本での『タイム状態に入ること』にあたる言葉はボールデッドとなります。ちょっとややこしいですね。
振り逃げ

3ストライク後、キャッチャーが正規の捕球をしなかった場合三振ではありますがアウトではありません。この際バッターが1塁へ逃げていくように走ることから日本では振り逃げと呼ばれます。英語ではふた通りの呼び方があります。
・Uncaught( or Dropped) third strike
3ストライクを捕れなかった(もしくは落とした)
振り逃げというネーミングですが必ずしもスイングする必要はありません。3ストライクの後、キャッチャーが正規に捕球できなければ振り逃げは可能です。
イレギュラー
[ Irregular ]は不規則、歪んだという意味の言葉です。英語圏では『正常でない』というニュアンスなので反則打球と勘違いされるかもしれません。英語では[ Bad hop ]が使われます。
・Bad hop
悪く跳ぶ
→ 打球が不規則な変化をすること
アーチスト
日本では高い軌道を描くホームランか、もしくはそのようなバッティングをする打者を指しますね。アーチストという単語はなく、これは“弧の形”という意味のアーチ(Arch)と“芸術家”のアーティスト(Artist)をかけた和製英語です。英語では『月に打つ』という意味の[ Moonshot ]で表現されています。
・Moonshot
高い軌道の、もしくは大きなホームランを指す
ランニングホームラン
ホームラン[ Homerun ]は打球がノーバウンドで外野フェンスを超えたことを指しますね。安全に4つの塁を回れますが、ランニングホームランの場合スタンドインせずボールがグラウンドの中にある中1周しなければなりません。そういった意味で、英語では[ Inside-the-park home run ]と呼ばれています。
・Inside-the-park home run
パーク(球場)の中でのホームラン
→ ボールが球場内にあるなかでホームランになった
サヨナラホームラン

最終回の裏に試合を決定づけたホームランをこのように言いますね。英語では[ Walk-off Homerun ]。または[ decided in the last at bat ]という言葉がよく使われます。
・Walk off Homerun
立ち去る
→ 負けたチームが”歩いて立ち去る“イメージ
・decided in the last at bat
最終打席で決めた
→ 試合を”ある打者の最終打席で決めた“イメージ
サヨナラホームランを打たれたピッチャーが打球を見つめることなくベンチに歩いて行く姿からこの言葉が生まれ、以降は『敗北してフィールドから立ち去っていくチーム』のニュアンスが強まっていきました。
要注意! 同じ言葉でも使われ方が異なるワード
上記で紹介したデッドボールのように、日本語と英語で意味が同じ言葉でも使われ方が違うワードがあります。ここではそんな用語を解説していきます。
大砲[ Cannon ]
日本ではホームランバッターを指すことが多いですが、英語では『強肩の選手』を意味する言葉になります。
キャッチャーの肩が強い、外野手の送球が強いことを伝えたいときに使われ、また守備の強肩でランナーをアウトにした時は「〇〇 cannons and gets him(〇〇の大砲が彼を捕えた)」などと表現します。ほか『銃・バズーカ・ライフル』など鉄砲関係の言葉はだいたい『肩の力』関連の言葉になります。
フリーパス[ Free pass ]
日本ではかんたんに盗塁される弱肩のキャッチャーを揶揄する言葉として使われますね。英語では『フォアボール』を指します。上記で紹介した[ Base on balls ]が正式なネーミングですが、俗語として[ Walk ]と[ Free pass ]があるイメージです。
ノック[ knock ]

ドアをこんこんと叩くノックですね。日本でもアメリカでも『ボールでバットを打つ』ニュアンスですが、日本では守備練習の用途でよく使われていますね。
アメリカでは文字どおり『様々な打球・打撃結果』を表現する際に使われます。ノックに関するいくつかの用語をまとめてみましょう。
・Knock
基本的に2塁打以上の長打を指す
a two-base knock
→ 2ベースヒット
a one base knock
→ シングルヒット
・Knock in
直訳:(金づちなどで)打ち込む
→ 打点を挙げること
・Knock around
直訳:あちこちを歩き回る、考える・乱暴に扱う
→ 安打を量産されマウンドを降りるピッチャーを指す
・Knock off
直訳:(仕事などを)中断する
→ 試合に勝利すること。勝敗がついたので試合を中断する(終える)ニュアンス
英語における守備練習は総じて[ Fielding practice (drills)]と呼ばれています。
知ればなっとく! おもしろい野球用語

英語では見逃し三振を[ caught looking ]と表現したり、俗語として[ window shopping ]というジョークの効いた言葉もあります。このようにシャレやエッジの効いたもしろい用語がたくさんあるので、紹介していきましょう。意味や理由を知るとさらにたのしく覚えられますね。野球の国際大会を英語で耳にする機会があるとき、これらの用語を知ってるとクスッとできるかもしれません。
Can of corn
直訳で『とうもろこしの缶詰め』。野球用語では『かんたんにキャッチできる外野フライ』を指します。これらの関係性がまったくナゾですよね? ――アメリカのスーパーならではの事情があります。
アメリカのスーパーはスケールが大きいですよね。倉庫には天高く在庫の山が積み上げられているのですが、そういった高い棚にある缶詰を取るため、店員はそれらをカギの付いた棒で引っ掛けて落とし、落ちてきた缶詰を自分のエプロンで受け止めていました。
真下に落ちてくる缶詰めをただエプロンを広げて待っていれば良い。これが『落ちてくる外野フライをただ待って捕れば良い』というイメージにかわっていき、アメリカの野球ではそういったフライを[ can-of-corn ]と呼ぶようになったわけです。
Free baseball
直訳で『無料野球』。野球用語では『延長戦』を指します。これもナゾが多い言葉ですが試合チケットを購入した客の立場になってみるとすごくわかりやすくなります。
野球は通常9回表裏まで試合があります。なので観戦客は『9回裏までの観戦チケット』を購入するということになりますよね? けど9回裏終了時点で勝敗がつかなければ試合は延長――観戦客が支払っていない10回以降の戦いをすることになります。
お金を払ってないのに試合観戦できる。つまり『無料』で試合を見られるわけです。やった! 得した! というアメリカならではの感覚なのかもしれません。
日英の野球文化に根ざした言葉はおもしろい
このほか、アメリカや世界ではたくさんの野球用語、俗語があります。今後WBCや国際大会などで英語を聴く機会があるでしょう。そのときに「あ、いま Can of corn って言った!」なんて気づくこともあるかもしれませんね。
日本でも打率の低い打者が凡退することを『知ってた』と表現したり、1イニングで大量失点することを『炎上』と言うなど面白い言葉がたくさんあります。インターネットの世界ではこれらを良く見ることができます。
日本とアメリカでいろんな野球用語があってとても楽しいですね。世界最高峰リーグと呼ばれるメジャーリーグベースボール(MLB)公式サイトでは、こういった野球用語を解説しているページがあります。英語を読める方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
mlb.com(MLB公式サイト)
2023年のルール変更、野球用語解説は こちら
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